上南戦は文武両道の歴史なのか?

上智にも大学対抗のスポーツ大会があるのをご存じですか?カトリシズム(注1)に立脚した建学の精神を同じくする南山大学と、スポーツばかりでなく文化を通じた交流を行っています。

上智大学と南山大学―カトリックという精神的なつながり―

上智大学と南山大学(愛知県名古屋市)との間で、毎年行われている「上智大学南山大学総合対抗運動競技大会」(以下「上南戦」)が2022年で63回目を迎えました。新型コロナウィルスの影響で3年ぶりの開催となった宿命の対決は、17勝15敗で上智大学の総合優勝で幕を閉じています。

女子ラクロス(2022年7月)*

南山大学との対抗試合が始まったのはいつか?なぜ南山大学なのか?歴史を振り返ってみましょう。

上智大学と南山大学の交流は、南山大学が創立された1949年から始まっています。南山大学は、カトリック修道会の神言会(しんげんかい)が設立母体であり、「キリスト教世界観に基づく学校教育を行い、人間の尊厳を尊重かつ推進する人材の育成」を建学の理念に掲げている大学です。カトリックという精神的な親和性が、上智大学と南山大学の交流を密にしている理由の一つです。当時の『上智大学新聞』(1949年12月15日付、第32号)には、「南山との連携緊密化」という見出しで「大学祭を契機に南山大学と上智大学との文化、学術上の交歓が具体化し、大学祭には南山大学から運動部の来校があったが、日本の男子カトリック大学として両校の交歓は、今後年中行事として継続され、来年5月の南山大学記念祭には演劇、運動、新聞など本学課外活動を始め各種運動団体の訪問が予定されている」と記されています。

「上南戦」Start!

その後、各種スポーツ団体の対抗試合や文化団体の交流が活発となり、宿命の対決「上南戦」が生まれました。第1回は1960年6月25日・26日の2日にかけて、南山大学で行われました。それまでラグビー部など一部の体育会団体が行っていた交歓試合を、上智大学の第5代大泉孝学長(注2)の発意により、両大学の学生団体同士の交流および対抗試合として企画したのが発端です。目的は「上智大学も南山大学もカトリックの大学であり、カトリシズムに立脚した建学の精神を、スポーツまたは文化サークル活動を通してお互いに完成させ、未来に社会人としての人格を築く礎にまで高める」ことでした。野球、サッカー、卓球、柔道、バスケット、テニス、バレー、アイスホッケーの8競技が行われるとともに、文化団体の交流も行われました。対抗競技は5対3で南山大学が勝利しています。

翌年1961年4月に南山大学運動部と上智大学体育会との間で正式な締結書が取り交わされ、総合対抗競技を定期的に行い、その名称を「上智大学南山大学総合対校(抗)運動競技大会」とすることが決定されました。その2か月後の第2回大会は、上智大学を会場校として開催され、競技種目も11種目に増え、文化系団体の交流も行われました。しかし、上智大学が7対3で勝利した第3回大会では、文化団体の交流は個別に行われ、上智大学文化団体連合会としての参加 はありませんでした。「南山大学が非常に残念がった」と『上智大学新聞』(1962年7月1日付、第141号)には記されています。

第4回上南戦開会式 眞田濠グラウンド(1963年6月)*

大学行事へ

「上南戦」は、体育団体連合会のスポーツだけの交流試合のように見られますが、吹奏楽研究会、落語研究会、放送研究会、E.S.S.など盛んな交流を行ってきた文化系団体があったことも事実です。しかし、体育団体連合会と文化団体連合会が別々の行動をとるなど、なかなか交流が促進されませんでした。そこで文武両道の交流を盛んにするために、1973年の第14回大会からは、学生の経済的負担も考慮し、上南戦を大学行事としました。

そうした一方で、文化系団体の交流が一部の団体に限られている状況は変わらず、はたして上南戦は全学行事なのか、上南戦の在り方を見直さなければならない時期に来ているといった意見も聞かれるようになりました。しかし、大会Tシャツの作成、Web掲示板の立ち上げなどスポーツ以外の新しい取り組みや、上智・南山の実行委員長の対談、上南戦検討会議等、大会継続の努力を重ね、2009年に上南戦は記念すべき第50回大会の開催に至りました。文化系団体では、写真部、フォークソング愛好会、法律サークル「青法会」など新たな団体の交流も行われました。その後も、公式マスコットの登場、学生・教職員が上南戦Tシャツを着て大会を盛り上げるTシャツ・デー、フォトコンテストなど毎年運営に工夫が凝らされるようになりました。

そして2018年12月、第60回大会を前に上智大学と南山大学は、伝統ある「上南戦」等の継続実施とさらなる学生交流、文科系クラブの交流の拡大や学生が企画するイベントの相互実施など、学生同士の新たな交流の促進を行うとして連携および協力に関する包括協定を締結しました。しかしその直後に新型コロナウィルスの感染が拡大し、第61回大会(2020年)第62回大会(2021年)は中止。上南戦は新たな対応を迫られています。 これからは、対面だけではない新しい形の上南戦が育っていくかもしれません。

開会式選手宣誓(2009年6月、代々木第二体育館)*
文科系団体ライブ(2009年6月)*
チア応援の写真(2010年6月、南山大学体育館)*

(注1)キリスト教における普遍的・一般的な理念・信仰・礼拝・実践であるカトリックを奉じる主義・思想のこと
(注2)在位:1953-1968年(1902-1978)
*印の写真はソフィア・アーカイブズ所蔵

上智大学 Sophia University