多様な人々が本当に過ごしやすいキャンパスを実現するには、学生・教員・職員が協力して課題解決を図ることが欠かせません。上智が今、取り組んでいる学教職協働のキャンパスづくりについて、学生総務担当副学長が語ります。
多様な人が集まるキャンパスを心地よい場所とするために
大学のキャンパスを、そこに集う人々にとって心地よい場所にするためには、構成員が垣根を越えて意見を出し合い、活動を通して相互理解を深め、課題解決を図ることが重要です。また、近年、大学はSDGsの達成に向けたさまざまな取り組みを求められていますが、これも構成員がそれぞれの立場からコミットすることで実現に近づきます。そのため、本学は学生・教員・職員が協働して、キャンパス環境の改善を図る取り組みを盛んに行なっています。
この“学教職協働”の取り組みの代表例として、「学生職員」の活動があります。本学は社会的責任を果たす取り組みを推進する「上智学院ダイバーシティ・サステナビリティ推進室」を設置しており、2021年度からそこに学生を職員として採用しています。学生職員は週10時間(授業としては6コマ分)以上勤務し、規定の給与が出ますが、責任感を持って業務にあたってもらうため、採用時に書類審査とインタビューによる選考を課しています。本年度(2024年度)は10名の学生職員が活躍しています。
学生職員は昨年まで3チームに分かれて活動していました。
「キャンパス環境改善チーム」はキャンパスが快適かつ環境配慮を意識したものになるよう設備の整備や改修を行うチームです。9号館中庭の改修にあたっては、災害時はかまどとして利用できるベンチを設置。植物の植え付けなどを学生と教職員が一緒に行なっています。
「情報発信チーム」は、「上智大学SDGs&サステナビリティレポート(日本語版・英語版)」の編集・制作を担当します。この冊子は、本学の取り組みを海外の大学に説明する際の資料としても活用されています。
また、「企画実施チーム」は、オープンキャンパスで高校生向けのトークセッションや大学内のサステナビリティを知るクイズ大会を開催し、社会課題の解決に向き合う本学の姿勢を高校生や保護者に知っていただく機会をつくりだしました。
本年度からは、従来の3チーム制をリニューアルし、プロジェクトチーム型に変えました。学生職員はより広い視野で課題を見つけ、教職員と協力してプロジェクトを企画し、実際に活動して成果検証まで行います。特定の業務にあたる従来のチーム制よりも、自由な発想で企画を考えることができますし、プロジェクトをやり遂げた後の達成感も大きなものになるでしょう。
本年4月には早速、学生職員が企画した「消えたソフィアンくんを探せ!ソフィア・キャンパスクエスト」というイベントが実現しました。これは大学公式キャラクター「ソフィアンくん」がキャンパス内に残したクイズを解くことで、サステナビリティを強く意識している上智大学への理解がより深まるという謎解き企画。学生主導でこうした取り組みが出始めていることに、教職員も感心しています。
キャンパスの様々な場面で見られる“学教職”が協働した試み
“学教職”が協働する取り組みは学生職員の活動だけではありません。
2013年にスタートした「上智大学フューチャーセンタープロジェクト」は学生・教員・職員が普段の仕事や枠組みを越えて集い、対話し、協働して新しい価値を生み出そうとするプロジェクトです。ここから始まった学教職協働「ピア・カフェ」プロジェクトは、学生と教職員が一緒にアイデアを出しあい、力を合わせ、さまざまな交流の場を企画・運営しています。これは、生き生きとしたキャンパスの雰囲気をつくり、それぞれが自分の居場所を見つけることにも役立っています。
教職協働「ピア・カフェ」プロジェクトは、上智学院ダイバーシティ・サステナビリティ推進室やさまざまな学生団体と協働して毎年12月にクリスマスマーケットも企画しています。コンセプトは「クリスマスの光の温かみを多くの人とシェアしよう」。イルミネーションの飾りつけをするほか、東南アジアやアフリカの雑貨販売、チャリティーバザー、募金活動、難民支援展示などを展開します。模擬店の売上の一部は募金されたり、お店を出している学生と来場者が会話して社会問題について理解を深めたり――上智らしさにあふれていて、とてもハートウォーミングな取り組みだと思います。
学生センター公式ウェブサイト「FIND SOPHIA」内の「上智学生記者クラブ通信Sophia Topics」(https://findsophia.jp/sophia-topics-page/)では、大学公認の学生記者が記事の企画や取材・執筆を行い、職員が校正や公開作業を担当するなど、協働してサイト運営にあたります。FIND SOPHIAは在学生のためのメディアですが、Sophia Topicsは高校生や保護者にも読まれており、広報の面で重要な役割を果たしています。
学生同士のコミュニケーション促進を目的として発足したSSIC(Sophia Student Integration Commons)も学教職が協働した活動を行なっています。2023年度は、日本茶をテーマに日本文化を体験するツアーや広島の原爆ドーム訪問など、日本人学生と留学生との交流の場となるイベントを20件ほど実施。これらも教員、職員が参加して学生と対話し、お互いに理解を深めるよい機会になっています。
サステナビリティの実現に向けた挑戦を“学教職”が協働するキャンパスから
近年、かつてとは学生の意識が変わり、サステナビリティやSDGsの目標実現に向けた関心が高まっていると感じます。小・中・高校の課外活動で社会課題について学ぶ機会が増えたことも影響しているのでしょう。だからこそ、大学では高校までとは違う、一歩進んだ学びや経験ができる機会を用意する必要があると思います。
もともと本学には、ヨゼウ・ピタウ学長(1975-1981在任)が学生や教職員とともにインドシナ難民支援のための街頭募金活動を行うなど、学生・教員・職員が協働し、ひとりの人間として行動しようという風土がありました。キャンパスは学生・教員・職員にとって、自分たちの居場所であり、学びの場であり、仕事の場でもありますが、多様な人々が集まるラボともなり得ます。学教職が立場を越えて心地よいキャンパスづくりを推進する活動は、社会課題の解決を考えるうえで重要な機会になるはずです。こうした活動は学生の成長につながるばかりでなく、構成員の帰属意識の向上にもつながってゆくので、今後もさらなる充実を図ってゆきたいと考えています。