2019年10月5日から10月24日まで、「国連の活動を通じて世界と私たちの未来を考える」をコンセプトに「上智大学国連Weeks October, 2019」が開催されました。
第12回となる今回は、8つの企画に多彩なゲストが登壇したほか、「国連環境計画(UNEP)地球環境情報展」も実施され、来場者数は延べ1,200人近くとなりました。

シンポジウム「キリスト教と国連の平和構築~教皇フランシスコの南スーダンや他の平和構築への取り組み~」

上智大学では、11月末に予定されている教皇フランシスコの訪日を前に、3回シリーズでシンポジウムや講演会を開催しています。その2回目が、国連Weeksの一環として10月5日に行われました。

シンポジウムは、教皇フランシスコが南スーダンをはじめ紛争地の平和構築のために取り組みを続けている背景や、それが現地の紛争解決にどのような影響を与えているのかというテーマで進められました。

はじめに、佐久間勤 上智学院理事長と山岡三治 イエズス会日本管区長補佐が挨拶に立ち、教皇の英訳(「Roman Pontiff(最高の橋渡しをする人)」を紹介し、和平への仲介も重要な役割であることなどを説明しました。

教皇フランシスコの活動を紹介

続いて、教皇と同じアルゼンチン出身で教皇の教え子だったホアン・アイダル神学部教授が、教皇の平和に関する思想のルーツについて講演しました。また、サリ・アガスティン総合グローバル学部教授は、教皇は教会内に留まらず世界全体に目を向け、平和と民族の和解の促進のためメッセージを伝え続けていると話しました。

そして、司会役を兼ねた東大作グローバル教育センター教授が南スーダンでの平和構築に関する現地調査の内容を紹介したあと、会場からの多くの質問に3人の講演者が答える形で活発に議論が進みました。

シンポジウム SDGsへの挑戦 ~サステイナブルな消費と生産~ エシカル消費から未来を変える

上智大学、国連大学サステイナビリティ高等研究所および地球環境パートナーシッププラザの共催で、SDGsの12番目のゴール「持続可能な消費と生産」に焦点を当てたシンポジウムが、10月10日に行われ、約150人が参加しました。

はじめに、上智大学地球環境学研究科の井上直己准教授が地球環境の現状について解説がありました。その後、日本UNEP協会代表理事の鈴木基之氏が、持続可能な消費と生産について説明し、各自が責任ある個人として、生産・流通・消費の段階で環境に配慮した行動をとる必要があると述べました。

持続可能な消費と生産について議論

続いて、消費者庁消費者教育推進課企画官である米山眞梨子氏から、エシカル消費(人、社会、地球環境、地域に配慮した消費行動)の普及活動について説明がありました。また、エシカル協会代表理事の末吉里花氏は、エシカル消費の普及には子どもたちへの教育活動が重要であると語り、そして、一人一人が、エシカル消費のために何か一つでも習慣化し行動することで、それが社会を変える力になると訴えました。

シンポジウム「難民危機と高等教育の役割」

10月16日、紛争から逃れた人々に対して、大学には何ができるのかをテーマにシンポジウムが開催されました。

まず、隣国シリアからの難民の若者を受け入れてきたレバノンのセント・ジョセフ大学カルラ・エデ副学長が、「シリア危機におけるセント・ジョセフ大学の取り組み」と題して基調講演を行いました。

エデ副学長の基調講演

続いて、小松太郎総合人間科学部教育学科教授をモデレーターに、「学ぶことの意味と高等教育機関への期待」をテーマにパネルディスカッションが行われました。パネリストとして、中東出身のヌール・アルバザバシさん(グローバル社会専攻博士前期課程1年)、アルマスリ・ムハマドさん(東京外国語大学大学院)およびガラーウィンジ山本香さん(日本学術振興会特別研究員)が加わり、それぞれの母国の状況や経験を踏まえ議論が交わされました。

