【2020上智大学国連Weeks】国連75周年企画「グローバル課題の解決に向けたグローバルな行動〜感染症、地球温暖化、軍事紛争」を開催しました

ホスチャイルド国連75周年記念担当国連事務次長をお迎えして

2020年10月12日、国連ニューヨーク本部からファブリツィオ・ホスチャイルド国連75周年記念担当国連事務次長をお招きし「グローバル課題の解決に向けたグローバルな行動〜感染症、地球温暖化、軍事紛争」と題して、オンラインによるシンポジウムを英語で開催しました。

ホスチャイルド国連事務次長と旧知の仲である本学グローバル教育センター東大作教授が、ホスチャイルド氏に特に依頼し実現したものです。(当該セミナーの動画は、国連75周年事務局のWEBサイト に掲載され、全体をご覧いただけます。)

上智大学人間の安全保障研究所が主催し、グローバル教育センター、国際関係研究所、国際協力人材育成センターが共催、国連広報センターが協力した今回のシンポジウムには、世界中から400名ほどが参加しました。またこのイベントは2020年度の上智大学国連Weeksの一環でもありました。

佐久間 勤 理事長(左)根本 かおる 国連広報センター所長(右)

冒頭挨拶では、学校法人上智学院理事長の佐久間勤教授がこれまでの上智大学と国連の繋がりについて触れながら、本シンポジウムが学生や若者にとって現代のグローバルな課題への関心を持つきっかけになることへの期待を述べました。そして、昨年2019年にローマ教皇が上智大学で講演したことも紹介し、貧富の格差や、社会的な格差を乗り越え、人間同士、また人間と自然の和解を進めるために大学として努力しており、本イベントもその一つであると強調しました。同じく冒頭挨拶を務めた国連広報センター所長の根本かおる氏は、本シンポジウムが、ホスチャイルド氏が出演する日本で初の国連75周年記念イベントとなったと述べて上智大学への謝意を伝えつつ、「私たちは今世界で起きている危機の先を見据え、より持続可能な世界の実現に向けて努力しなければならない」と述べました。

ホスチャイルド 国連事務次長

続いてホスチャイルド氏が基調講演を行いました。COVID-19が人々の健康、経済、また気候変動にもたらした多大なる影響を指摘した上で、「パンデミックは最も脆弱な人々に最も大きな打撃を与えた」と参加者に語りかけました。また、超大国間の摩擦や相互対立の復活、孤立主義の台頭などにより、国家間の協力関係が薄れていることを指摘しつつ、「国連創設から75年が経過し、コロナ禍に世界中が苦しんでいる今、国家間の連携、世界全体の協力が今ほど重要になっている時はない」と強調しました。また、国連75周年記念プロジェクトが世界100万人以上を相手に行ったアンケート調査の結果、圧倒的多数の人達が、コロナ禍や地球温暖化などグローバルな課題を解決するためには、世界各国の協調が必要だと答えていることを紹介し、国連はその協調に向けて一層役割を果たす必要があると述べました。

セシリア・カノン 氏

国連75周年事務局のセシリア・カノン氏は、世界各国で実施された国連に関するアンケート調査の結果を報告しました。そして、上智大学の学生から1727もの回答があり、世界中の大学の中でも最も多くの回答が集まったことへの感謝が示されました。そして、世界全般、東アジア・東南アジア、日本の地域別回答結果と比較しながら、本学回答の集計結果の特徴を説明しました。国際社会がパンデミック後に最優先すべき事項として、海外全般の傾向と同じように本学の回答者も「医療へのアクセス」を一番に挙げました。また、今後25年間に最も求められる事項として、本学の学生は「紛争の減少」を挙げましたが、世界全体と東アジア・東南アジアでは「環境保全」が最優先事項として挙げられていることなどが紹介されました。

サリ・アガスティン 教授(左)小松 太郎 教授(右)

