6月1日から24日まで、「第19回上智大学国連Weeks June, 2023」が開催されました。「国連の活動を通じて世界と私たちの未来を考える」をコンセプトに、全8件の多彩なプログラムが展開されました。

国連専門機関の役割と日本の取組み

来日中のシャキターノICAO理事会議長が特別講演を行った

6月1日、さまざまな国連専門機関の役割と活動を紹介し、地球規模の課題に対処する日本の協力と取り組みを考えるシンポジウムが開催されました。国際協力人材育成センター所長の植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授がモデレーターを務めました。

はじめに、国際民間航空機関(ICAO)を代表して来日中の、サルバトーレ・シャキターノ理事会議長が特別講演を行いました。ICAOは1944年に採択された国際民間航空条約に基づき設置された国連専門機関。安全で秩序ある方法で国際民間航空を発展させ、機会の平等に基づき国際航空運送業務が健全かつ経済的に運営されるよう加盟国の協力を図り、条約の作成、安全・保安などに関する国際標準・勧告方式やガイドラインの作成を行っています。加えて、国際航空分野における気候変動対策を含む環境保護問題についての議論および対策を進めています。日本は1953年にICAOに加盟し今年で70周年を迎えました。

シャキターノ氏は、ICAOが設定している「安全促進」「保安促進」「航空路の効率化」「航空輸送の経済的開発」「環境保全」という5つの戦略目標を示し、ICAOの取り組みを詳しく紹介しました。講演後には、参加者からの質問に丁寧に答えていました。

講演に続いて、外務省国際協力局専門機関室から職員の方々を迎えて、プレゼンテーションとパネルディスカッションが行われました。冒頭、4月まで同室の室長を務め、現在は在オークランド日本国総領事の松居眞司氏が「地球規模の課題に向き合い、その解決法について自分ごととして考えてほしい。そのヒントを学び合おう」と呼びかけ、国連の15の専門機関を紹介しました。

次に、同室でICAOや国際海事機関(IMO)などを担当する猪原透氏、国際労働機関(ILO)を担当する岡崎優理氏、国際電気通信連合(ITU)や万国郵便連合(UPU)などを担当する中村公洋氏、世界観光機関(UNWTO)などを担当する伊藤あかり氏の4人が順に発表。自身が担当する機関の概要・活動および日本の役割などを説明しました。その後、事前に寄せられた質問や参加者からの質問に答えるパネルディスカッションが行われ、盛況のうちに閉会しました。

NAGASAKIから世界へ「平和を」 被爆医師 永井隆と妻 緑からのメッセージ

たくさんの質問や意見に、会場からコミテ氏と片山教授が対応し、オンラインでマレンコ氏とディール氏が見守った

6月3日、原爆で妻を失いながらも献身的に被爆者救済にあたった医師の永井隆とその妻である緑のメッセージを現代に伝え、平和と希望ある世界を築くための可能性を探るシンポジウムが開催されました。会場には約100人が来場し、加えて300人近くがオンラインで視聴しました。

シンポジウムを企画した片山はるひ神学部教授の司会で開会。冒頭、サリ・アガスティン理事長および駐日ローマ教皇庁大使館のレオ・ボッカルディ大使が挨拶に立ち、シンポジウムへの期待を述べました。

はじめに、イタリアからオンラインでパウラ・マレンコ氏が登壇。マレンコ氏は医師で、イタリア「医学と人間」協会副会長。永井夫妻の列福・列聖を目指すためローマで設立され、長崎大司教区から認められている「永井隆と緑の友の会」の副会長も務めています。マレンコ氏は数多くの写真を示しながら、永井隆の生涯を紹介しました。

続いて、アストラゼネカ日本法人メディカルディレクターで「永井隆と緑の友の会」会長のガブリエレ・ディ・コミテ氏がプレゼンテーションを実施。永井夫妻のさまざまなエピソードを語り、隆は緑との出会いによって人生の真の意味を見出したと述べました。

次に、アメリカからオンラインでチャド・ディール氏が登壇しました。ディール氏はバージニア大学インストラクショナルデザイナーで日本史家でもあります。ディール氏は、『この子を残して』『長崎の鐘』などの著作を紹介し、永井隆がそれらを通して長崎の復興に尽力したと語りました。

