上智大学は、アフリカ地域と深く関わっていくみなさんとともに、アフリカ地域への理解を推進し、連携を深めていくための取り組みとして今年で第8回目となる「アフリカWeeks」を5月13日から28日まで開催しました。期間中、講演会やシンポジウム、学生企画など多彩なプログラムを実施しました。

上智大学アフリカ研究紹介

5月13日、本学のアフリカ地域を対象とした研究や授業、実践型プログラム、および学生たちがアフリカで行っている支援や交流活動を紹介するオンライン・セミナーを開催しました。セミナーには、高校生、大学生、一般・社会人の方など約70人が参加。総合司会はアフリカ地域の研究者でありSFDP推進室の山﨑瑛莉氏が、学生司会はアフリカWeeks学生運営実行委員会の飯田芽生さん(総合グローバル学部総合グローバル学科2年)が務めました。

前半は、アフリカWeeks学生運営実行委員会の3人から受講した授業や自身の活動について紹介がありました。飯田さんは、自身が所属するサークル「ASANTE PROJECT」の活動を取り上げました。タンザニアで幼稚園に通う子供たちを支援する活動を紹介しメンバーが現地に赴き幼稚園の先生たちと議論し、現場のニーズを確認しながら物資の提供や幼稚園建設のサポートをしていると話しました。

後半は、アフリカ研究に携わっている3人の教員が順に登壇しました。

岩﨑えり奈教授(外国語学部フランス語学科)は、北アフリカの社会経済、開発と貧困、家族、地下水とオアシスを研究テーマとしており、北アフリカ研究の面白さについて話しました。まず、人や物が行き交う「移動空間」として地中海とサハラ砂漠を捉え、「北アフリカは多様性に富んだ交流の場である」という考え方を紹介。そして、エジプト西部砂漠のオアシス地域を例に、台風のような天災がなく地下水以外の水資源がない状況は、人間社会が自然環境とどのように向き合うかということを考える環境として興味深い場所であることを提示。そのうえで、この地域では文明や技術が発展してきたことをふまえ、水資源がないという希少性ゆえに新しい知恵を学べる、という面白さについて述べました。

戸田美佳子准教授(総合グローバル学部)は、アフリカ中部のカメルーンやコンゴをフィールドに、直接観察を重要視する生体人類学の研究を行っており、障害者に目を向けた地域研究について話しました。また、非西欧社会における障害観、障害学と文化人類学やジェンダー研究の接合、アフリカ狩猟採集民にみる「ケア」の再考といった研究の広がりについても話しました。

最後に、本学に在籍するイエズス会海外客員教授のToussaint Kafarhire Murhula氏が登壇し、主に3つのことについて述べました。まず、自身が会長を務める学術組織”African Studies Association of Africa” を紹介し、アフリカ内外の研究者が集い、アフリカ地域における研究活動を精力的に行っている状況について話しました。次に、アフリカの文化の多様性や魅力を語り、世界の未来がアフリカにあることを強調しました。最後には、希望の源としてアフリカの若者たちへの期待を述べて締めくくりました。

フランス語を活かしてアフリカで働く

パネルディスカッションでは、参加者からの質疑応答も行われた

15日、高校生・大学生を主な対象に、アフリカでの実務経験者を招いたセミナーが実施されました。フランス語を活かしたアフリカ地域への就業のきっかけを創出することを目的として開催され、会場には海外就労に関心を寄せる126人が来場しました。

冒頭、独立行政法人国際協力機構(JICA)でアフリカ部次長の上野修平氏が挨拶に立ち、セミナーへの期待を述べました。そして、外国語学部フランス語学科の岩﨑えり奈教授をモデレーターに、JICA調達・派遣業務部参事役のンジャイ林恵美子氏、神奈川大学法学部特任講師でJICA緒方貞子平和開発研究所非常勤研究助手の槌谷恒孝氏、三菱商事株式会社グローバル総括部欧阿中東室次長中東統括マネージャーの岡本浩治氏、NGO緑のサヘル事務局長の菅川拓也氏が登壇しました。

まず、登壇者らが写真とともに勤務経験国の現地の様子や、プロジェクト活動の概要、自身がアフリカで働くことになった経緯などを紹介しました。菅川氏は、相手が政府でも部族でもフランス語が話せることで距離が縮まったという経験談から、アフリカで長期的に活動するには最低限の言語スキルが必要であると説きました。岡本氏はアフリカビジネスの面白さを「急成長が見込まれる地域ゆえのチャンスの多さ」であると語り、入社歴関係なく駐在のチャンスが回ってきやすい民間企業のメリットを語りました。槌谷氏はアフリカで働くと決まってからフランス語を学んだ経験から自身の語学学習方法を紹介し、「楽しみながら勉強できれば、始めるのに年齢は関係がない」と参加者にエールを送りました。元々アフリカで働くことを想像していなかったンジャイ林氏は、「皆が生きるのに力が入りすぎていない環境が、素の自分でいることを後押ししてくれた」と、アフリカで働く魅力を語りました。

