
グローバル化の推進に関して、すでに国内外で高い評価を受けている上智大学。2025年度よりグローバル化推進担当副学長に就任した飯島真里子教授が、今後の本学のグローバル化に対する思いを語ります。
留学中のサポート体制をさらに強化し、学生の挑戦を後押し
グローバル化推進担当副学長として、これから力を入れていきたい取り組みの1つは留学支援体制の強化です。現在、上智大学は64か国346大学(2025年5月1日現在)と交換留学の協定を結んでいますが、協定校から受け入れる留学生が年間約700人であるのに対して、海外へ送り出す本学学生数は年間400人ほどです。目まぐるしく変わる世界情勢において、本学の学生が、海外で安心して学べるサポート体制をさらに強めたいと考えています。
これまでも本学はグローバル教育センターによる学生一人ひとりに寄り添ったサポートに加え、24時間対応の危機管理サービスを設け、学生が危機に直面した際や困難な状況に陥った際も相談できる体制を整えてきました。しかし、大学として「学生が海外でどのような生活を送っているか」を十分に把握する機会が少なかったと感じています。
そこで、留学中の学生に現地での体験を聞き、学内の教職員や学生と共有できる仕組みを設けたいと考えています。学生が抱える悩みだけでなく、海外で学ぶことの楽しさを伝えてもらったり、SNSを活用して日常生活の写真・映像を共有してもらったりして、日々の勉学・生活を通じて留学生を見守っていきたいと思います。さらに、こうした留学中の経験の「見える化」を通して、「自分も海外で学んでみたい」と思う学生を増やしていきたいです。
クラスルームからのグローバル化、大学院教育・研究の国際化を加速
近年は、円安の影響による留学費用の増加や不安定な世界情勢によって、留学を断念せざるを得ない状況が目立ってきています。そうした状況を踏まえ、キャンパス内で本学学生が海外からの留学生と共に学ぶ機会を増やせればと思っています。
上智大学には、すべての授業を英語で行う国際教養学部があり、すでに、海外留学生と本学学生が共に学んでいます。加えて、理工学部には、英語で学べるプログラムが用意されていますし、2022年からはSPSF(Sophia Program for Sustainable Futures)という学位プログラムを設けました。SPSFは新聞、教育、社会、経済、経営、総合グローバルの6学科が連携し、領域横断的に持続可能な未来について、英語で学ぶことができるプログラムです。これらのプログラムだけではなく、他の学部学科においても、海外留学生と本学学生が英語や他の言語を駆使して、一緒に議論するような機会をさらにつくっていきたいと思っています。
また、大学院の国際化も重要です。大学院は学部に比べて、留学する学生はあまり多くありません。修士課程は2年間と短いので、留学が難しいという事情もあるでしょう。しかし、国際共同研究は大学の研究力向上に欠かせません。大学院レベルの交換留学の促進と、若手研究者のための国際的な研究プラットフォームの構築にも積極的に取り組んでいきます。
今年度から学長と5人の副学長の顔ぶれが一新しました。私たちはさまざまな課題に対して話し合いを重ね、多角的な視点から包括的な解決策を検討しています。国際研究プラットフォームに関しては学術研究担当の赤堀副学長と、海外に送り出した本学学生や本学への留学生に対するメンタルヘルスの問題は学生総務担当の横山副学長と協力して取り組んでいければと考えています。
語学力向上だけが目的ではなく、人生の糧となる経験を
私は本学の外国語学部英語学科を卒業しましたが、在学中は留学せず、卒業後に英国の大学院に進学しました。その理由の1つは、当時は1年間の留学が主流で、長期間の海外滞在が大きなハードルだったからです。しかし、現在は半年(1学期)の留学や長期休暇中の海外短期語学講座、海外短期研修、実践型プログラムやインターンシップなど多彩なプログラムが用意されています。例えば、長期留学を決断する前に短期語学留学を試してみたり、大学での学びを実践するために国際インターンシップに参加したりすることも可能です。このように多様で充実した留学プログラムは、まさに上智大学らしさであり、魅力だと言えるでしょう。
留学というと、語学力向上が主な目的に見られがちですが、それ以上に多くの学びと発見があります。日本とは異なる環境に身を置き、様々な文化的背景や価値観を持つ人びとと出会い、自分の力で課題に挑戦する日々の経験すべてが、その後の人生の糧になります。私自身、留学を通じて得た学びや経験は今の仕事や研究に深く影響を与えていますし、また、当時出会った世界各地に住む友人たちは、今でも変わらず大切な存在として、私を支えてくれています。
一方で、留学に対して不安を感じたり、魅力を感じなかったりする学生もいるでしょう。上智大学の四谷キャンパスは留学生が多く、休み時間になると多言語での会話が行き交い、国際色豊かな雰囲気にあふれています。留学を躊躇している学生にも、ぜひ、そうした空気を感じ、少しでも留学に興味を持ってもらえるようなキャンパスづくりを目指していきたいと思っています。
