外務省招聘事業MIRAI西バルカンとの「平和構築」プログラムに本学学生が参加しました

「持続可能な平和のための教育」に関する交流セッション

外務省の対日理解促進交流プログラム「MIRAI」の一環として、4月23日から5月14日に本学の総合人間科学部教育学科 国際教育開発学ゼミをはじめとする学生16名と西バルカンの学生11名がオンライン上で交流セッションを行いました。

西バルカン地域は、言語や宗教が異なる多様な民族が混在している地域であり、昔から多文化共生が課題となってきた場所です。「ヨーロッパの火薬庫」と形容された時代もあり、1990年代には凄惨な紛争も経験しました。過去2年間は、MIRAI参加者が上智大学四谷キャンパスを訪れて上智生と半日交流しました。今年はコロナ禍の影響で、オンラインでの交流となりました。

学生たちは7名程度のグループに分かれ、「持続可能な平和のための教育」をテーマにしたレクチャーと顔合わせを行った初回から約3週間の期間で、最終日のグループ発表に向けての準備を重ねました。西バルカン6か国(アルバニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、モンテネグロ)のメンバーも含めたグループ活動は、語学や文化の壁はもちろんのこと、時差も考慮して打ち合わせを計画する必要があり、非常に自主性が求められる取り組みとなりました。全4グループともに積極的に交流し、複数回にわたって議論した上で発表に臨みました。

発表当日は、まず上智学生によるキャンパスツアーとして動画で学内を案内した後に、ソフィア祭や浴衣Dayなど上智ならではの年間行事や実際の時間割を見せながら普段の学生生活について紹介しました。その後、各チームから、セッションのテーマに沿って、参加学生の出身国の教育課題の比較や提起、そして解決策について3週間の成果が発表されました。プログラムを担当した教育学科 小松 太郎教授からの“多文化社会において、教育はどのように公平と共感を促進することができるか”という問いに対して、教育面で少数民族が面している困難や偏見、教科書選定に関する偏った教育政策といった国ごとが抱える課題や、授業でオープンな議論がし難いことやいじめといった普遍的な課題を分析しました。
人権教育や言語への配慮、偏見を取り除く教育アプローチに加え、従来の学校教育にとらわれないノンフォーマル教育やオンラインを活用した学びと交流、少数民族の文化が代表されるイベントを通じた相互理解の促進など、各グループからユニークな解決策が提案されました。

今回のプログラムは、新型コロナウイルスの感染状況に考慮し、参加者それぞれの場所からZoomに接続しての受講となりました。約3週間のグループワークを経験した参加者からは、「オンラインセッションとは思えないほどの学びを得ることができたと感じています。日本と西バルカン地域では環境や文化など大きく背景が異なっていますが、平和教育・多文化教育という点で多くの共通点を見出すことができました。」「当初はオンラインのみでプレゼンを完成することのハードルの高さを感じていたが、実際は日程調整や役割分担を明確にし、こまめに連絡を取りあって発表をやり遂げたことに達成感を感じた。」「プログラム終了後も連絡を取り合い、近い将来に会いたい。」という声も聞かれるなど、オンラインをきっかけに次につながる有意義な学びの場となりました。

写真提供:日本国際協力センター(JICE)


参加学生の声

総合人間科学部教育学科 4年生
MIRAIプログラムを通していちばん心に残ったのは、全くバックグラウンドが異なる人と「つながる」ことの面白さだった。最初にグループのメンバーと話したときは、言語の壁もあり、コミュニケーションを取ることすらとても壁が高いもののように感じた。しかし、その後数回にわたってミーティングをするうちに、少しずつお互いの考えや人となりがわかってきて、チームとしての繋がりを深めることが出来たと感じる。発表が終わった後には、日本かボスニアで早く実際に会いたい!と思うほど、メンバーのみんなへの想いと感謝の気持ちが強くなっていた。一回だけではなく、何回も関わる機会を持つことがすごく大切だと感じた。住む場所も言語も文化も違う人とつながりを持つことの難しさと、それ以上の面白さを実感することが出来る貴重な機会だった。また、交流をしながら、私がこのMIRAIプログラムを通して感じることが出来たように、世界中の人々がバックグラウンドの異なる人と繋がって共に協力することの面白さを実感することが出来れば、世界からいつか紛争もなくなるのではないかな、などと大きな考えも膨らませた。 反省点としては、私たちのプレゼンの内容がただのバルカンと日本の比較に終わってしまっていたように感じた。せっかくバルカンの学生さんと平和と教育について話すことが出来る機会だったため、もっと深いところまで考え、もっと面白い発表が出来たら良かったな、という気持ちが残る。そのためにも、言語や文化の違いを飛び越えて、もっと積極的に関わっていくことが大切だと痛感した。


総合人間科学部教育学科 3年生
MIRAIのプログラムを通して強く感じたのは、議論することの楽しさと、一人ではなく皆で何かを作りあげることの魅力です。私は人前で話すことにかなり苦手意識があり、これまではディスカッションなどのある授業を避けていました。そんななか今回のプログラムではグループごとの活動を求められ、しかも議論は全て英語で行うという、プログラムが始まる前は正直、かなり後ろ向きな気持ちでした。しかし実際にグループの活動が始まると、メンバー皆は他の人の意見を受け入れ尊重し合い、私自身その雰囲気にとても安心したのを覚えています。そしてこのときに感じたのは、共感の大切さです。共感とは相手の立場になって考え、その思いに寄り添うことであり、これは誰かと議論する際、特に全く異なるバックグラウンドを持った方と話す際にはとても重要であると感じました。相手に共感を示した上で自分の意見を展開するからこそ、相手もそれを受け入れることができ、そして互いの思いをすり合わせることが可能になるのだと思います。私のグループでは、先輩や西バルカンの方々が中心となってそのような(無意識だったかもしれませんが)「共感」を大事にしたディスカッションを進めてくださりました。年齢も国籍も、またこれまで歩んできた道のりも全くといっていいほど違う方々と対等に意見を交わし、ときに「妥協点」を見つける難しさを感じながら、協同して一つのものを作ることができた今回の経験は私にとって本当に刺激的で、新たな世界を見せてくれたように感じます。このプログラムに参加する機会を得られたことを本当に嬉しく思います。

上智大学 Sophia University