マーケティングとは人に行動の変容を促すこと。応用範囲は無限にある

国際教養学部国際教養学科
准教授
ピーター・デ・メイヤー

データを集め、さまざまな手法で分析し、世の中の課題解決につなげるためのマーケティング研究に取り組む国際教養学部のデ・メイヤー准教授。ビジネス最前線で培った経験を活かしつつ、研究者として自身に課している役割とは?

私の専門分野であるマーケティングは、人類学、心理学、社会学、統計学、計量経済分析、情報テクノロジーなど、あらゆる領域に関連し、応用範囲も非常に幅広いのが魅力です。誤解している方もいますが、マーケティングの本質は、何かを売ることではなく、相手を説得し、行動を変えることなのです。最近では、気候変動など地球規模の課題解決にマーケティングの手法を取り入れることをテーマにした学術誌も登場しているほどです。

研究を始めた当初は、数理モデルや定量データを用いて、マーケティングについて解き明かすことに関心がありましたが、やがて経済学的な視点や、消費者行動を解き明かす心理学的な要素にも関心が拡がっていきました。コンサルティング会社に勤務していた時には、コカ・コーラをはじめとする多くのクライアントのために、統計モデルや定量データを用いたマーケティング戦略の立案を担当しました。

ビジネス界の活気、アカデミアの自由

マーケティング分野において、最先端の取り組みは、まず業界トップのグローバル企業やシリコンバレーのテック企業で始まります。アカデミックな研究や理論よりも、これらの企業のほうが5年ぐらい先を進んでいる印象です。新しいテクノロジーもどんどん投入されますし、活用できる最新データ群も豊富です。

ただし、企業では次々に新しい課題に追われるので、自分が納得するまで徹底的に分析する余裕はまったくありませんでした。その点、大学での研究では、自分が本当に追及したいテーマをより深く、時間をかけて掘り下げることができます。

各業界には、そのビジネスに長く携わってきた専門家もいます。とはいえ、心理学など学術分野の最新の知見や、さまざまな業界のトレンドまで、マーケットに関するすべては把握しきれません。私は研究者として、色々な領域を往来しながら、全体を俯瞰して考えることが自分の役割だと考えています。マーケティング研究を通じて、常に新しい学びや人との出会いがあることが、私にとって研究意欲の刺激にもなっています。

メタバースにBOPマーケティング、研究テーマは尽きない

ここ3年ほどは、金融オンライン・マーケティングについての調査研究に取り組んでいます。米国の消費者を対象に、情報セキュリティ対策に関する調査を行い、ようやく充分なデータが揃ったところです。これからさまざまな分析を行い、例えば、消費者が銀行口座にログインするときに注意するべきこと、セキュリティに関する知識レベル、利用者セグメント別のウイルス対策に関する認知度などを考察します。

今後も、新しいフィールドに挑戦し続けたいと考えています。とくに、メタバース空間におけるデジタル・マーケティングは課題が山積みなので、リサーチすべきトピックスも豊富です。

BOP(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)と呼ばれる、世界人口の過半数を占める低所得者層に焦点を当てたマーケティング研究にも関心があります。BOPは企業が利益の一部を使って援助する対象ではなく、未来のマーケットだと捉え、双方にとってのベストプラクティスを目指す考え方です。こうした分野でもマーケティング研究が貢献できることは無限にあります。新しいテーマが尽きることはありません。

この一冊

『Inside The Box Why the best business innovations are right in front of you(インサイドボックス 究極の創造的思考法)』
(ドリュー・ボイド、ジェイコブ・ゴールデンバーグ/共著 Profile Books)

新商品やイノベーションを生む手法を「引き算型」「タスク統合型」など5つに分類して論じた本。人間の脳は、完全な自由より、むしろ制約下でこそ創造性を発揮するとの説に納得しました。アイディアをあれこれ練りたい時にも参考になります。

ピーター・デ・メイヤー

  • 国際教養学部国際教養学科
    准教授

専門的な実務経験を積み博士号を取得。ジョージタウン大学、シンガポール経営大学、マヒドン大学経営大学院で教職を務め、マーケティング概論、マーケティングリサーチ、新製品開発、消費者行動などを指導。広告、新製品、マーケティングリサーチの分野でエグゼクティブ向けのトレーニングセミナーやワークショップを実施している。2018年より現職。

国際教養学科

※この記事の内容は、2022年11月時点のものです

上智大学 Sophia University