その後、本学からサリ・アガスティン教授(上智大学総務担当理事)と小松太郎教授(グローバル教育センター長)が、それぞれコメントを述べました。アガスティン教授は初めに、創設以来、世界人権宣言の採択を初め、基本的人権を促進するために75年間活動してきた国連の成果を強調しました。その上で、コロナ禍と共に表面化している保護主義や孤立主義、排他的ナショナリズムの台頭に触れ、「人間の安全保障や、国際協調など、世界全体の規範をさらに促進し、実行していく上で、国連はどんな役割を果たせると思うか」とホスチャイルド事務次長に質問しました。小松教授は、パンデミックにより本学の海外派遣プログラムが大きな影響を受ける中で、海外の大学とも協力して新たなオンライン・セッションの実施を通してより多くの学生にグローバルな学びの機会を提供していることを紹介しました。そのうえで、「発展途上国において、まだインターネットへのアクセスなどが不足している地域が数多くある中、デジタル・インフラストラクチャーをさらに拡充するために、国連や先進国はどのような支援をすべきか」と質問しました。

学生らによる質疑応答の様子

さらに、フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学のサブリナ・カルロスさん、マレーシア国立大学のアレクサンドラ・プルデンさんがそれぞれの国から、アフガニスタン出身で九州大学に留学中のコヒスタニ・アーマッドさん、上智大学国際教養学部3年の木村奈穂さんが日本から、直接ホスチャイルド事務次長に質問しました。カルロスさんは、コロナ禍の中でSDGsを実現していく難しさについて、プルデンさんは、マレーシアボルネオ島における森林火災や洪水、野生動物の生息地の破壊など自然環境の劣化を語り、「世界はいつ森林伐採を止めるのか」と投げかけました。木村さんは、コロナ禍の中で国連職員の精神的なダメージにどう対応しようとしているのか、アーマッドさんは、現在行われているアフガン政府とタリバンの和平交渉に触れ、「アフガンの和平交渉に、今後国連はどのように関わっていくのか」と質問しました。また、国際NGOである日本ボランティアセンター(JVC)から参加した加藤真希さんは、「NGOなど市民社会が、草の根のレベルで行っている和解や共存に向けたプロジェクトは、平和構築全体においてどのような意義があると思うか」と問いかけました。

ホスチャイルド国連事務次長は、その一つ一つに丁寧に応じました。世界的な規範はSDGsを初めかなり確立してきているが、それをどう実行できるかが最大の鍵だと強調しました。またデジタル社会での格差を解消していくことが、これからの国連の大きな課題であると応じました。そして、コロナ禍の中で経済的な苦境に加え、精神的な問題が深刻さを増しており、国連全体としても対応が迫られていること、アフガン和平なども含め、平和の確立のためには、大きな枠組みでの和平合意と、草の根レベルの平和構築の双方が必要であり、国連はその両方で役割を果たすべく、たとえ目立たないときがあっても、努力は続けていると強調しました。また、国連が、加盟国だけでなく、多くの市民社会やNGO、企業などと協力を深めていることを力説し、国連はそんな多くのアクターの媒介役にもなりたいと強調しました。

東 大作 教授

最後に、本シンポジウムを企画し、司会も務めた東大作国際協力人材育成センター副所長は「我々が現在直面しているグローバル課題は、一国で解決できるものではなく、全世界的にアクションをとることが必要不可欠。自分自身も微力ながら、日本が、コロナワクチンの世界的普及に向けた枠組みの制度作りや資金提供において主導的な役割を果たすべきだと主張している。一人一人が、それぞれの立場で、グローバルな課題の解決に向けて何が貢献できるのか、それを考えるきっかけになって欲しい」と語りました。ホスチャイルド氏も、「今日のシンポジウムでの対話を通じて、世界中の若者が様々な課題に興味を持ち、真剣に解決の方法を考えていることを聞いてとても勇気づけられた。辛い時代ではあるが、みんなで力をあわせてグローバル課題に向き合っていきたい」と述べ、シンポジウムを締め括りました。

国連本部のTwitterでも紹介されました

このシンポジウムの後、2020年10月18日(日)NHK総合テレビ「これで分かった! 世界の今」で、国連75周年についての特集があり、その中で、本シンポジウムも紹介され、ホスチャイルド氏や本学の木村菜穂さんの発言が紹介されました。

また本イベントの録画は、Join UN75(国連本部 創設75周年)YouTubeチャンネル でも掲載され、ツイッターでも紹介されました。

上智大学 Sophia University