11月26日、教皇フランシスコが本学四谷キャンパスを訪れました。教皇フランシスコは、本学の設立母体であるカトリック修道会・イエズス会出身の初の教皇です。本学への教皇の訪問は、1981年の聖ヨハネ・パウロ2世教皇以来、38年ぶりとなります。11月23日に来日し、長崎、広島を訪問された教皇は、日本滞在最終日の26日に本学を訪れ、6号館101教室で学生・教職員に向けて、メッセージを送りました。
この度の来校に先立ち、本学では教皇フランシスコの日本訪問前に、3回にわたって講演会やシンポジウムなどを開催し、教皇をお迎えする準備を進めてきました。また、2017年12月18日には、映像回線を通じた企画「教皇フランシスコと話そう」において、本学学生たちと対話を楽しまれるなど、交流を重ねました。
約700人の学生・教職員で満席となった会場では、聖歌隊によるカトリック典礼聖歌「ごらんよ空の鳥」の後、「あなたの平和の」を来場者全員が歌う中、教皇が入場しました。
冒頭、佐久間勤理事長から「日本におけるカトリック大学であり、イエズス会により創立された大学として、今日ここに教皇聖下がいらっしゃることを大変光栄に存じます。本日、私達とともに時間を過ごしてくださることに、心より感謝申し上げます」と歓迎の挨拶がありました。
続いて、「教皇フランシスコからのメッセージ 叡智の座の大学で学ぶ者へ“Pope Francis’ Message to Students at Universitas Sedis Sapientiae”」と題して、教皇フランシスコからメッセージをいただきました。メッセージの一部をご紹介します。
「ソフィア(上智)。人間は自らの資質を建設的かつ効率的に管理するために、真の叡智なるものをつねに必要としてきました。あまりにも競争と技術革新に方向づけられた社会において、この大学は単に知的教育の場であるだけなく、よりよい社会と希望にあふれた未来を形成していくための場となるべきです。
上智大学はつねにヒューマニズム的、キリスト教的、国際的というアイデンティティによって知られてきました。創立当初から、さまざまな国の出身の教師の存在によって豊かになってきました。時には対立関係にある国々からの出身者さえいました。しかしながら、すべての教師たちが、日本の若者たちに最高の教育を与えたいという願いによって結ばれていたのです。まさにこれと同じ精神が、皆さんが日本と国外で、もっとも困っている人々を支援しているさまざまなかたちの中に息づいています。上智大学が礎を置く聖イグナチオの伝統に基づき、教員と学生が等しく思索と識別の力を深めていく環境を作り出すよう、推進していかなければなりません。それぞれの状況において、たとえそれがどんなに複雑なものであったとしても、己の行動においては、公正で人間的であり、手本となるような責任あることに関心をもつ者、決然と、弱者を擁護する者となること、ことばと行動が偽りや欺瞞であることが少なくないこの時代にあって、まさに必要とされるそうした誠実さにおいて知られる者になることです。
上智大学のキリスト教とヒューマニズムの伝統は、現代世界において貧しい人や隅に追いやられた人とともに歩むことです。自らの使命に基軸を置く上智大学は、社会的にも文化的にも異なると考えられているものをつなぎ合わせる場となることにつねに開かれているべきです。格差や隔たりを減らすことに寄与する教育スタイルを推進するものとなるような状況を可能にしつつ、隅に追いやられた人々が大学のカリキュラムに創造的に巻き込まれ、組み入れられていくことです。良質な大学での勉学が、ごく少数の人の特権とみなされるのではなく、公正と共通善に奉仕する者であるという自覚を伴うべきであり、それは各自に与えられた分野における奉仕なのです。貧しい人たちのことを忘れてはいけません。
上智大学の愛する若者、教員、そして職員の皆さん。主なる神とその教会は、皆さんが神の叡智を求め、見いだし、広め、今日の社会に喜びと希望をもたらす、その使命に加わるよう期待しています。どうぞ、わたしたちの助けを必要としているすべての人のために、祈ることを忘れないでください。」
教皇のメッセージを受けて、会場から盛大な拍手が送られる中、曄道佳明学長とカトリック学生の会の会長である鈴木隆典さん(神学科3年)から記念品としてマリア観音像(本学キリシタン文庫所蔵品)が教皇に贈呈されました。これは、長崎あるいは天草の潜伏キリシタンが「子安観音像」を聖母マリアの代用品として用いていたと伝えられるものです。教皇からも上智大学長に、マリノーノ・マンドレージによって製作された純銀製のレリーフが授与されました。
そして、聖歌隊が「教皇のための祈り」(グレゴリオ聖歌)を歌い終えると、盛大な拍手の中、教皇は6号館から退場されました。
最後に、教皇フランシスコは、四谷キャンパスのメインストリートへと移動し、車内から学生に手を振りながら帰途に就きました。メインストリートには、見送りのために集まった多くの学生が、バチカンの旗を振り、歓声を上げながら教皇を見送りました。
教皇の講話は、10号館講堂などの学内の中継会場や上智学院傘下の中高4校に同時中継されたほか、メインストリート中央や8号館ピロティなどでパブリックビューイングを行いました。YouTube Liveによるインターネットライブ中継も行われました。
教皇の講話(全文)は下記リンク先からご覧ください。
「教皇フランシスコからのメッセージ『叡智の座の大学』で学ぶ者へ」の全文を掲載