上智学院ならびに上智大学は、中長期計画「グランド・レイアウト3.0 ―2030に向けて―」を策定、2023年度より実施しています。この新たな計画に込めた思い、実現しようとしている上智大学の姿について、曄道学長が語ります。
社会は変わる、ならば上智も変わらねば
上智大学は、全学部がワンキャンパスに集まる総合大学です。大規模大学にはない機動力を発揮して、常に社会の期待に応える存在でありたいと思っています。社会が急激に変わりゆく今、変化をためらってはいられません。
前の中長期計画である「グランド・レイアウト2.0」も、急速なグローバル化、高度情報化に対応すべく、10年間の期間の半ばで内容を更新し、2019年度から「グランド・レイアウト2.1」として運用してきました。その期間の終了を1年繰り上げ、新たに策定したのが「グランド・レイアウト3.0」です。
新型コロナウイルスの世界的な流行、地球環境問題の深刻化、AIに代表されるデジタル技術の加速度的な発展。社会のステージが変わったと判断し、我々上智も新しい立場で新しい教育・研究を行うべきだと考えました。1年間の前倒しは、私たちが常に変わり続ける組織であるという、社会に向けたメッセージでもあります。
5つの取り組みでめざす、上智にしかない質
「グランド・レイアウト3.0」の大学部門では、2030年に向けて上智大学が行う5つの取り組みを挙げています。
1つ目は、「グローバルな視野とローカルな視点で他者に寄り添い、未来を創るSophianの育成」。大学における教育は専門性の伸長に焦点が当てられがちですが、私たちは、大学を舞台にしたあらゆる経験が、他者に寄り添うリーダー=Sophianたる資質を形づくると考えています。
一つの象徴が、2022年度から構築している「基盤教育」です。各学科の専門科目はもちろん、全学共通科目、外国人とのコミュニケーション、留学、ボランティア等の多様なプログラム…。上智大学の教育全体を通して、社会に出たあとも学び続ける基盤を築く。その環境を用意し、実現をサポートしていくのが、私たちにとっての「育成」です。
併せて、「育成」の対象を高校生や社会人にも広げる、新しいキャンパス像も示しています。例えば、国際協力人材育成センターが行う国際機関への研修プログラムに、本気でその道をめざす高校生が背伸びして参加してもいいのではないか。高校生はこれを、大学生はこれを学ぶべき、といった枠組みを外し、ボーダレスに成長の機会を提供する場所をめざします。
2つ目は、「グローバル社会に貢献する世界水準の研究の推進・拠点の確立」。上智大学は、イエズス会大学間のネットワークをはじめ、世界中の大学と研究ネットワークを築いてきました。世界と連携し合える充実した環境を生かして、国際共同研究を推進するとともに、教員が研究時間をしっかり確保できるよう工夫を重ねていきます。
3つ目は、「サステナビリティを高水準で実現するグローバル・ワンキャンパスの確立」。約11人に1人が外国籍学生、約6人に1人が外国籍教員、文理さまざまな学部が揃う「グローバル・ワンキャンパス」の「質」に目を向けます。単に多様な人が集まるだけでなく、その多様な人たち誰もが心地よく学べるために、全ての人に配慮がなされるキャンパスを構築します。
4つ目の「グローバル社会および多様なステークホルダーとの連携強化」では、入試について触れています。「他者のために、他者とともに」を旨とする教育精神、グローバル・ワンキャンパスなどの特色を理解した志願者を増やすと同時に、まだ上智大学を知らない国内外の人々にその特色を知らせたり、これまでとは異なる観点の入試制度を実施したりすることによって、より多様な人が集まる大学にするつもりです。
5つ目は、「持続的発展を力強く支える組織、財務基盤の確立」。社会が変わり、教育や研究を変えていくには、組織も変わらなければいけません。例えば、学内コミュニケーションの活性化。この「グランド・レイアウト3.0」も、全教職員が参加できる会議を頻繁に開催し、様々な構成員の意見を1年間かけてまとめあげたものです。
「上智なら大丈夫」世界からの信頼を高める
本計画を通じて教職員や学生全員が、ほかにはない上智ならではの質「Sophia Quality」を追求します。この質は、国際通用性を持つものでなければなりません。
国際通用性というと、能力や実績があるとか、一定基準の評価を得ているとか、指標的な話をイメージしがちです。しかし、その本質は、多様な国、組織、人々から信頼されること。人で言う「人間性」のような、他者から信頼される資質を大学として持っていることが最も重要です。
幸い、現在は、世界の大学や機関との交流で、それをたびたび実感できています。卒業生や研究者が世界各地で、あるいは世界各地の人と誠実に働いているからこそでしょう。社会が変わりゆく中で、この信頼をさらに高められるよう、新たな上智大学をつくり上げていきたいと思います。