シンポジウム「アフガニスタンの和平プロセスと国連の役割」

10月17日、2号館17階国際会議場において、上智大学人間の安全保障研究所の主催で行われました。

冒頭、内閣府国際平和協力本部事務局長で前駐イラク大使の岩井文男氏が登壇。アフガン和平の経緯や現状について説明し、「イラクと比較してなぜアフガンが現状から抜け出せないのか、国際社会が果たすべき役割は何かを考える必要がある」と述べました。

ピーター・デュー 国連アジア大洋州部長

続いて、国連アジア大洋州部長のピーター・デュー氏が、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の活動について説明。アフガン和平の行方について、「現在行われている大統領選挙の選挙結果が、今後の和平交渉にも影響を与え、予断を許さない状況にある」と述べました。

続いて、外務省中東アフリカ局中東第二課主査の畑中宏一氏が、日本とアフガニスタンとの外交関係や同国への支援の内容について説明しました。さらに、グローバル教育センターの東大作教授が、02年のアフガニスタン復興支援国際会議以降の和平プロセスを振り返った後、現在の和平プロセスについて説明しました。「タリバン勢力と米国との直接交渉が再開するかが重要な鍵となっている。しかし、大統領選挙の遅れや、タリバンが選挙結果を受け入れるかによって、交渉の進展が影響を受けかねない」と述べました。

映画上演:UNHCR WILL2LIVE Cinema パートナーズ 『女を修理する男』

10月18日に、UNHCR WILL2LIVE Cinema パートナーズ(旧 旧難民映画祭-学校パートナーズ)が6号館101教室において行われ、約200人が参加しました。

上映した映画は『女を修理する男』。2018年にノーベル平和賞を受賞したコンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ医師が、国内の紛争によって性暴力の被害に遭ったコンゴの女性に対して献身的に治療を行う姿を追ったドキュメンタリーです。

当日は上映前に、UNHCR駐日事務所の河原直美副代表が挨拶し、上映作品の背景やUNHCRの活動について説明がありました。

映画はショッキングな内容も含まれていたものの、上映後のアンケートでは、ほぼ全員が好意的な評価を寄せ、「自分の知らなかった世界の現実を知ることができた」「性暴力に対し団結して闘っている人々に感動した」などの意見が寄せられました。

『国連職員と話そう!』国連開発計画駐日代表近藤哲生氏を迎えて

10月21日に開催され、約90人が参加しました。参加者のうち、3分の1が高校生でした。

今回は国連開発計画(UNDP)の駐日代表である近藤哲生氏が登壇し、近藤氏のこれまでのキャリアを振り返ったほか、UNDPの活動内容を紹介しました。

その後、近藤氏と総合グローバル学部の植木安弘教授との対談という形で議論が進められました。UNDPが途上国や災害・紛争に見舞われた国に対し、どのような方法で支援を行っていくかについて、また、企業とUNDPとのパートナーシップによる支援について、事例を挙げて説明しました。

UNDPでのやりがいについて質問された近藤氏は、「国連職員が紛争や災害のあった地域に入ることは、『国際社会はその地域の人々を見捨てはしない』というメッセージを伝えることになり、それが自身のやりがいにつながっている」と答えました。

トーク・セッション「国連デー・プレ・イベント「Special Talk Session」SDGsへの若者のコミットメント

10月23日、6号館101教室において、10月24日の「国連デー」のプレ企画として、BNK48のキャプテンであるチャープラン・アーリークン氏を招いて特別トーク・セッションが開催されました。BNK48はタイの国民的人気グループで、バンコクを拠点に活動しています

チャープラン氏は、上智大学の協定校であるタイのマヒドン大学で化学を専攻し、今年5月に卒業したばかりです。BNK48の活動でプラスチックごみの削減キャンペーンを行っていることなどについて、ビデオ映像を交えてプレゼンテーションを行いました。

チャープラン・アーリークン氏(左から3人目)と登壇者

チャープラン氏のほか、国連アジア太平洋経済社会委員会副事務局長のホンジュウ・ハム博士、ユネスコバンコク・アジア太平洋地域教育局所長の青柳茂氏、上智大学学生代表として、矢部百香さん(総合グローバル学部総合グローバル学科4年)とインギ—・グオさん(文学研究科教育学専攻博士前期課程2年)も登壇しました。

