関西地区のテレビ局のプロデューサーやディレクターが審査員を務める映画祭「「きのくに学生ドキュメンタリー映画祭」(主催・わかやま楽落会)」。2回目を迎えた今年は、和歌山県和歌山市で開催されました。
3月下旬、関西地区だけでなく全国からの応募作品の中から8作品が招待上映されて表彰式が行われました。本学からは文学部新聞学科の学生3人が個人制作したドキュメンタリーにそれぞれ審査員特別賞が贈られました。3人はいずれも新聞学科の水島宏明教授のゼミに所属して社会や人間の営みを映像で記録するドキュメンタリー制作を実践しています。今回は2023年度に授業内で制作した作品が受賞対象になりました。
審査員特別賞「現世を生きる山伏たち」(4年・保坂 凪砂さん)
4年生の保坂凪砂さんが制作したのは「現世を生きる山伏たち」。
日本の伝統宗教である修験道。信仰者たちは「山伏(やまぶし)」と呼ばれています。彼らは山の中で、一体どんな思いで修行をしているのでしょうか。また普段は社会人として普通に働きながら、休日には山の中にこもって修行をする独特の生活について、取材する保坂さん自身も修行体験しながらビデオカメラで自撮りなどの撮影をしました。
作品は審査員から「魅力的な画造りと、現代の山伏のリアルな生活について取材した着眼点がすばらしい」と評価されました。
今回の受賞について保坂さんは次のようにコメントしています。
「私がテーマにした山伏とゆかりの深い和歌山県で賞を頂けたこと、また映画祭で多くの方に山伏について知っていただけたことが、とても嬉しいです。
私の映像作りの目的は、作品を見てもらうことで、見てくれた人、ひとりひとりの世界が広がることにあります。これからも未知の体験や知見を追い求め、さまざまな形でそれを発信できるような人間になるべく、努力していきます」
審査員特別賞の「まつぼっくりと牛丼」(新聞学科3年・中野 美子さん)
東京・新橋駅前で「靴磨き」を仕事にしている92歳の女性がいます。太平洋戦争を経験し、戦後の混乱期、高度成長、バブル景気、さらにリーマンショック…。その間ずっとサラリーマンの靴を磨きながら、路上から日本社会が変わりゆく様を見つめてきました。
昭和、平成、令和と3つの時代をまたいで素手も使って人々の靴を磨いてきた女性。なぜかいつも松ぼっくりを足下に置いています。制作者の中野 美子さんは、晴れの日だけでなく雨や雪の日もサラリーマンの街・新橋に通い、女性が靴磨きをする姿をビデオカメラで記録しました。
審査員からは「取材対象者との関係性が映像を通して伝わってきた。歳をとっても働き続ける高齢者の姿を学生ならではの独自の視点から描いている」と評価されました。
中野さんは今回の受賞について次のようにコメントしています。
「この度の受賞、大変嬉しく思います。これからも映像を通して、社会に広がるさまざまな営みに目を向けて、伝えていけるよう精進していきたいと思います」
審査員特別賞「Life is Journey」(新聞学科3年・松尾 凪倖さん)
世界文化遺産、和歌山県高野山。
弘法大師・空海によって開かれた真言密教の聖地です。今も弘法大師の教えを伝える精神性の深い場所とされています。
そんな高野山を拠点に、マルチに活動を展開する移住者の男性がいます。「お大師様のお導き」に身を委ね、自らもまた人々のご縁を繋ぐ、高野山という宗教都市での生き方を描きました。
審査員からは「高野山を拠点に活動を展開するユニークな男性を取材対象として取り上げ、男性のキャラや多岐にわたる活動を活かした構成で全体的によくまとまった作品」という評価を受けました。表彰式でのトークセッションでは来場者から「映像的に快感で、上質な短編映画のよう」という感想もありました。
松尾さんは今回の受賞について次のようにコメントしています。
「和歌山県和歌山市で開催された映像祭で、高野山をテーマにした作品を評価していただけたことがとても嬉しく、心から感謝しています。今回の批評を活かし、今後も当事者と視聴者の視点に寄り添った作品制作を心がけていきたいです」