16個の銀原子をDNAでコーティングしたナノ蛍光物質 「DNA-銀ナノクラスター」の 立体構造解析に成功

細胞内の生体分子の可視化、病気の診断などへの応用に期待
理工学部物質生命理工学科 近藤次郎准教授の研究チーム

本研究の要点
  • ナノサイズの蛍光物質「DNA-銀ナノクラスター」の立体構造を観察することに成功した
  • この蛍光物質は、生物の遺伝物質であるDNAと人体に無害な金属である銀でできているため、細胞内の生体分子の可視化や、それに基づく病気の診断などへの応用が期待される
  • これまで試行錯誤によって合成されてきた「DNA-銀ナノクラスター」の合理的な設計が可能になる

上智大学理工学部物質生命理工学科・近藤次郎准教授の研究グループは、コペンハーゲン大学のTom Vosch准教授らと共同で、16個の銀原子をDNAでコーティングしたナノサイズの蛍光物質 「DNA-銀ナノクラスター」 の立体構造を観察することに成功しました。今後はこのナノクラスターの医療や生命科学研究などへの応用が期待できます。

この成果は、化学分野において世界最高峰のドイツ学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition(アンゲバンテ・ケミー国際版)」のVery Important Paper(VIP)に選定され、2019年9月11日付でオンライン版にて先行公開されました。

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論文名および著者

雑誌名

Angewandte Chemie International Edition (アンゲバンテ・ケミー国際版)

論文タイトル

Crystal structure of a NIR-emitting DNA-stabilized Ag16 nanocluster

オンライン版URL

https://doi.org/10.1002/anie.201906766

著者(共著)

Cecilia Cerretani (コペンハーゲン大、上智大理工共同研究員)、
金澤宏樹 (上智大)、Tom Vosch* (コペンハーゲン大)、近藤次郎* (上智大)

研究成果の詳細

銀は宝飾品や貨幣、食器、さらには食品添加物などとして幅広く利用されている貴金属ですが、これをナノメートル(10億分の1メートル)サイズの超微粒子にすると、金属としての銀とはまったく異なる性質を示すことが知られています。例えば、数個~30個程度の銀原子が集合してできる「銀ナノクラスター」は、蛍光や触媒活性などを示すことが知られています。本研究の対象となった「DNA-銀ナノクラスター」は、緑色光を照射すると遠赤色光(近赤外線)を発するという性質を持っており、生物の遺伝物質であるDNAと人体に無害な金属である銀でできていることから、細胞内の生体分子の可視化や、それに基づく病気の診断など、幅広い分野への応用が期待されています。

近藤准教授らは、X線結晶解析という手法を用いて「DNA-銀ナノクラスター」の立体構造を解析し、16個の銀原子の集団(クラスター)に2本のDNAが巻きついてコーティングされている様子を観察することに成功しました。これまで銀ナノクラスターは試行錯誤によって合成されてきましたが、今回の研究成果によって、今後は立体構造情報に基づいた銀ナノクラスターの精密なデザイン(Structure-Based Design)が可能になると期待できます。


リリースの内容に関するお問合せ

上智大学 理工学部 物質生命理工学科
准教授 近藤 次郎
近藤研究室公式サイト
j.kondo@sophia.ac.jp

上智大学 Sophia University