最後に、片山教授が専門のキリスト教文学者の立場から発表しました。永井隆の著作を引用し、そこに込められた背景や思いを紹介。隆が述べている「摂理」という言葉の真の意味について解説し、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』との共通点を示しました。そして、「永井隆と緑の友の会」の活動を通して世界中に夫妻のメッセージを伝え、世界平和を共に築いていきたいと締めくくりました。

4人の発表後の質疑応答の時間では、数多くの質問や感想が寄せられました。平和への思いを共有し、李聖一カトリック・イエズス会センター長の挨拶で閉会しました。

国連改革は可能か

右上から時計回りに、植木教授、キハラハント教授、神余教授、猪又氏

6月5日、国連でさまざまな経験を持つ3人の専門家が国連改革について論じるオンラインシンポジウムを開催しました。植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授がモデレーターを務め、まず、シンポジウムの趣旨と国連改革に関する考え方を説明しました。

最初の登壇者は、日本国際連合学会理事、元国連合同監査団独立監査官、元オゾン層保護多数国間基金執行委員会議長の猪俣忠德氏。「国際行政学の見地からの試み」と題して国連改革を論じました。コロナ後は紛争と災害の予防ができるガバナンスの枠組みの構築が必要であるとして、国連システム資源管理を取り上げ、これらが国連システムで機能する条件について解説しました。

次に、関西学院理事、同大学特別任期教授、国連・外交統括センター長の神余隆博氏が「G7サミットを経て見えてきた国連改革の課題」と題し、はじめに国連改革の本質について説明。続けて、ウクライナ戦争から見えてきた現実的な安保理改革、G7サミットの成果と核軍縮の推進、グテーレス事務総長の役割と「国連2.0」へのアップグレード、日本の役割など、さまざまな点から論じました。

最後に、東京大学大学院教授で持続的平和研究センター長のキハラハント愛氏が「国連改革は可能か~共有価値という視点から」と題して解説しました。人権、法の支配、武力不行使原則を各国がどのように受容しているのか、その現状と問題点について触れ、各国が普遍的なものとして共有する価値が何であるのかを再確認し、価値を守る体制を再構築していくことが国連改革にとって重要だと述べました。

参加者からは、アフリカの常任理事国の議席数など安保理改革に多くの質問が寄せられ、国連改革に対する関心の高さがうかがえました。

SDGs中間地点での評価と今後の課題

質問に答える登壇者の皆さん。右から、根本氏、ナセル氏、森下副学長、間森さん、植木教授

6月8日、植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授の司会のもと、2030年までの達成に向けたSDGsの中間評価を行うとともに、今後の課題について議論するシンポジウムを開催しました。

はじめに、国連事務次長補で国連訓練調査研究所(UNITAR)総代表であるニキル・セス氏が、オンラインで講演を行いました。冒頭、多国間主義の危機に触れ、国際協力の弱体化、貧困や紛争などのグローバルな問題の複雑化を指摘。そのような中、SDGsが予定どおり進捗しているのは全体の12%であると報告しました。具体的な行動指標を挙げながら、持続可能なガバナンスの構築を国レベルで優先順位を上げて再考する必要があると強調しました。

続いて、国連グローバル・コミュニケーション局アウトリーチ部長のマーヘル・ナセル氏は、目標達成のためには一般市民の協力が不可欠と指摘しました。「民間企業におけるグリーンウォッシュ(環境に配慮しているように装うこと)や、個人やメディアから発信されるフェイクニュースに騙されることなく、批判的な視点を持って行動を起こしてほしい」と話しました。また、2025年に開催される大阪万博と国連の関わりについても言及しました。

国連広報センター所長の根本かおる氏は、データをもとに、日本におけるSDGsの認知度や関心度を解説。「全体的に意識が高まる中、10代が突出して認知度が高い。2030年に向けて若者が主役になっていってほしい」と参加者に語りかけるとともに、私たちの生存を脅かす気候変動の課題に対してアクションを起こすよう呼びかけました。

次に、森下哲朗グローバル化推進担当副学長と上智学院サステナビリティ推進本部で学生職員として働く間森香奈さん(総グ3)が登壇。上智大学が社会的責任をより一層果たすため、設立母体のイエズス会が掲げるUAPs(4つの普遍的方向づけ)と国連の掲げるSDGsを軸に社会のサステナビリティ強化に取り組む基盤として2021年に同本部を設置したことなど、上智学院のSDGsおよびサステナビリティ活動について紹介しました。

