各学部等がそれぞれ行っていた大学授業アンケートが、2022年度から全学共通化されました。設問を統一したねらい、結果から見えてきた上智生の姿を、アンケート改革の先頭に立って議論をリードした、学務担当副学長が語ります。
授業の質を決めるのは、学修者であるべき
2022年度から実施している新たな大学授業アンケートは、教員の教え方や学生の学び方を、全学を通じて同じ基準で把握することが目的です。開講する全科目を対象に、共通の設問項目を用いて、学生に評価を問うています。
それまでも、学部ごとのアンケート、全学共通科目のアンケートは実施していました。ただ、主な内容は「教員の声の聞こえ具合」「板書の読みやすさ」など、授業の中身や効果とは焦点が異なるもの。大学教育の目的は学生の成長であると考えたときに、成長の源泉である授業の質を、もっと厳しく追究すべきではないか。そして、授業の質を決めるのは、提供者側である教職員ではなく、成長の主体である学生であるべきではないか。そんな考えをもとに、「いい授業」の要件を学生に問い、その声を改善に生かすことにしました。
とはいえ上智は総合大学であり、学問分野ごとに、教員ごとに、教える内容も教え方も異なります。全学、同じ尺度で教育の質を問う設問の策定は、簡単ではありませんでした。各学部の過去の設問、他大学の設問、社会や企業が評価する資質・能力など、様々な教育の見方を参考に何か月もかけて検討。疑問を呈する教員を個別に訪問するなどして、学内の理解を得ていきました。議論百出の検討過程は、授業の質とは何なのか、授業を通じて学生にどんな変容をもたらしたいと思っているのか、全学の目線が揃っていく過程でもあったと思います。
見えていなかった学生の姿が明らかに
完成したのは、教員の説明のわかりやすさ、多様なものの見方や考え方の習得度、その授業の満足度(2022年度までは推奨度)と理由などを尋ねる、14の共通設問です。結果を分析すると、学生の様々な側面が浮かび上がってきました(https://www.fd-sophia.jp/activity/survey/report.html)。
例えば、学生の授業推奨度に強く影響するのは、「説明のわかりやすさ」に加え、「知的に刺激され、深く勉強したくなる」授業であるという事実。楽な授業が評価されるだろうとの教職員側の予想はいい意味で裏切られ、上智生は歯ごたえのある授業を求めています。また、科目ごとに設定された「到達目標」の習得度は、その科目に主体的に取り組んだ人ほど高いことがわかりました。「自分から動く人の方が伸びる」という教員陣の経験則の、裏付けが得られました。
アクティブ・ラーニング(AL)についての結果も示唆に富んでいます。「ALの機会が多い授業の満足度が高いとは限らない。しかし、満足度の高い授業は、ALの機会が多い」。ALは学生に望まれているものの、ただ採り入れればいいのではなく、学生の意欲を喚起する仕掛けが必要だと考えられます。「ALや、教員とのやり取りの頻度は、受講者数とは無関係」という結果にも驚かされました。大人数の授業でも、ALや質疑応答をうまく採り入れている授業がある、やり方次第で学生とコミュニケーションが取れる、というわけです。
「WE MADE SOPHIA」の声をもっと大きく
「アンケートに答えたが、大学は変わらなかった」では、学生の期待に応えられません。各教員は、自身が受け持つ科目についての結果を見て、改善を図ります。学部・学科レベルでは、偏りや不足が見られた項目に応じて、研修を実施したり、カリキュラムを変更したりといった対応が行われます。
全学レベルでも、全教職員が参加可能な分析結果報告会を開催し、大学全体の傾向、満足度の高い授業の特徴を解説しています。さらに、評価が高い授業の上位1%を「学生が選ぶGood Practice」として表彰。学生目線での理想の授業の形が見えてくるとともに、受講した学生にしか知り得なかった、「いい授業」が日の目を見ることになりました。高評価の授業でなされている実践を共有し、大学全体の授業の質を高めています。
結果を教育に還元することにより、学生には、アンケートに回答して良かった、大学づくりに貢献した、と思ってもらいたい。アンケートの調査期間中、回答を呼びかけるポスターに配したのは、「WE MAKE SOPHIA」のキャッチフレーズです。アンケートを通して、よりよい大学を一緒につくろうとのメッセージを込めました。めざすのは、「WE MADE SOPHIA」と胸を張る学生を、一人でも多く増やすことです。これから入学する人にも、「一緒に上智をつくっていきましょう」と呼びかけたいですね。上智は学生中心の大学。今後もその姿勢をさらに強めていきます。