優れた成果よ世界に広まれ、世界に向けた研究発信

学術研究担当副学長
総合人間科学部心理学科 教授
岡田 隆

上智大学では2023年から、国際広報の一環として、研究成果をまとめた英文プレスリリースの配信を始めました。世界に向けて研究成果を発信する狙い、記事に込められた工夫、国内の高校関係者にとっての意義について、学術研究担当副学長が語ります。

多くの人に知ってほしい、世界水準の研究力

2023年の春から、学内研究者が主体となって行った研究のうち特徴的なものをピックアップし、その成果をまとめた英文の記事(プレスリリース)を世界に向けて発信しています。

 上智大学が「世界に並び立つ大学」を目指す中での課題の一つが、グローバル人材の育成で知られる一方、世界水準の研究面での実績をもっと多くの人に知ってもらう必要があるという点。研究力は、大学の存在感を示すうえで重要な要素であり、優れた研究を埋もれさせないことが、学術研究担当副学長の責務の一つです。プレスリリースを基にした報道、あるいはプレスリリースそのものの閲覧を通じて、優れた研究、ユニークな研究が上智大学で多数行われていることを、原著論文を読む専門の研究者だけでなく、世界中の人々に知ってほしいと考えました。

 研究に関するプレスリリースはこれまで、各研究者が自身で文章や図を作成し、日本語でおもに国内向けに配信していました。今回からつくり始めた英文のプレスリリースは、パートナーに加わった外部の制作・配信会社が文章や図の作成に大きく関わっています。海外の科学ニュースが集まるサイトや、海外マスコミに発信し、研究者だけでなく、仕事で科学情報に触れる人や、科学が好きな一般層へのアプローチをねらっています。

専門家でなくても興味を惹かれる研究を選出

英文プレスリリースの対象となる研究は、社会の動きや実生活との関わりが深いもの、上智大学にあまり関わりがなかった人にとっても思わず目に留まりそうなものを重点的に選んでいます。衛星で取得した海面水温や降雨のデータをAIで分析し、感染症の拡大を予測する研究広告の背景画像が見た人の商品評価に与えるメカニズムの研究科学教育に適したオリジナル分子模型の研究などを取り上げました。

 単に英語で記述されているだけでなく、記事の体裁にも工夫を凝らしています。研究の特色がひと目でつかめるように冒頭に要点を挙げ、本文の長さやレイアウトはWeb上での読みやすさに配慮。内容をわかりやすく表現した図も添えています。国・地域別の閲覧数や報道数など、配信後の反響データはIR推進室がモニタリングしており、取り上げる研究の選定、意識すべき読者対象など、その後のリリースに生かしています。

 配信を始めてから、海外の研究者やジャーナリストからの問い合わせが増えているのはうれしい傾向です。反響の多さに驚く論文の著者も少なくなく、他の学内研究者の刺激にもなることでしょう。プレスリリースをきっかけとした国際共同研究の増加にも期待しています。

高校生が、将来の研究をイメージするきっかけにも

英文の各記事は日本語版も上智大学のWebサイトに掲載しています。高校生、高校教員の皆さんにもぜひ読んでもらいたいですね。上智大学はたとえば語学教育の充実ぶりなどから「文系の大学」というイメージをお持ちの人もいるかと思いますが、文系も理系も活発に研究を行っている総合大学であることを実感していただけるはずです。

 高校生にとっては、「大学レベルの研究」とはどんなものなのか、イメージをつかむきっかけになるでしょう。中には、大学院生が携わっている研究もあります。「数年後には自身が携わる研究が世界に発信されるかもしれない」と感じてもらえれば、高校生の皆さんの夢が広がるのではないでしょうか。

 より詳しい研究内容を知りたければ、記事内に張られているリンクから、英語で書かれた原著論文にアクセスできます。論文は誰に対しても誤解なく伝わるように書く必要があるので、使われている英文は比較的シンプルです。高校生が読めば、入学後に行うであろう「研究テーマについて外国語で調べる」練習にもなるでしょう。

 上智大学はこの1年、今回紹介したプレスリリースをはじめ、研究者が自身の研究の魅力を語るインタビュー記事SDGsの観点からの研究紹介など、研究に関する発信を強化してきました。

 研究室や論文テーマをベースに進学先を考える高校生も多いと聞きます。上智の研究を紹介する情報に目を通し、より具体的な将来像を描いて入ってきてほしいと思います。

上智大学 Sophia University