講演後には参加者との活発な質疑応答が行われ、SDGs達成に向けての意気込みを全員が共有し、シンポジウムを終えました。

国際機関・国際協力 キャリア・ワークショップ

4年ぶりの対面開催のワークショップ。大勢の学生が参加機関の方々を取り囲んだ

6月12日に、国際機関や国際協力分野でのキャリアを考える人たちを対象にキャリア・ワークショップを開催しました。

ワークショップに先だち、国連児童基金(UNICEF)東京事務所代表のロベルト・べネス氏が、「世界の子どもたちを取り巻く状況とUNICEFの活動-国際機関で子どもたちのために働くということ-」と題し、基調講演を行いました。基調講演はオンラインでの配信も行い、会場外からも多くの参加者が耳を傾けました。べネス氏は、1946年に第二次世界大戦で被災した子どもたちへの緊急支援を目的に設立されたUNICEFの活動について紹介し、国際協力分野をめざす人たちに「皆さんの可能性は無限大。共に世界中の子どもたちの権利を守り、教育や健康を促進するために働きましょう」と呼びかけました。

続いて、モデレーターを務める植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授がワークショップに参加する機関の方々を紹介。海外コンサルタンツ協会前専務理事・元国連工業開発機関工業開発官の髙梨寿氏、国連人口基金駐日事務所長の成田詠子氏、世界銀行東京事務所上級対外関係担当官の大森功一氏、WFP国連世界食糧計画日本事務所副代表で政府連携担当官の下村理恵氏、外務省国際機関人事センター室長の山口忠彦氏および同センター課長補佐の中野美智子氏(96年外独卒)、そして上智大学国際協力人材育成センターからは植木教授に加えて浦元義照元教授、山﨑瑛莉講師が参加しました。対面開催は4年ぶりで、会場には国際機関や国際協力分野を目指す多くの学生などが集まり、熱いクロストークが繰り広げられました。

日本、イスラム協力機構(OIC)、イスラム開発銀行(IsDB)、国連の協力で、アフガン支援をどう進めるか

パネルディスカッションにて、右から近藤氏、アルサティ氏、バヒート氏、沢田氏、村上氏、東教授

6月14日、イスラム協力機構(OIC)副事務総長兼アフガン担当特使のタリグ・アリ・バヒート氏、イスラム開発銀行(IsDB)総裁顧問モハメッド・アルサティ氏らを招いて、国際シンポジウムを開催しました。本イベントを統括した東大作グローバル教育センター教授が司会を務め、対面とオンライン合わせて300人近くが参加しました。

シンポジウムは曄道佳明学長および青木研人間の安全保障研究所長の冒頭挨拶で開会し、東教授による現在のアフガニスタン情勢の解説の後、バヒート特使がOICのアフガニスタンにおける役割と日本との関係について講演。

続いてペシャワール会会長の村上優氏と同会の沢田裕子氏から、故中村哲医師の40年にわたるアフガニスタンでの活動-とりわけ用水路建設による灌漑事業-が現在も拡大し、干ばつで砂漠化した24,000ヘクタールもの大地が農地として復活しているとの紹介がありました。

また、アルサティ氏が、イスラム開発銀行の事業とアフガン人道信託基金の活動を紹介しました。東教授は超党派の人口問題議員懇談会が2022年8月にアフガン・プロジェクトチームを設立し、国会議員も含めアフガン支援の枠組みができつつあることや、今回上智大学がOICやIsDBの幹部を招いて3日間のワークショップを開催し、OICやIsDBと日本のNGO、JICA、外務省などとの連携強化を目指していることについて説明しました。

その後、国連開発計画前駐日代表で現京都大学特任教授の近藤哲生氏、鳥居正男上智大学ソフィア会会長からのコメントがありました。これらを受けて、サリ・アガスティン上智学院理事長よりアフガニスタンへの支援にあたって協力を進める上で障害となるものは何かと問題提起がなされ、前半を終了しました。

シンポジウム後半では、登壇者全員が参加者からの質問に答える形でパネルディスカッションを実施。「大規模な人道支援を展開する課題は何か」「日本国内でも困窮する人が増えている中、他国を援助することの是非」「タリバンが政権を掌握している現状で支援はどのように実施されているのか」などの質問が寄せられ、パネリストから説明がありました。

