答えはすぐに出なくても、自分に問い続けることで見えてくるものがある。

千葉 毅朗
神学部神学科2年

“この2年間で一番大きく成長したのは、自分に問うという姿勢ではないでしょうか”と語る神学部2年の千葉毅朗さん。身近な人の死をきっかけに神学に興味を持った彼が、キリスト教の価値観と現代社会、さらには自分の未来の間に見出した関連性とは?

人間の五感で捉えられないものが学びの対象だから、神学は面白い

私が進学先に神学部を選んだのは、身近な人の死に触れたことで「死ぬとはどういうことなのか」「人間にとって神とはどのような存在なのか」ということを、改めて考えてみたいと思うようになったからです。高校はプロテスタント系だったのですが、カトリックの祈りの言葉が持つやわらかな表現に惹かれ、上智大学の神学部を志望しました。

カトリックの神学部があるのは日本では上智だけ。キリスト教についてしっかり学べると思ったのも理由の一つです。先生方のほとんどが神父様であることも重要な要素でしたね。人生をかけてキリスト教に向き合っている方々の考えに触れ、その学びとともに学生生活を歩むのは、私にとっては何物にも代えがたい価値ある時間となっています。

神学の面白さは、見ることも聞くことも触ることもできないものを学びの対象としていることにあるような気がしています。人でなければ神の存在を見出すことはできません。言い換えると、神学は人だからこそ可能な学び。物質的なものを追うのではなく、神という対象をどう捉え、神という対象にどのような思考でアプローチすることができるのかと考えるのは、とても奥深く楽しいです。

神学部の好きなところは学生たちが繋がりを大切にしているところ。私が入学した時は、コロナ禍の真っ只中でした。入学式や対面での交流もない中で、不安に陥っていた私たち新入生を心配した先輩方が、SNSやZoomを駆使して新入生に情報発信やフォローアップをしてくれたんです。みんな神学部に誇りを持っていて、学年を超えて仲良くなろう、お互いを大事にしようという気持ちが強く感じられました。今は同級生とキャンパスで過ごすことができますし、彼らから新たな視点や考え方を学べることが何より本当に嬉しいです。

神学は想像以上に多様で、現代社会と深く繋がっていた

入学してから驚いたのは、神学という学問が想像以上に多様であるということです。ひと言でキリスト教と言っても、その中には幅広い分野がある。実際に神学部の授業では、文化や歴史だけではなく、教会という建物が持つ意味や教会に通う集団の性質なども学びました。

聖書を勉強する中で、その考え方や教えを現代的な問題に落とし込んで考える授業もあります。安楽死や中絶など倫理観を問われる社会問題も、神学の視点から見て議論する。その過程で視野が広がりましたし、古い学問だからといって現代で通じないということはなく、むしろ神学は身近なところで現代社会に繋がっているということを実感しました。

神学部で学ぶうちに、キリスト教で重視される「対話」への印象も変わりましたね。入学前は、対話というものに対して、自分も話すための何かを持ち寄らなければならないというイメージがあったんです。ただ話を聞くだけでなく、助言やフィードバックを与えてこそ対話と考えていました。でも、キリスト教への理解を深める中で、対話において何よりも大切なのは相手を受け入れることであり、時にはただ耳を傾けることも対話の大事な要素であると感じるようになりました。これもまた現代で大いに役立つ学びです。

私は高校生を対象としたサマーキャンプを実施する団体の活動に力を入れています。この団体には他大学の学生も参加しているのですが、上智の神学部というと興味を持ってもらえることが多いんです。自分は外から見ても珍しい学問に取り組んでいるという実感が湧くと同時に、上智神学部の存在感を強く感じます。

誰かと関わることを大切にしてきた自分だからできる方法で、地元の仙台に貢献したい

この2年間で一番大きく成長したのは、自分に問うという姿勢。他の学問に比べると、神学は就職に結びつけにくい学問です。それでも、私が神学部にいるのは、学びたいことがあるから。自分の行動や選択に対する意味づけは常にしていかなければならない。だから自分で自分に問うという習慣が身につきましたし、その答えがなかなか出なくても、その答えを見つける過程で自分が考えたことや感じたことを大切にできるようになりました。

その意味づけを続ける中で、神学部での学びが特に役立つと思うのは、「関わり合い」という点から今の社会を見たときです。キリスト教では、他者との関わりが大切にされていますが、コロナ禍を経て、昨今の社会では人と人の関わり方が見直されていますよね。だから私も、神学部の学びの中で、自分自身は今後どのように他者と関わり、共存していきたいのかということを常に考えるようになりました。

将来は、地元仙台のために働きたいと考えています。私は、東北地方が震災で壊滅的な打撃を受けた姿も、そこから少しずつ復興する姿も自分の目で見てきました。この経験を活かし、他者との関わり合うことを大切にしてきた自分だからこそできるアプローチで、多様な人たちとの関係性を築きながら地元の復興と活性化に貢献していきたいですね。

※この記事の内容は、2021年10月時点のものです

上智大学 Sophia University