世代を超えて未来へつなぐ学問のリレー

学術研究担当副学長
総合グローバル学部 総合グローバル学科 教授
赤堀 雅幸

イスラーム地域研究と人類学という2つの視点を通じて、人間の多様性と共通性を探究してきた赤堀雅幸教授。学術研究担当副学長として、上智大学の研究力をどう高め、次世代へとつないでいくのかを語ります。

専門家としての経験を研究力の充実に活かす

私の専門は、イスラーム地域研究と人類学です。2024年度まで所長を務めていたイスラーム地域研究所は、現在、「イスラーム」の名を冠した国内唯一の常設地域研究拠点です。キリスト教の大学でありながら長年にわたり複数のイスラーム研究者を擁し、その研究を先導する拠点を構築したという事実に、上智大学の懐の深さ、多様性を重視する研究姿勢が表れています。

一方、人類学者としては、文化人類学と自然人類学の統合を意識し、人文社会科学系と自然科学系、国内と海外、など多くの研究者と分け隔てなく交流してきました。この4月からは上智大学の多彩な研究を束ねる立場におかれ、これまで培ってきた連携の術を活かすという意味でも、大学他の研究機関、ときには企業などとも連携する役割の学術研究担当副学長は、やりがいがある職務だと感じています。

曄道前学長の時代から次第に研究に多くのリソースが割かれはじめ、上智大学の研究力は着実に高まっています。杉村新学長と共に歩む私たち新執行部は、その成果を定着させつつ、持続して充実の度合いを深めていける研究支援体制を確立していきたいと考えています。教員がワークライフバランスを保ちながら研究し、職員も無理なく研究推進に貢献できる。そのような環境を整えていくのが目標です。

頼れる支援チームと共に研究の持続可能性を高める

上智大学にはUniversity Research Administrator(URA。各研究者の活動や大学全体の研究マネジメントを支える専門人材)が6人(2025年7月現在)おり、学術研究担当副学長は、URAをはじめ、多くの頼れるスタッフたちと話し合いながら意思決定を行います。

URAが学内の研究力を分析したところ、大きな研究費を獲得してプロジェクトの運営に優れた手腕を発揮する研究者もいれば、個人としての研究成果の充実に努めて国際的に高い評価を受ける研究者もいて、成果の形に関しても、論文もあれば書籍もあり、特許の取得や文章以外の作品もあり、実に様々なタイプの研究者が学内にいることがわかりました。

そうした多様な研究者について、別の部分でもさらに力を発揮してもらう仕組みをつくるのか、それともそれぞれが得意な部分をさらに伸ばしてもらうか、判断は難しいですが、学内の声を聴き、スタッフと議論しながら決めていきたいと思っています。個人的には、双方の取り組みが相乗的な効果を発揮し、全体として上智大学の研究力を向上させることを願っています。そして同時に、何らかの事情で研究に力を尽くすことに困難を感じる人たちへの支援も含まれた仕組みにしなくてはなりません。

最初の一歩として、退職した教員が研究を続け、科研費など外部資金を申請する際に、大学が支援する制度をこれまで以上に充実させつつあります。資金を獲得して若手の指導を担ってもらうことにより、知識の継承と若手育成の場を増やす狙いがあります。研究は一人で完結するものではありません。世代を超えてリレーのようにつながってこそ、学問は持続可能になります。上智大学が掲げる「サステナビリティ」を、研究の面でも実現していく考えです。

学問の志を継ぐ若者たちを上智へと招く

国内外で多数の研究実績を残しているにもかかわらず、上智大学は「教育の大学」というイメージが先行しているように感じます。研究面での発信力をさらに高めるために、広報との協力体制の強化も重要です。

一方で、2014年度に開設した総合グローバル学部の立ち上げメンバーとして、高校生とも多く接してきた経験から、実際に入学した学生はもちろん、上智大学での学びに関心をもつ人たちは、進路として研究者を目指しているかどうかにかかわらず、研究への関心が強い人が多いという実感を得ています。上智大学で自身の学問的関心を深め、自分の人生に生かしたい人にとって、研究力は大学選びの重要なポイントです。

答えのない課題にあふれる現代社会では、研究を通じて培われるアカデミック・スキルが大きな力を発揮します。問題点を見出し、仮説を立てて立証する経験は、よりよい社会をつくる力の源泉であり、どんな仕事にも欠かせません。それを、上智大学で学ぼうとする人たちは、わかってくれているように思います。高校生を始めとして多くの人たちに上智大学をより深く理解してもらうためにも、研究広報が大切な取り組みになります。

大学をはじめとする教育機関は、生涯にわたる学びの通過点に過ぎません。大学で「学び続ける基盤」を培い、それを自らの人生に活かすとともに、研究の社会的意義を理解し、それを担い、あるいは支えていこうとする人たちにこそ、上智大学を目指してほしいと思います。

上智大学 Sophia University