トーク・セッションは、バンコクの事業会社Sophia Global Education and Discovery Co., Ltd (Sophia GED)代表取締役でもある、廣里恭史グローバル教育センター教授の司会で、アジア太平洋地域におけるSDGsへの若者のコミットメントをどのように喚起し、浸透させていくかをテーマに行われました。チャープラン氏は、「社会へコミットしていくことは自分にとって価値があることであり、他の人を手伝うことで自分も助けられる」と話しました。

最後は、オンラインツールの「mentimeter」を使い、SDGsを達成する上での一番の障害は何かなどについて、来場者を交えて活発に意見が交わされました。

シンポジウム「バンコク国連機関とアジア太平洋の持続可能な開発への課題と展望」

国連デーである10月24日、アジアのSDGs(持続可能な開発目標)の進展について考えるシンポジウムが開催されました。

国連アジア太平洋経済社会委員会副事務局長のホンジュウ・ハム氏は、基調講演でアジア地域におけるSDGsへの取り組みがほとんど進展していないことをグラフで指摘しました。2030年の目標達成のためには取り組みを加速させる必要があると訴えました。

アジアのSDGsを進めるために何をすべきか、多角的に議論

続くパネルディスカッションでは、ハム氏に加え、ユネスコバンコク・アジア太平洋地域教育局所長の青柳茂氏、本学地球環境学研究科の黄光偉教授が登壇し、モデレーターを東京大学大学院教育学研究科の北村友人准教授が務めました。

SDGsの目標達成に向けては、一人一人がどのような貢献ができるのかを考える必要があるとの意見が出されました。また、水資源について、いかに平等に分配するか、そのための資源管理をどのように行うかという議論も展開されました。さらに、教育により人々の意識を変え、イノベーションを起こすことによって、その力を諸問題の解決に役立てる必要があるとの考えが共有されました。

<ポスト企画>シンポジウム「『緊急時の教育支援』-最も取り残されがちな権利を守るために-」

10月30日、「教育を後回しにはできない基金」、教育協力NGOネットワーク(JNNE)および本学の共催で、緊急人道危機下の教育の重要性を共に考えるシンポジウムが6号館402教室で行われました。

はじめに、「教育を後回しにはできない基金」事務局長のヤスミン・シェリフ氏から、同基金の活動内容について説明がありました。

続いて、シェリフ氏のほかに、ユニセフ東京事務所副代表の根本巳欧氏とJNNE副代表の柴田哲子氏が加わり、小松太郎総合人間科学部教授の司会で、パネルディスカッションが行われました。

緊急時の教育支援について、白熱した議論が展開された

パネリストからは、自然災害や紛争など、生存と保護が脅かされる「緊急時」においても、教育は生存活動という面からも重要であり、緊急時に友達と学び、遊ぶことが子供たちの一番の心理的ケアであるとの説明がありました。また、緊急時を脱し復興期に入った場合も、切れ目のない支援により、教育を継続させることが必要であり、教育が途切れることが復興期に地域を再建する人材の不足につながるとの指摘もありました。

さらには、NGOと現地政府との協力関係の構築が重要である一方で、NGOや国際機関はあくまで現地政府を補完する立場で活動する必要があるとの見解が出されました。

最後に、外務省国際協力局審議官の桑原進氏から、緊急時における教育支援についての日本政府の取り組みが示されました。

写真展「UNEP(国連環境計画)地球環境情報展」

10月7日から24日まで、2号館1階エントランスホールにおいて、写真展「UNEP(国連環境計画)地球環境情報展」が開催されました。本学とUNEPとの共催(協力:公益財団法人地球友の会、一般社団法人日本UNEP協会、NPO法人UMINARI)。

海洋プラスチックごみによる環境汚染や海洋生物への影響が、昨今頻繁にニュースに取り上げられています。現代の生活が海洋環境にどのような影響を及ぼしているのか、また、海では今何が起こっているのかなどについての展示を通じ、多くの人に考えてもらう機会となりました。

上智大学 Sophia University