教師の行動や思考を分析し、実践的な英語教育の確立を目指す

言語教育研究センター 
准教授 
横本 勝也

英語教育の指導法について研究する言語教育研究センターの横本勝也准教授。教師認知という研究を通して、ノンネイティブが話す英語を理解するための発音教育や、支援が必要な障がいのある英語学習者への指導法を探究しています。

私は英語教育の発音教育を専門の研究分野としています。近年は、世界英語といわれる英語を母語としないノンネイティブの人が話す英語について、世界的に関心が高まっています。私は、そんな世界英語を理解するために必要な発音教育に興味を持っています。

世界の共通語として英語が使われていますが、実際に英語でコミュニケーションする相手はネイティブではないケースが多いものです。日本人の場合は近隣国の韓国や中国の人と話す機会も多いですし、IT業界などで働く方にはインド系の人が多い傾向があります。

グローバル化が進むにつれ、さまざまな国や地域の人と意思疎通するニーズが高まっていますが、ノンネイティブ同士のコミュニケーションは、発音が原因で相手の話している内容を理解しにくいこともあります。この点を踏まえ、私はノンネイティブが話す英語の特徴の気づきの効果について研究しました。その結果、さまざまな国の人が話す英語の特徴を学ぶことで、英語の聞き取り能力が向上することがわかりました。

世界英語指導も要支援の学習者指導も教師教育次第

私は英語学習者に世界英語を学ぶ機会を与えたいと考えています。しかし、ネイティブの英語を学習すれば十分だと考える英語教師が多いのが現実です。例えば、教師自身が英語を習得する過程で日本人同士やネイティブとしかコミュニケーションをとっておらず、ノンネイティブとの会話で苦労した経験がないと、世界英語を教える必要性やメリットは感じにくいものです。

これまでの教師認知の研究で、発音教育に関しては、英語教師が何を指導し、どう指導するのかは、それぞれの教師の学習者としての経験が影響することが分かりました。これが世界英語についても、同様のことがいえるかどうか大変興味があります。学習者としての経験がなくても、積極的にかつ効果的に世界英語の指導を行なえる教師を育成するためにも、この研究を続けていきたいと思います。

最近は、支援が必要な障がいのある学生や児童を対象とした英語教育に必要な配慮や課題を、教師認知の側面から考えたいと思っています。成功例も失敗例も含めてさまざまなケースから教師の行動を観察し、指導のコツを見出したいのです。支援が必要な学生や児童の指導は難しいと感じる教師もいますが、「こんな工夫をすればクラスが成り立つ」ということを伝え、不安を解消するのが目標です。

英語が苦手だったからこそ、日本の英語教育を変えたい

教師認知の研究に興味を持ったのは、教師を育てたいと思っているからです。実は、私はもともと英語が大の苦手でした。大学2年生で英語教師を目指して一念発起し、努力を重ねて英語を習得後、アメリカに大学院留学しました。現地でティーチング・アシスタントとしてノンネイティブの学生を指導した経験から、発音と世界英語の重要性を実感するとともに、研究者を志すようになりました。

教師は直接の教え子にしか影響を与えられませんが、研究者として成果を上げれば教師に影響を与え、その教え子にも影響を与えることができる。中学、高校の時に苦労した経験があるからこそ、日本の英語教育を変えたい。研究者として実践的な教育法を開拓していきたいと考えています。

この一冊

『TEACING PRONUNCIATION』
(Marianne Celce-Murcia, Donna M. Brinton, Janet M. Goodwin, Barry Griner/著 Cambridge University Press)

英語の発音教育に関する決定版といえる本。発音の説明が秀逸で学習者の参考になるうえ、「このように教えると発音がよくなる」というサンプル例も豊富なので、英語教師を目指す人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。

横本 勝也

  • 言語教育研究センター 
    准教授

愛知大学経済学部卒、カリフォルニア州立大学サクラメント校TESOL修士課程修了、ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了。教育学博士。立教大学ランゲージセンター(現外国語教育研究センター)講師、上智大学言語教育研究センター講師、特任准教授などを経て、2024年より現職。

言語教育研究センター

※この記事の内容は、2024年5月時点のものです

上智大学 Sophia University