ノン!と言える自分に。フランスに飛び込んだ先で見えた世界

■名前:山﨑ランサム 美登里アンジェラ
■学部学科・学年(留学当時):外国語学部フランス語学科3年
■留学時期:2023年9月〜2024年6月
■留学先(国・大学):フランス共和国/フランス国立東洋言語文化学院
■留学形態:交換留学

上智大学では毎年多くの学生が日本を飛び出して世界各国に留学しています。言語、文化、生活習慣の違いを乗り越えた先に見えたものとは。留学した学生たちの声を集めました。

留学に行こうと考えたきっかけは何ですか。

留学の動機は主に3つあります。高校のときから学んでいたフランス語を現地で使って、リアルなフランス語に触れること。外国で暮らすことで視野を広げ、新たな学びを得ること。そして、言語学を学んでいるため、フランス語話者の視点から日本語がどのように捉えられているかを知りたかったからです。

留学先(国・大学)はどのように選びましたか。

標準的なフランス語を学びたかったのでフランス語圏の他の国よりはフランス本国、さらにフランスの中だとパリが良いという考えは漠然とありました。ですが、一番の決め手は気候。暑さが苦手なのでフランス本土の中でも比較的北側のパリを選び、パリにある提携校の中から自分の学びたい学問が学べる大学を探しました。結果的に、言語教育に特化していて、言語学が学べるフランス国立東洋言語文化学院(INALCO)を選びました。

留学前に不安に感じていたことはありますか。

一人暮らしです。日本でさえ実家を出たことがなかったので、住んだことがないどころか旅行ですら一度も行ったことのないフランスで、一人で暮らしていけるかが不安でした。

留学のために準備したこと、また、しておけばよかったと思うことはありますか。

事前準備では、今まで通りのフランス語学習をコツコツ続けました。留学が決まったからといって、特別に何か学習方法を変えたということはありません。

準備しておけばよかったことは、日本の歴史・政治・経済・文化についての学習です。「日本人として日本で生活していれば当たり前に知っていること」とは別で、教養がないと答えられないような日本に関する鋭い質問を投げかけてくるフランス人が多く、答えられないこともありました。

大学や学生の雰囲気はどのようなものでしたか。

帰国日当日。留学中の改装時に新しくできたINALCOの壁の前で記念撮影。INALCOで学べるすべての言語が表示されています。Japonaisを探せ!

他者や他国の文化に興味津々で、授業に積極的、授業外でもフレンドリーで人見知りしない人が多い印象です。大学の特徴なのか、パリの特徴なのかわかりませんが、人種も国籍もとにかく多種多様な学生がいて、互いに様々な国の言語や文化に関心があり、オープンマインドでリベラルな学生が多かったです。

どのように交友関係を広げていきましたか。

到着後すぐの頃、パリのシンボル・エッフェル塔の前での一枚。留学が終わる頃には見飽きるほど行きましたが、このときは初めてなのでまだわくわくしています。

日本学部で日本語を学習中のフランス人、同じサークルの様々な学部学年のフランス人、外国語母語話者向けのフランス語クラスの世界各国から来た留学生、同じ寮に住んでいた日本人…など。出会った場や相手の国籍は様々です。その人たちと共有できる時間はたったの数ヶ月なので、意図的に一人ひとりと関わり続け、話し続け、連絡を取り続けることを意識していました。

授業の様子、学習内容、試験などは日本と比較して違いがありましたか。

意欲のある学生や、授業中にわからないところを素直に質問できる学生が多かったです。教室内における「恥ずかしい」という意識が、ゼロではありませんが、日本に比べたら圧倒的に少ないです。

日本学部3年生の翻訳の授業では、日本人でも見たことがないような漢字の入った文章をフランス語に訳すなどをしていて、難易度がかなり高く感じました。3年間での卒業を前提としたカリキュラムだったので、授業の進度も早かったです。