締めくくりに、アガスティン理事長が上智大学が110周年を迎えるこの節目に大学の教育精神であるFor Others、With Othersを体現するような人道支援の課題を皆で考えた意義を強調。「建学の理念であるSophia-Bringing the World Togetherを体現する今回の招聘プロジェクトが、日本政府、国際機関、NGO、教育機関、個人などとのさらなる協力関係を促進することを願っている。参加者一人一人の関心や決意が、世界を少しずつ良いものに変えていくと確信している」と述べ、本シンポジウムを終了しました。

北東アジアにおける未来の平和に関する若者の提言

右から、中国、モンゴル、日本の各国代表者、植木教授、日本の代表者、パーク氏、ローラン氏

6月23日、若者が北東アジアの平和と安全にどのように貢献できるかを考えるパネルセッションが開催されました。国連政務・平和構築局(UNDPPA)より政務官のシーラ・ジオング・シン・パーク氏と、同局リエゾン・オフィサーのマリーナ・ローラン氏を招き、参加者も交え議論を行いました。

冒頭、モデレーターを務めた植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授が、国連の若者を重視した一連の活動を説明しました。

続いて、平和構築へ向けて提言や人材育成などを行うユースピースビルダーズとして活躍している日本、中国、モンゴルの各国代表者がパネリストとして登壇。彼らが参加したUNDPPAプロジェクト「北東アジアにおける未来の平和」での成果やこれまでの活動などを紹介しました。

次に行われた質疑応答では、会場やオンラインの参加者から多くの質問が寄せられました。「高校生は世界平和構築に向けてどのような貢献ができるか」「登壇者の皆さんがこのような活動を始めたきっかけは何か」などの問いに対して、パネリストが丁寧に回答していました。

最後に、ローラン氏は「北東アジアで平和構築活動を推進するうえではさまざまな障壁があるが、ポジティブに捉えると問題解決のチャンスがまだまだ存在するということ。このような機会を通じて作られた貴重な架け橋を使って、これからも交流や対話を続けていくことが未来の平和の実現に繋がる」と話し、盛況のうちに閉会しました。

持続可能な未来に向けた「学びの共同体」

基調講演で「学びの共同体」の可能性を語る佐藤東京大学名誉教授

6月24日、持続可能な未来に向けてさまざまな課題に直面している今日、日本ならびに世界の教育の現場を見つめながら学びの意味とそれを支える人々の連帯について考えるシンポジウムが開催されました。日本比較教育学会の大会を兼ねたシンポジウムで、会場一杯の約250人が来場。オンラインからも220人余りが参加しました。総合グローバル学部の荻巣崇世助教が総合司会を務め、総合人間科学部教育学科の杉村美紀教授の挨拶で開会しました。

はじめに、佐藤学東京大学名誉教授が基調講演を行いました。佐藤名誉教授は新型コロナ発生からの3年を「子どもの学びの権利が奪われ学びが制約された。真面目に着席しノートを取りながら、何も思考せず学んでいない『学びの偽装』が急速に拡大した」と振り返った後、世界の教育改革の動向と課題を挙げ学びの共同体の現状を解説しました。そして、「新型コロナ、第4次産業革命、戦争、地球環境の破壊などがグローバル資本主義の危機を促進。子どもたちの将来にわたる幸福の危機が拡大している。現実は絶望的だが、持続可能性を追求する学びの共同体で未来の可能性を探りたい」と結びました。

続いて4人のパネリストが順に登壇。基調講演を受け、東京大学教育学研究科の北村友人教授は「国際教育協力と知識外交」、総合人間科学部教育学科の上野正道教授は「東アジアの学びと学校改革の展開」、聖心女子大学現代教養学部教育学科の澤野由紀子教授は「旧ソ連諸国のポスト社会主義教育」、総合グローバル学部の丸山英樹教授は「持続可能な未来」と、それぞれの視点からコメントしました。

最後に、佐藤名誉教授と4人のパネリスト全員が登壇し、会場とオンラインの双方からの質問に答える形でパネルディスカッションを実施。活発な議論が展開されました。佐藤名誉教授は「今の子どもと教師の現実から学ばなければいけない。現実から学ぶことはたくさんあり、教育という仕事は学びとセットになっている」と締めくくりました。

上智大学 Sophia University