上智のランチ事情

一般的に、大学の学生食堂(学食)は手頃な価格で食事をすることができる場所というだけでなく、友達と情報交換したり、授業で疲れた頭を休めて甘いものを食べたりできる場所というイメージがあります。持参したお弁当を広げる人もいますし、レポートを書きながら食事をほおばっている人も。いろいろメニューが揃っていて、楽しめるのも魅力的です。ここでは上智大学の新旧ランチ事情をご紹介します。

1.ソフィアランチ事情 2025

キッチンカーでランチボックスGET

公式ウェブサイトでも施設の紹介をしていますが、現在大学内には学生のための学食が多数あります。各学食には400~500人が食事可能な席があり、ひとり用のカウンター席からグループ席、ファミリーレストランのようなボックス席もあります。2005年に竣工した2号館には屋上テラス席もあり、春にはお昼を食べながら土手の桜を楽しむことができます。
学食のメニューもサラダ、麺類、定食といった定番メニューに加え、パスタ、サンドイッチ、クレープなど豊富なラインアップから選ぶことができます。また、本学は海外からの留学生も多く、信仰上の理由から食べられる食材が決まっている学生が不安を感じることなく、食事ができるようにハラル認証をとっている食堂もあります。食材だけでなく、調味料、厨房や調理器具まで完全にハラル対応となっています。メニューはカレーが中心ですが、窯焼きのナン、ガパオライスなどもあります。誰でも利用することができるので、食事を通じて異なる文化を知ることができます。また、毎日4台※1のキッチンカーが学内に出店しており、豊富なメニューを提供しています。

2.学食の変遷

 では上智大学には、いつ頃から学食があったのでしょうか?「食堂」という記載が史資料の中に初めてあらわれるのは、大学創立から19年後の1932年のことになります。大学令による大学への昇格にふさわしい新校舎(現1号館)が竣工されたときに、地階に食堂と厨房が配置されたのです。新しい建物と共に始まった学食では、どのような食事が提供されていたのか、残念ながら資料は残っていません。しかし、今まで家からお弁当を持参していた学生が、食堂ができたことで温かい食事をとることができるようになったのではないかと想像できます。その後、1950年代前半には在校生数が1000人を超えると、学生食堂が狭くなり、十分に学生の利用ができないという声が聞かれるようになります※2.それを改善したのが、戦後払い下げを受けた、朝霞(埼玉県)の陸軍予科士官学校校舎(木造二階建)の活用でした。1953年に木造校舎の1階部分を800人ほどの学生を収容できるカフェテリアに改装したのです。このカフェテリアは、1960年にイエズス会教授館(現SJハウス)の建設のために取り壊されるまで学生たちの憩いの場となりました。メニューにはデザートなどもあり、アイスクリームも提供していたことが写真からわかります。当時としてはおしゃれなカフェテリアだったと言えるかもしれません。

*1号館図面(地階平面図) 食堂と台所
*カフェテリア内部 (1950年代)
*上智会館セルフサービス式の学食(1962年頃)

1956年に上智会館が竣工し、1階に収容人数500人の学食もできました。カウンターで食事を受け取るセルフサービス式の食堂でした。カウンターには、ソーダファウンテン3、コーヒーメーカー, ティーディスペンサー4が置かれ、その時代としては新しい機器とサービスが提供されていました。しかし、学生が増加傾向にあったことから、学食は押すな押すなの大賑わいで、昼食時に長蛇の列ができるようになり、混雑緩和を求める学生の声が強まっていったと当時の学生新聞は伝えています。メニューの値上げもあり、味に対する不満も少なからずあったようです。

3.食事をする場所の多様化

開放的な空間で食事をしてリラックス(9号館中庭)

その後、学食のみならず学内数か所に食事ができる場所や空間ができました。これは、学食の混雑の解消とメニューやサービス改善を求める学生の声に対応しただけでなく、単に食事をする場所ではなく、学生生活を豊かにするために不可欠な場所や空間が必要であるという認識が学内で高まってきたことも影響しています。学生同士でコミュニケーションをとりながら昼食をとれる場所、ひとりになれる空間、レポートをまとめながら軽食をとる場所、打合せをしながら食事をする場所など、様々な目的を持った学生が利用できる場所や空間が年々増加しています。

※1  授業期間中に出店しています
※2  「食堂が寮生に占領され、一般学生は食堂を追われ、食事をする場所さえ失ってしまった」『上智大学新聞』(1950年4月15日付 第34号)という投書が掲載された
※3  各種清涼飲料水を提供するためにファミリーレストランやファーストフード店などで使用される装置
※4  お茶や水を一定量注ぐことができる大型保存容器

上智大学 Sophia University