世界に挑み、個を実現する若者が育つ場に

学長
理工学部 機能創造理工学科 教授
曄道 佳明

100年以上にわたって受け継がれてきた上智大学の精神を、学長はどのような形で社会に示そうとしているのか。未来を担う挑戦者を育成するために、大学として今力を入れている取り組み・既成概念にとらわれない挑戦について、学長が自らの言葉で語ります。

建学の理念を、時代に合わせて進化させる

大学の歴史を貫く理念や精神を、時代に合わせてどのような形の取り組みとして描くかが、学長の腕の見せ所です。

例えば上智大学では「国際性」が建学の理念に謳われており、伝統的な強みにもなっていますが、それは留学生や外国人教員の数、英語科目の充実度などの表面的なスペックだけで表せるものではありません。本学が育成すべき国際性とは、卒業後、社会人や研究者になったときに、国際社会で縦横無尽に活躍できる力、つまり国際通用性を指すと考えます。世界を見渡す広い視野を持ち、その時々で自分に求められている役割を考え、実行に移せる人間性を培っていただきたいのです。どのようなスキルとして体現されるかは、時代によって、また本人がめざす姿によって異なるでしょう。それを培うための教育もひと通りではなく、常に見直し続けなければなりません。

2020年度に導入した、英語による学位取得プログラム「SPSF(Sophia Program for Sustainable Futures)」は、課題解決に多角的な見方、考え方が求められる現代においての「国際性」を育てる、新たな取り組みです。単に各学科の授業を英語で提供するのではなく、ワンキャンパスの総合大学である特性を生かし、6つの学科(新聞学科、教育学科、社会学科、経済学科、経営学科、総合グローバル学科)が連携。6学科内の科目を相互履修できる仕組みを設けることで、所属学科以外の学問も学んで視野を広げ、他学科の学生との議論や協働を通してサステナビリティへの多様な価値観を身に付ける場をつくりました。

ワンキャンパスというコンパクトな環境で、時代に沿うグローバル教育を提供するには、海外とのネットワークも重要です。世界各地の大学と協定を結び、信頼を築き上げてきた結果、上智大学が推薦する学生がコロンビア大学大学院やジョージタウン大学大学院といった海外の大学院に進学できる「特別進学制度」を設けるに至っています。世界的に名門と言われるジュネーブ国際・開発研究大学院とは特に強い連携を維持しており、通常6年間かけて取得する上智大学の学士号と先方大学院の修士号の2つの学位を、合わせて計5年間で取得する共同プログラムを実施しています

国際社会の牽引者と触れ合う体験が力に

学生たちが世界に羽ばたくための滑走路としての役割を果たすために、大学には何ができるかと問うたとき、国際社会を牽引するリーダーたちと触れ合うチャレンジングな場が多々用意されていることが重要なのではないかと考えています。

国際機関と連携した取り組みはその一つ。グローバル教育センターが募集する国連集中研修プログラムでは、夏期・春期休暇中にニューヨークの国連本部やジュネーブの国連欧州本部等において、実地やオンラインで現地スタッフから直接講義を受けることができます。また、例年春期・秋期実施の「国連Weeks」をはじめ、国際機関で働く人々を招いたセミナーやシンポジウムも多く、国連事務総長、国連難民高等弁務官といった要人が学生と対話を行ってきました。他方、アフリカや東南アジアなど、人間の尊厳の維持に苦戦する地域に赴いてフィールドワークを行う実践型のプログラムもあり、併せて参加すれば、複雑化する社会を多面的に理解できるはずです。

こうした挑戦の場に学生が自分の意志で飛び込むことにより、卒業後にも生涯を通して通用する、生き方の軸としての国際性が形成されます。舞台を一からお膳立てして、その枠組みの中でしか活躍できない学生を育てても、現代社会で求められる価値創造的な仕事はできないでしょう。大学が行うべきは、意欲を喚起し、それに応える場を備え、背中を押すことです。

人生を通じて世界的な視野を持ち続け、自身の役割を果たそうと奮闘する「ソフィアン」(上智大学の卒業生の愛称)を絶え間なく送り出してきたことに、私は誇りを感じています。グローバル企業や国際機関のスタッフは言うまでもなく、各国に駐在する大使、途上国を支援するNPOの設立者、国際ジャーナリスト……。自身の思いと向き合い、在学中も卒業後もいろいろなチャレンジをして、それぞれが個々の志を実現しています。

大学時代だけでなく、社会に出てからも、個人が学びをデザインする時代になりました。自分がどうなりたいのか、どうありたいのかを考えて、そのために必要な学びを主体的に選び取る。小中高大、すべてがそのステップです。本学がその拠点となり、想いを同じくする教育機関と共に、これからも未来を担う人々へ成長の機会を提供し続けていきます。

上智大学 Sophia University