そして、後半は参加者からの質問に答える形式でパネルディスカッションを実施し、最後に登壇者から参加者へのエールで締めくくりました。セミナー終了後は交流時間も設けられ、多くの参加者が登壇者にノートを持って駆け寄り、質問をする姿が見られ、盛況のうちに閉会しました。

プレザントリ(冗談)が繋ぐ友愛の文化~コートジボワールに見る笑いの交渉術、その起源と歴史

「冗談」の文化を解説したメケ・メイテ学長(左)

19日、上智大学大阪サテライトキャンパスで「プレザントリ(冗談)が繋ぐ友愛の文化~コートジボワールに見る笑いの交渉術、その起源と歴史」が開催されました。これまで四谷キャンパスのみで開催されていたアフリカweeksでしたが、「お笑い」の文化が育まれた大阪のように、「プレザントリ(冗談)」の文化が根付いているコートジボワールで、「笑い」や「冗談」が民族間の対立や紛争を乗り越えるうえでどのような役割を果たしてきたかをはじめ、コートジボワールにおける日本語教育の今や、上智大学生による現地への留学体験などを紹介する内容となりました。

冒頭、文学部フランス文学科の永井敦子教授から、本学ではアフリカ地域への研究、留学制度の充実や学生同士の交流などを通し、アフリカ地域への理解を促進していることの紹介がありました。今回テーマとしたコートジボワールと日本は経済交流の歴史も深く、内戦や日本経済の低迷によって一時停滞するも、ここ10年で再び交流が活発化しています。両国の経済面発展だけに期待を寄せるのではなく、植民地時代以前からあるアフリカの地域の伝統文化から繋がる学びを得ることができるのではないかと語りました。

サン・ペドロ大学学長(コートジボワール)のメケ・メイテ教授は、同国の歴史を交えながら「冗談」の役割や歴史を紹介しました。からかいや冗談の言い合いを双方で怒らず受け止める事で、緊張や競争関係を中和させ、安定化させる機能があることを示し、その効果は親族などの血縁関係だけではなく社会的な集団関係においても期待されていると話しました。メイテ教授の講演は永井教授により逐次通訳され、参加者からも多くの質問が挙がるなど双方向性の高い講演となりました。

アフリカの口承文学と現代

口承文学の意義を力強く語るメケ・メイテ教授(右)と逐次翻訳を行う永井敦子教授(左)

21日、コートジボワールのサン・ペドロ大学学長のメケ・メイテ教授を講師に招き、「アフリカの口承文学と現代」を開催しました。文学部フランス文学科の永井敦子教授の逐次通訳のもと約60名の参加者が、アフリカの人々の暮らしに根付いてきた口承文学(=口頭のみで後世に伝わる文学)の歴史や伝統、その存続についての講演に耳を傾けました。

メイテ教授は、口承文学には神話などのように信仰を伝えるものから、民話、諺、詩など知識や教訓を伝えるものまで、多様な表現形態が含まれていると解説しました。それらは、文字で書かれた文学とは区別され、娯楽、教育、そして社会的絆の強化という役割を担ってきたといいます。

現代の文学が進歩や発展の象徴としてみなされるのに対し、口承文学は、過去の伝統を伝えるだけの運搬具のようにみなされ、時代遅れと認識されていた時期もありました。しかし、実際には社会がうまく機能し、発展を遂げるうえで口承文学は必要不可欠であるとメイテ教授は指摘します。

「口承文学はいつの時代も対面でのコミュニケーションの術であり、知を伝承する術でもあります。そして、新たなテクノロジーが次々と生まれる現代社会においても、口承文学は常に新しい生き方や生活様式に対応し、新たに生まれた価値観や伝統を反映し続け、文化的な豊かさを伝えていくものです」

質疑応答では、「インターネットやSNSが発達した現代において、アフリカの口承文学は今後どのように発展を遂げるのか」「口頭で伝わってきたという性質上、伝承内容が途中で変わったり正確性を失うということもありえるのか」などの質問が寄せられ、メイテ教授はときおり冗談を交えつつ回答しました。学生、研究者、社会人らがアフリカ文学の専門家と意見を交換し合う貴重な機会となりました。

アフリカ・デー記念講演会

アフリカ外交団から感謝状を手渡される曄道佳明学長(左)

24日、アフリカ連合創設日(5月25日)を記念し、アフリカ・デー記念講演会が開催されました。

開会あいさつでは、大学院国際協力学専攻の植木安弘教授がアフリカの多様な文化や発展が進む経済などの魅力に触れ、「世界中の若者が互いに学び合う機会を持つことは、グローバル社会を理解するために重要。この機会を生かして理解を深めてほしい」と、参加者に呼びかけました。

基調講演では、駐日コンゴ民主共和国大使のルクムエナ氏がアフリカの歴史や地理的特徴、アフリカ連合の概要に加え、アフリカの教育に関する現状課題や目指す方向について語りました。また、アフリカが抱える諸問題や課題解決に向けた大きな変化、期待される未来についても触れました。さらに、アフリカと日本との関係の良好さに言及し、2025年のアフリカ開発会議(TICAD)にも期待を寄せました。

