上智生らしい倫理観・価値観を育む環境整備を推進

学生総務担当副学長
文学部 フランス文学科 教授
永井 敦子

近年、大学には「学生の目線に立った大学運営」が求められています。すべての学生が充実した大学生活を送れるよう、上智大学はどのような改革に取り組んでいるのか、あらゆる面から学生生活の支援にあたる学生総務担当副学長が語ります。

充実した大学生活を送れるよう、あらゆる面から学生をサポート

大学は学生が自主的に学んだり、課外活動に取り組んだりする場所であり、主役はあくまでも学生です。誰もが充実した学生生活を送れるように、課外活動を支援する、安心・安全な施設や設備を用意する、悩みを解消できるよう心身の健康維持をサポートしたり、利用しやすい奨学金を整備したりする――こうしたことすべてが学生総務担当副学長の職務です。換言すれば、「正課の『教育』と『研究』以外の、学生生活にまつわることすべて」が領域と言えます。

学生が健やかなキャンパスライフを送れるよう、本学は2022年春に既存の組織を刷新し、新たに「ウェルネスセンター」を創設しました。ここでは、病気・ケガの応急処置や身体的な相談のほか、メンタルヘルスのサポートにもあたります。

学生の困りごとは、体調だけでなく、ハラスメントの問題や就職活動の悩みや家計の急変など、さまざまです。「自分の問題を、どこに相談したらいいかわからない」「大学に相談してよいかわからないけれど困っている」という人も少なくないでしょう。学生が悩みを抱えたままにならぬよう、ウェルネスセンターでは学生生活の総合案内の中に、「なんでも相談窓口」というオンライン窓口を新設しました。キャリアセンターや奨学金の担当部署、場合によっては学内外の機関とも連携し、学生にワンストップで対応していきます。

そのほか、近年の目立った取り組みとしては、「ユニバーサルマナー検定3級eラーニング」の導入があります。本学は創立以来、多様なバックグラウンドを持つ学生や教職員が、互いを尊重しながら年齢、国籍、人種、宗教、障がいの有無などによって誰も排除されることない環境整備に努めてきました。これをさらに前進させるべく、2022年度からすべての新入生に「ユニバーサルマナー検定3級eラーニング」の受講、検定取得を求めています。

この検定は、自分とは異なる立場にある人の視点に立ち、適切な行動をするために必要な心構えや行動、コミュニケーションスキルを身につけるもので、受講後のアンケートを見ると、学生の9割が受講をポジティブに受け止めており、「eラーニングを受講できてよかった」「もっと早く受けたかった」という声が多く聞かれました。4年後、すべての在学生が受講している状況になれば、学内の雰囲気がさらによく変わるだろう、具体的には、今まで気恥ずかしさが先行して躊躇していた日常でのちょっとした人助けを、臆さずに行動に移せる学生が増えていくだろうと期待しています。

こうした学生のための施策は、私たち執行部だけで決めるものではありません。普段から学生をよく見ている教職員や学外の関係者、そして学生の意見に耳を傾け、施策に取り入れる必要があります。その際に、特に大事なのはお互いに信頼があること。学内外のステークホルダーとの信頼関係づくりにも、一層力を入れていきます。

“上智ならでは”の個性が磨かれるキャンパスづくり

今後、グローバル化がさらに進めば、これまで以上に「共生社会の一員として考え、行動すること」が求められます。そのため、「ボランティア活動に参加する学生を増やしたい」という思いがあります。

近年、SDGs等に強い関心を持つ学生が増える一方で、まだボランティアを自分ごととして捉えられていない学生も少なくありません。若者は考え方が柔軟ですから、学生時代に一度ボランティアを経験すれば、そこから先はボランティア活動に参加する心理的なハードルが下がるはずです。大学としてできることは、可能な限り多種多様なボランティア活動を紹介したり、すでに参加している学生の姿を紹介したりするなどして、「これだったらできるかも」「自分も参加してみたい」と思う学生を増やしていくことだと思います。

本学の卒業生の活躍の場は多岐に渡ります。すべての学生が将来、国際舞台で働くというわけではないでしょう。しかし本学の学生には、将来どのような場にあっても、自己利益だけを追求せず、常に「世界」という軸を持って物事を捉えられるようになってほしい。私自身、この大学の卒業生ですが、こうした普遍的な倫理観・価値観を持っていることこそが、“上智生らしさ”だと思うからです。

これを実現するためにも、大学の多様な活動の中で学生が自らの個性を伸ばし、さらなる成長を遂げられるように、学内の環境整備により一層努めてまいります。

上智大学 Sophia University