想い出の新入生歓迎行事「オリエンテーション・キャンプ」

新年度がスタートして1か月…、キャンパスには学生たちの声が響きます。新たな“ソフィアン”たちは、どのようにキャンパスライフをスタートさせ、日々を過ごしてゆくのでしょうか?今回は、かつて学部新入生を対象に行われていた宿泊形式の「オリエンテーション・キャンプ」(通称:オリキャン)に注目し、上智大学の新年度の歴史に迫ってみたいと思います。

オリエンテーション・キャンプとは?

上智大学では入学式後の1週間、バラエティに富んだ新入生歓迎行事が行われます。その一環にあたる、新入生・在学生・教員を交えた1泊2日のオリエンテーション・キャンプは、新入生が学生生活に慣れ親しむことができるようにと、1966年から2019年まで50年以上にわたって開催され、教育理念の継承と新入生支援の要に位置づけられてきました。

 当日は、新入生と教員に加えて所属学科の上級生「ヘルパー」も参加。教育理念、学科や授業、履修登録や課外活動などの説明から、新入生は大学生活への理解のきっかけを得つつ、自己紹介、ヘルパーや教員との懇談、ゲームなどを通じて親睦を深めました。 オリエンテーション・キャンプは、新入生が同級生や上級生、教職員との関係を築き、上級生は自分が学んできたことを新入生のために役立たせるという点で、上智大学の教育精神「For Others, With Others」を体現していたといえるでしょう。

第1回オリエンテーション・キャンプ開催!

1966年4月、教職員・在学生による入念な事前準備を経て、学生部学生生活課とフレッシュマン・ウィーク実行委員会の運営で、1713人の新入生を対象とした第1回オリエンテーション・キャンプが箱根で実施されました(※1)。当時の報告書によれば、同5日から8日にかけて、学科ごとに日程をずらし、バス移動中の自己紹介や、宿泊先到着後のレクリエーション、学長や各学部長・学科長の講話、映画『上智大学50年』の鑑賞、クラス別ミーティングなどが行われたようです(※2)。

当時の写真からは、学生と教員の距離の近さがうかがえます。フレッシュマン・ウィーク実行委員会による新入生対象のアンケートでは、「来年も続けるべき」という高い評価の意見が目立つなど(※3)、企画は成功をおさめました。

また、第1回の模様は読売新聞社に取材され、日本の大学の「マンモス化」がもたらす学生・学校間の相互不信の傾向に対し、「家族的結びつきをねらう上智大の試みは、評価されていい」と紹介されています(※4)。学生数の増加や、学生運動の動向が高まりをみせる1960年代後半にあって、オリエンテーション・キャンプは学内外を問わず注目されていました。

箱根芦ノ湖畔に向かう新入生たち(1966年4月、第1回オリエンテーション・キャンプ)*
ウィリアム・エヴァレット教授と懇談する新入生たち(1966年4月、第1回オリエンテーション・キャンプ、外国語学部英語学科)*
フレッシュマン・ウィーク実行委員の在学生が新入生の前でパフォーマンス(1966年4月、第1回オリエンテーション・キャンプ)*

オリエンテーションの“これから”

第1回以来、時代や個人によってさまざまな意見がありつつも、学科や学生数の増加も相まって例年盛り上がりをみせたオリエンテーション・キャンプですが、2020年は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大のため開催できず、代替プログラムとして各学科がインターネット上で新入生に役立つ情報を発信したり、ZOOMで学科集会を開催したりする行事となりました。その後、学内では各種イベントの見直しが進み、2023年からはオリエンテーション・キャンプが廃止され、オリエンテーション・デイ(※5)が開催されるようになりました。

オリエンテーション・デイでは、教員と在学生ヘルパーのもと、学科ごとに多彩な企画が盛り込まれ、新入生からは「新しい友達ができた」、「勉強へのモチベーションが上がった」、「学びを得られた」、「高校では体験できなかったことが体験できた」といった感想が寄せられました。オリエンテーション・キャンプ以来の上智大学の新入生歓迎の伝統は、今なお健在です。

 新入生の大学生活への橋渡し役は、オリエンテーション・キャンプに引き続きヘルパーが担当。企画・運営から当日の進行まで携わり、新入生と大学・学科との距離感をグッと縮めます(当日の様子など、詳細は各学科のサイトをご覧ください)。

社会情勢や学生の気質が変容するなかで、オリエンテーション風景はどのように移り変わってゆくのか…。この記事をご覧いただいている皆様に、ぜひとも見守っていただきたいと思います。

教員の説明に聞き入る新入生(2023年4月3日、オリエンテーション・デイ 2023、文学部史学科)撮影:KEIGADO
10号館講堂ではクイズ形式の催しも!スクリーンに映るのは、定番人気のソフィアジャージ、通称“ソジャー”(2023年4月3日、オリエンテーション・デイ 2023)撮影:KEIGADO
在学生によるキャンパス案内(2023年4月3日、オリエンテーション・デイ 2023)撮影:KEIGADO

(※1)『昭和41年度新入生オリエンテーション・キャンプ報告書』1966年、P.2。同報告書におさめられた新井恒雄(当時の学生生活課長)「新入生オリエンテーション・キャンプの実施にあたって」(P.1)には、戦前の上智大学では新入生・在学生・教職員を交えた合宿が独特な雰囲気を創り出しており、オリエンテーション・キャンプはそうした様子を復活させようと企画された、という旨の記述があります。
(※2)『昭和41年度新入生オリエンテーション・キャンプ報告書』P.14, 16。
(※3)「合宿レポート」(『上智大学新聞』1966年4月15日付、第180号、第2面)。一方、同面掲載の「研修合宿 新入生には好評の声 運営面に学生の要望を」や「フレッシュマンウィーク 幕閉じる 例年になく淋しいキャンパス」によれば、フレッシュマン・ウィークの最中、キャンパス内にいる新入生が少ない状況に戸惑う声もあったようです。
(※4)「お笑いで結ぶ教授と新入生」(『読売新聞』夕刊、1966年4月9日付、第3面、ヨミダス歴史館、2023年4月19日閲覧)。
(※5)2023年現在、一部の学科を除いて日帰り形式で1日もしくは2日間開催。

*印の写真はソフィア・アーカイブズ所蔵

上智大学 Sophia University