世界とつながる学びを国内から~変化する留学環境に対応する新たなグローバル教育~

グローバル化推進担当副学長
外国語学部 英語学科 教授
飯島 真里子

不安定な国際情勢や為替の影響により、海外留学のハードルが以前よりも高まりつつあります。こうした状況の中でも、俯瞰的かつ多角的視点や多様性を尊重する力を学生に身につけてもらうため、上智大学では国内におけるグローバルな学びの機会の拡充を進めています。今回は、グローバル化推進担当副学長に、その取り組みについて伺いました。

 

留学環境の変化を踏まえ、日本にいながら学べるグローバル教育を強化

近年、留学を取り巻く状況が大きく変化しています。ウクライナ侵攻や中東情勢の影響により、留学先として選択できる地域が限られつつあります。さらに、燃油費の高騰にともなう旅費の値上げにより、短期留学プログラムの費用も上昇しています。短期留学は中長期留学へとつながる重要な入口ですが、その流れが崩れ始めており、学生の留学意欲にブレーキがかからないか懸念しています。

こうした状況を踏まえ、本学は国内で国際的な経験を積めるプログラムの強化に取り組んでいます。代表的な取り組みの1つが、実践型プログラム「日本のなかの多様性」です。このプログラムでは、国内に存在するエスニックコミュニティを体験的に学びます。2025年度はラテンアメリカをテーマに、ブラジル人学校を訪問したり、サービスラーニング活動に参加したりするなどして、ブラジルやペルーにルーツを持つ児童・生徒が置かれた現状について考察し、多文化共生への理解を深めました。

さらに、本学がアフリカ諸国の協定校との学生交流を推進する「SAFICs」の新たな取り組みとして、2026年度夏から新潟県佐渡島での研修を行う約10日間の実践プログラムを開始しました。このプログラムには連携大学からアフリカの学生と日本人学生が参加し、環境問題や持続可能なコミュニティについて学びます。例えば、佐渡島の海洋環境や牡蠣の養殖といった地域の産業を題材に、地元の漁業関係者へのインタビューなどを実施します。アフリカからの学生は日本文化を学びながら環境問題や地域社会を考察し、日本の学生はアフリカの学生と協働しながら、自国の文化の再発見と日本が直面する課題解決のプロセスを体験します。最終的な解決策の提示だけでなく、国境を越えた協働の経験そのものが、深い学びへとつながります。

COILによる国際協働学習の展開

国内におけるグローバルな学びは、実践型プログラムにとどまりません。授業においても「COIL(Collaborative Online International Learning:国際協働オンライン学習)」を導入し、通常のカリキュラムの中で国際的な学びの機会を広く提供しています。

COILとは、オンラインツールを活用し、国内外の他大学と接続して協働学習を行う教育方法です。例えば、私が担当する、アフリカについて学ぶ基礎科目は、南アフリカのステレンボッシュ大学と連携した授業を展開しています。授業内では、JICA職員を含むアフリカ関連の専門家や研究者をお招きし、アフリカに関する歴史・社会・経済といった多様なテーマについて学びます。さらに、COILの実践として、オンラインにてステレンボッシュ大学教員にアフリカにおける日本の国際協力の歴史について講義していただき、その後、2回の講義を使って、学生たちは先方の学生や教員とディスカッションや質疑を行います。こうした海外大学との連携による学びを通じて、アフリカと日本の相違点や共通点を考察し、理解を深めていきます。

インタラクティブな授業は文系科目にとどまらず、他学問分野でも展開されています。特に看護学科は、国家試験に対応したカリキュラム編成上、長期留学が難しいケースもあるため、COILのように学内にいながらにしてグローバルな学びに触れられる機会は大きな意義を持ちます。

加えて、全学部生が受講できる英語で行われる授業も数多く開講しており、それらは学生の英語コミュニケーションに対する意識を変えていきます。英語で専門分野を学んだり、海外の同世代の学生とやり取りを重ねたりする中で、学生は完璧でなくてもコミュニケーションが成立する瞬間を実感するはずです。「今の語学力でも留学に挑戦できるかも」と自信を持つ学生が現れるでしょうし、「もっと伝えたい」「より深く学びたい」といった主体的な意欲へとつながっていくことも期待できます。

さらに、教室内で得た気づきは、「海外で何を学びたいのか」という具体的な目標形成を促し、その結果として、より明確な目的を持った留学の実現につながるでしょう。

留学に依存しないグローバルな学びの可能性

世界情勢の影響に加え、最近は留学と就職活動やインターンシップとの両立に悩む学生が少なくありません。将来を考えたときに、留学がどう人生を左右するかを大学として丁寧に伝えていく必要があると考えています。

そもそも、グローバルな学びは必ずしも海外経験のみによって得られるものではありません。日本にいながら外国人と交流したり、オンラインを通じて海外とつながったりすることで、国際的な視野を広げることは十分に可能です。大切なのは、「自分がどのようなグローバルな視点や経験を求めているのか」を明確にし、身近にある機会を主体的に活用していく姿勢です。留学に行けないからと諦めるのではなく、国内にある多様なチャンスをどのように生かすかを、学生には色々と模索してほしいと願っています。

最近では、海外の大学から数週間単位で教員が学生グループを連れて来日し、本学キャンパスを拠点として授業や学生交流を行うプログラムも受け入れています。これらのプログラムは海外大学の夏期休暇期間中に実施され、本学では学期期間中となりますので、上智生がキャンパスで交流できる機会と捉え、積極的に活用したいと考えています。例えば国際教養学部では、2026年度に米国の名門大学Dartmouth Collegeのサマープログラムと協働し、第2クオーター科目を立ち上げました。先方の教員と本学の教員が協働で授業を担当し、両大学の学生が同じ教室でともに学び、議論を深めます。このようなプログラムの実施を積み、今後もより体系的な国際協働の機会へとつなげていきたいと考えています。

上智大学 Sophia University