後半に行われた Q&Aセッションでは、短い時間ながら、TICADを通じた日本のアフリカ支援や、サヘル地域に対する他のアフリカ諸国からの支援、そして各国の服装のデザインに関する意味などについて、活発な質疑が行われました。

最後に、ファシリテーターの植木教授が「アフリカは非常に若い国です。アフリカが21世紀に向けて進んでいくことを願っています」と述べ、大盛況のうちに会が終了しました。

その後夕方から行われたアフリカデー・レセプションでは、在京アフリカ外交団(ADC)主催のもと、外務大臣政務官の高村正大氏や、横浜市長の山中竹春氏、そして各国の要人や駐日大使など、多くの関係者が参加。会場ではバンド演奏や各国の料理が盛大に振舞われ、会場はエネルギーに満ち溢れました。参加者の絶えない笑顔に、日本とアフリカの友好関係がさらに強固になることを予感させる一夜となりました。

AFRI CONVERSE 2024

日本とアフリカ地域の若者同士が意見を交換し合った

27日、独立行政法人国際協力機構(JICA)と国連開発計画(UNDP)との共催で、アフリカとの未来を考えるイベント ”AFRI CONVERSE 2024 in Sophia” を開催しました。

イベントはUNDP総裁補兼アフリカ局長アフナ・エザコンワ氏のビデオ挨拶により開会し、冒頭に近年アフリカ諸国を訪問した2名の上智大生(2024年3月にジンバブエに渡航した齊藤舞さん・2023年夏に実践型プログラムでコートジボワールに渡航した沖和樹さん)によるアフリカでの「発見・学び」の共有がありました。

それを受けて、株式会社アクセルアフリカCEOの横山裕司氏のモデレートにより、アフリカと日本をつなぐ活動を行っている休場優希さん、レイバン・キティンジ=キニュアさん、齊藤花ジェニファーイフォナイアさんの3人を交えてパネル・ディスカッション「行動への呼びかけ」が行われました。3人が活動を始めた理由、活動を通して学んだこと、今後のキャリアプランなどについて披露したのち、これからのさまざまな連携の可能性について話し合われました。

登壇者からは、日本の若者を巻き込んだ活動について、「ステレオタイプを崩すことが新しいことにつながってゆくので、アフリカについてこれから学びたい人は、先入観から離れてそのままの当事者と触れ合ってほしい」、「アフリカに興味はあるけれど、関わるための行動に踏み出せない人が周囲にいたら、まず声をかけてほしい」、などのアドバイスがありました。

閉会にあたり、JICAアフリカ部次長の上野修平氏より、8月23日に日本で初開催を予定している模擬アフリカ連合(MAU)の開催予告があり、アフリカ連合委員会局長からのメッセージを代読しつつ、アフリカ連合(AU)が掲げる長期的なアフリカ開発ビジョン「アジェンダ2063」を達成してゆくためには若者の力が重要であると述べ、イベントを締めくくりました。

変わるタンザニアビジネスとパートナーシップ

タンザニアへの投資を呼びかけるタンザニア投資センター長官のジリード・J・テリ氏(中央)

28日、東アフリカ諸国でも堅調な経済成長を続けるタンザニアのビジネスの現状や、今後の投資機会について意見交換を行うセミナー「変わるタンザニアビジネスとパートナーシップ」が開催されました。国際協力人材育成センター所長の植木安弘特任教授がモデレーターを務め、対面・オンライン含め約80人が参加しました。

基調講演では、タンザニア投資センター長官のジリード・J・テリ氏が登壇し、タンザニア国内の政治的安定性をはじめ、豊かな天然資源や地理的優位性に裏打ちされた堅調な経済的成長を紹介。さらに、投資を誘致するためのさまざまなインセンティブや、成長が見込まれる投資分野を例に挙げ「国際経済のなかでも大きな存在感のある日本と、今後も強固なパートナーシップを構築していきたい」と話しました。

続いて、国連開発計画(UNDP)タンザニア常駐代表の小松原茂樹氏が登壇。南半球に位置するアジアやアフリカ地域の新興国・途上国の総称であるグローバル・サウスの重要性を説いたほか、タンザニアをはじめとするアフリカ諸国の経済成長や投資機会について、データを示しながら解説を行いました。

最後に、植木教授は「アフリカには(前職の)国連での活動や、学術活動で何度も訪れていますが、未来へのポテンシャルで溢れている大陸であると考えています。世界経済においても、今後重要な役割を担うであろうアフリカ、そしてタンザニアに関心を持って頂き、実際に訪れることでその魅力を体感してほしいと思います」と呼び掛けました。

学生雑誌企画 With Africa

学生たちが自主的に企画・取材・制作した12ページの雑誌『With AFRICA』は、学生センター、図書館、SFDP推進室(1号館1階)で配布されています。

上智大学 Sophia University