JICAから研究者の道へ よりよい社会を実現するための国際教育を探る

SDGsの一つ、「質の高い教育をすべての人々に」の重要性が広く認識されるなかで、国際的な教育協力や、高等教育機関の国際的な連携が注目されています。この分野を専門とするグローバル教育センターの梅宮直樹教授に協力の意義や自身の研究などについて聞きました。

私の専門は比較国際教育学です。異なる国々における教育を歴史的、現代的な視点から比較し、教育の本質的なあり方や、国境を越えて国や人々がよりよい関係を築くための能力や資質、平和の精神を育む教育のあり方を研究しています。研究者になるきっかけは、25年間勤務したJICAでの経験です。東南アジア諸国の教育分野での協力に関わるなかで、協力の効果や課題を学術的に検証したいと考えるようになりました。

特に力を入れている研究は、低中所得国における国際教育開発・協力の分野の研究です。一例として東南アジア諸国の大学を対象に、教員の海外留学の経験が自大学の発展にどのようなインパクトをもたらしてきたかを検証する国際共同研究プロジェクトに参加しています。

海外留学で学位を取得した教員のグループと、国内大学で学位を取得した教員のグループを比較し検証した結果、前者は海外の教育法を取り入れた指導をしたり、海外大学と共同研究を行うなど、国際的な取り組みをより積極的に行い、自大学の発展に貢献していることなどが分かりました。

研究から浮かび上がってくる、対話を重ねることの大切さ

もう一つ力を入れているのが国際高等教育に関する研究です。気候変動や感染症などグローバルな課題には、国境を越えた大学間の協力が必要であるため、国際的な学術協力を推進する要因などについての研究を行っています。

日本とインドネシアの間の学術協力を対象にした研究では、両国の研究者50名へインタビューを行いました。結果、協力の推進要因として、日本の大学の置かれた状況や、研究と教育の観点からのモチベーション、外部資金の存在などがあることが分かりました。また、インドネシア人教員の本邦留学を通じて醸成された、信頼関係を核とした人的ネットワークが重要な役割を果たしています。

欧州では1980年代から地域内の大学間連携を促進する枠組みの構築が積極的に進められてきていますが、近年、東南アジア地域でも「高等教育のリージョナル化」が進んでいます。しかし、東南アジアの場合、経済力や文化も異なる多様な国々で構成されているため、EUと同じやり方ではうまくいきません。1つの枠組みに収斂させるのではなく、多様性を前提に多層的な枠組みの存在を許容しながら、各国・大学が役割分担し、強みを持ち寄ることで協力活動が前進しているケースが多く見られます。さらに探っていくと、そこには対話を重ねることの大切さも浮かび上がってきます。

国際協力を志す学生の指導に尽力したい

国際教育協力の分野で活躍する、次世代の研究者や実務者の育成も重要と考えています。現在、研究室には、カンボジアの学校外教育の課題や、日本における外国にルーツを持つ子どもの教育課題を研究する日本人学生、自国の平和教育や高等教育におけるジェンダー格差といった、国際教育開発・協力に関わる多様な研究テーマに取り組んでいるコロンビアやイランからの留学生もいます。

異なるバックグランドを持つ学生たちがその経験や視点を分かち合い切磋琢磨しながら研究活動を進めており、学生の研究が実を結ぶよう教員としてサポートしていきたいと思っています。

この一冊

『大学の誕生』
(天野 郁夫/著 中公新書)

明治維新後、近代化に必要な人材を養成するために官立・私立の大学が急ピッチでつくられました。そのダイナミックな動きを社会構造と関連づけながら歴史社会学的な観点から描いています。昔と今が密接につながっていることも分かり、何度も読み返しています。

梅宮 直樹

  • グローバル教育センター
    教授

一橋大学社会学部卒、ハーバード教育大学院修士課程、東京工業大学(現・東京科学大学)大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。独立行政法人国際協力機構(JICA)人間開発部高等・技術教育チーム課長、人間開発部次長などを経て、2022年より現職。

グローバル教育センター

※この記事の内容は、2025年6月時点のものです

上智大学 Sophia University