日本では真面目に頑張れば必ずしも良い成績でなくとも単位は取得できる印象ですが、フランスではテストの点が悪かったら容赦なく単位を落とされることもあります。

学業以外でもっとも力を入れたことは何ですか。

サークル活動です。K-popダンスサークルを2つ掛け持ちし、片方ではサークル内のグループリーダーをやっていました。好きなダンスを楽しみつつ、日常的でカジュアルなフランス語をたくさん聞き、たくさん話し、交友関係も広げられたのでとても良い経験でしたし、大切な思い出です。また、フランス人に対して、物怖じせずに自分の意見をフランス語でしっかり伝える度胸もついたと思います。

留学先ならではの魅力や、新たに気づいた点は何ですか。

ベルサイユ宮殿の鏡の間にて。到着後すぐの頃に観光に行きました。外観も内装もすべてが細部までこだわって作られていてとても綺麗で感動しました。

「パリの人は意地悪だ」というステレオタイプを持つ人もいますが、実際はそんなことありません。フランス語が完璧でなくても話そうとする姿勢を見て喜んでくれますし、困っていたら助けてくれる友人もたくさんいました。

また、首都なのもあってか想像以上に移民や外国人が多く、アジア人差別もあまり受けなかったように思います。

最も印象に残っている出来事や、衝撃を受けたことは何ですか。

野外でサークルの練習をしていたとき、別のグループが後から強引に割り込んできて私たちのいた場所を使おうとしてきたことがありました。フランス人の友人たちが相手のグループの人たちと激しい口論を始めたときには、日本では見ない光景だと思いました。これが日本だったら「なんか変な人たちが来た。先にいた私たちが場所を譲るのは少し癪に触るけど、関わりたくないから別のところに行こう」となるだろうなと想像しながら、理不尽なことには正々堂々と「Non!」と言い、納得のいくまで議論するフランス人の芯の強さがかっこいいと思いました。

留学中のトラブル、大変だったことは何ですか?また、どのように乗り越えましたか。

インフルエンザで40度以上の発熱を経験したとき、一人で1時間ほどかけてパリ郊外の日本人医師のいる病院に行ったことです。大学で契約した保険会社に問い合わせたことでスムーズに予約を取ることができ、薬も処方してもらえて無事に治すことができました。同じ寮の友人たちにもたくさん助けてもらい、とても感謝しています。

留学の前後で比較して、成長できたと実感する点や意識が変わった点はありますか。

オペラ・ガルニエでの一枚。このときは内部見学のみで予約しましたが、別日に大好きなバレエも一度観に行き、本場の芸術に感動しました。

理不尽なことに対して以前は「怖いから、面倒くさいから」と引き下がってしまうことが多かったですが、今ではしっかりと自分の意見を伝え、違うものは違うと言えるようになりました。自信と度胸、そして粘り強さに磨きがかかりました。

留学経験は今後の人生にどう影響しそうですか。

ルーブル美術館のピラミッド前での一枚。美術館は長期滞在ビザがあれば25歳以下は無料なので、ルーブルは5回ほど訪れました。

「世界は広く、色々な人がいて、様々なものの見方がある」。その視点において、本の中や画面の中で見て、頭でわかっていることと、実際にその広い世界に出ていき、色々な人と関わり、様々な意見に触れることは、まったく別なのだと実感しました。それによって考え方や感じ方、物事に対する姿勢など自分の中での幅が広がったように感じます。この留学によってもたらされた自分の内の変化の一つひとつは小さなものかもしれませんが、これからの私の長い人生に大きな影響を与えていくものになると確信しています。

留学に行こうか迷っている人に一言

留学に行く前は未知の世界なので、不安もたくさんあって挑戦するのが怖いと思うかもしれません。でも未知の世界だということはその分、皆さんが今まで見たことも想像したこともない素敵な体験と出会いが待っているということです。わくわくしませんか。

上智大学 Sophia University