国文学・国語学・漢文学を有機的に連関させ、人間・社会・文化の本質を問う視点を養う

学科の特色

古典学を教育・研究の基盤に置き、そのディシプリンを重視しながら、読解力・思考力・表現力を鍛えます。日本文化研究の中核を担う学科として、人間・社会・文化の本質を問う視点を養うとともに、国際化の中で日本文化を問い直し、世界に発信しうる学殖と見識の獲得を目指します。学生の個性を尊重し、個々の能力を引き出すため、少人数の授業運営のもとに主体的な取り組みを重視しています。

2019年に創設60周年を迎えた国文学科では、多くの研究者・教育者を輩出してきた伝統を受け継ぎ、専門性と学際性を兼ね備えた、次世代の研究・教育を担う人材の養成に努めます。

卒業論文 – どんな研究ができるか

卒業論文のテーマは、学生一人ひとりが自由に決めています。具体的にどのような研究ができるのか、近年の例からいくつかを紹介します。

日本書紀の「亦・又・復・更」について

日本書紀で「また」と訓読される4つの漢字の用法について、漢文の用法に適合する巻と、日本化した用法の巻とがあることを示し、それぞれの編述者が異なることを明らかにした。上智大学国文学会の機関誌『上智大学国文学論集』55号に掲載。

志賀直哉の創作姿勢とその変遷

志賀直哉の作品の中にニーチェ流の人間観や自然主義に通じる要素があることを丹念に明らかにし、これまでの志賀の理解への見直しを迫った論文。

夕顔の歌の解釈とその人物造形について

源氏物語夕顔巻の「心あてに」で始まる歌は、従来さまざまな解釈がなされ未だ定説をみない。この歌を、これまでの注釈史や和歌を踏まえ、夕顔の君の人物造型と合わせて再解釈した。

近代文章における従属節の丁寧化

「行く」を「行きます」と丁寧に表現するとき、「行って・行くと・行くとき」(従属節)にも「行きまして・行きますと・行きますとき」などと「ます」を付けるだろうか。こんな私たちの無意識の選択について、明治以降の文献をたどりながらその傾向を明らかにした論文。

軍記物語の描写から考察する中世動乱期の母親像

『平治物語』の常葉(ときは、源義経の母)を中心に、軍記物語に登場する母親を網羅的に分析し、唱導資料(民衆向けに仏法を説き聞かせる語り物)も読み合わせながら、その母親としての考え方や生き方を明らかにした。

梁川紅蘭の中晩唐詩受容

幕末の女性詩人として知られる梁川紅蘭が、中国・中晩唐期の詩をどのように受容し、自らの詩を作り出したかを、具体的に明らかにした。『上智大学国文学論集』52号に掲載。

カリキュラムの特徴

「国文学」「国語学」「漢文学」の3分野を連動させながら研究テーマを見つけ、資料の検討・個々の分析・論理の追究を行うことで、新たな発想に立って問題を解決する能力を培います。

1年次には、国文学・国語学・漢文学の基礎的学力・知識を基礎・概説の科目を通して身につけます。2年次以降は、研究を進めるための技法の習得を重視して学びます。また2〜4年次の演習・特講科目において、一つの科目を連続して履修できることも特徴です。長い時間をかけて原典と向き合い、深く、広く学びながら、4年次に作成する卒業論文へとつなげます。

※科目の詳細については、シラバスをご覧ください

科目紹介

古典文学講読

『伊勢物語』などの影印本の講読を通し、くずし字を読む力を養い、古典作品を原文で読む力を身につけます。作品が書かれた時代に思いを馳せながら、作品の世界を深く理解していきます。

国語史概説

上代から近代にいたる日本語の様相・変化を文法の側面から概説し、日本語の変遷を構造的に解き明かしていきます。さらにいわゆる「学校文法」を歴史的存在として捉え直し、文法研究への理解を深めます。

古典文学史・近代文学史

国文学の歴史的変遷の基本的知識を身につけることを第一目的とし、各時代の作品講読を通して、古典文学と近代文学の違い、国文学の連続性と非連続性、外国文学との関係についても考察します。

近代文学演習

日本近代の代表的な文学作品をテーマに、その特質や価値について学生の研究発表を軸として考察します。芥川龍之介、中島敦、泉鏡花、谷崎潤一郎などの作品に加え、短編小説なども題材とします。

漢文学特講

『論語』などの儒学の書から、『三国志演義』のような小説、さらには頼山陽などの日本人の漢詩文まで、幅広い作品・人物を取り上げ、漢文読解の方法、中国の思想と文学、日中比較文学の諸問題について学びます。

研究法

研究や論文作成の方法を専任教員による輸講形式で講義し、4年次の卒業論文作成に向けて、学生一人ひとりが研究の方向性と課題を自ら見出し、論文に取り組むための基盤を培います。

取得可能な教員免許と教科

  • 中学校教諭1種(国語)
  • 高等学校教諭1種(国語)

学芸員課程が履修できます。

教育の目的・方針

日本文化研究の中核を担う学科として、国文学・国語学・漢文学の有機的連関のもと、古典学を教育・研究の基盤にすえ、読解力・思考力・表現力を鍛えながら、人間・社会・文化の本質を問う学識と見識を養うこと

専門性と学際性を兼ね備えた多角的な思考方法の養成を重視し、教育・研究の世界をはじめ、国際化のなかで貢献しうる人材を養成すること

本学科では、原典資料を精密に解読する力を持ち、そこから得られた確実な論拠に基づいて、独自の見解を説得力のある形で公表することができることを目指し、どのような時代・分野を専攻する者でも、国文学(日本文学)・国語学(日本語学)・漢文学の三分野を偏りなく学びます。学生が卒業時に身につけているべき能力や知識を次のように定めており、卒業要件を満たせば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。

 

  1. 江戸期以前の原典資料が精確に解読できる技術を身に着け、そのために必要な、背景の文学史・国語史の知識を活用する能力
  2. 江戸期以降の板本や、近代・現代の多種のメディアを理解し、それらに依存した各時代の言語表現についての、的確な判断力
  3. 上代から現代に至る各時代の言語作品の歴史とそれぞれの特質を、原典資料に基づいて理解し、諸学説の得失を根拠を以て論じる能力
  4. 各時代の日本語の音韻・文法特徴を、具体的な言語作品に基づいて調査する方法を修得し、その調査に基づき独自の見解を発表する能力
  5. 漢文訓読の技術を身につけ、漢文訓読の歴史を把握した上で、漢文表現が日本語にもたらした精華を理解して、文語文・漢文を味読する能力
  6. 上記の知見と判断力・表現力の醸成の上に、卒業論文を執筆し、客観的で着実な原典解読に基づいて、独自の見解を主体的に主張し、しかもそれが独善に陥らないような対話性・協働性

本学科は、ディプロマ・ポリシーに沿って、国文学(日本文学)・国語学(日本語学)・漢文学の三分野を偏りなく学ぶことにより、日本の言語文化の精髄に達し得るように、原典資料の精密な読解を重視し、次の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。

 

  1. 江戸期以前の原典資料が精確に解読できるような導入・指導を行ない、併せて、そのために必要な背景の文学史・国語史の知識を与える。
  2. 江戸期以降の板本や、近代・現代の多種のメディアについての指導を行ない、各時代の言語表現との相関について、的確な判断力を養う。
  3. 上代から現代に至る各時代の言語作品の歴史とそれぞれの特質を、原典資料に基づいて理解させ、主要な学説・論争について、根拠を以て論じ得る力を養う。
  4. 各時代の日本語の音韻・文法特徴を、具体的な言語作品に基づいて調査する方法を修得させ、その調査に基づき独自の見解が発表できるように指導する。
  5. 漢文訓読の技術を身につけさせ、漢文訓読の歴史について指導した上で、漢文表現が日本語にもたらした精華を紹介して、文語文・漢文を味読させる。
  6. 上記の知見と判断力・表現力の醸成の上に、卒業論文を課し、客観的で着実な原典解読に基づいて独自の見解を主体的に主張させ、それが独善に陥らないための対話性・協働性を、論文指導の過程で養う。

日本の伝統的な言語文化と日本語の特質を理解するために、文語や漢文訓読も含んだ日本語の豊かな言語作品を、国文学・国語学・漢文学の領域で広く深く学ぶ意欲を持ち、そのための基礎的な読解力を備えている学生を受け入れます。

 

  1. 古代から現代に至る日本の文学作品に関心があり、それぞれの原典資料を、より深く、より綿密に判断して読み解く力を更に伸ばし、自らの主体的な新しい読み方を発見し、それを他との対話の中で磨いて行くことに意欲がある
  2.  古代から現代に至るまで一貫して「国語」であり続けた日本語の仕組みを、時に他国語との対照も交えながら、主体的に解明して行くことに意欲がある。
  3. 日本語・日本文学の歴史で、常に基盤の一つであった漢文体に関心があり、漢文体の作品を味わう力を、さらに伸ばすことに意欲がある。

教員一覧

瀬間 正之 教授

研究分野 古事記、日本書紀、風土記を中心とした上代文学の研究

長尾 直茂 教授

研究分野 日本における中国通俗小説受容の研究と日本漢学の研究

服部 隆 教授

研究分野 近代における国語および国語学の成立史に関する研究
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福井 辰彦 教授

研究分野 幕末・明治期を中心とした日本漢文学の研究

本廣 陽子 教授

研究分野 源氏物語を中心とした平安時代の物語文学の研究

山本 章博 教授

研究分野 中世を中心とした和歌文学および歌枕の研究
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木村 洋 准教授

研究分野 日本近代文学の研究

福井 拓也 助教

研究分野 ジャンル論を中心とした日本近現代文学の研究

上智大学 Sophia University