違いを楽しみ、共に成長するキャンパスへ

学生総務担当副学長
総合人間科学部 心理学科 教授
横山 恭子

学生の心身の健康維持や、充実した大学生活のサポートを担う学生総務担当副学長。2025年度より、この役職に新たに就任した横山恭子副学長が、今後力を入れていきたい取り組みについて語ります。

学生の心身の健康維持と充実した学生生活をサポートする

学生総務担当副学長の仕事は、学生が充実した大学生活を送れるよう、多方面から支援することです。学内組織でいえば、総務局と学生局の統括を担当しています。

総務局は、一般企業の総務部と同じように、大学運営に関わるさまざまな業務をマネジメントしています。一方、学生局では、奨学金に関する支援や、学生寮の管理・運営、課外活動のサポートなどを行います。就職支援を担うキャリアセンターや、心身の健康維持をサポートするウェルネスセンターも学生局の一部門です。

ウェルネスセンターには看護師が常駐し、内科医や精神科医も勤務しています。さらに、日本語、英語、中国語に対応可能なカウンセラーによるカウンセリングも提供しています。私自身、2022年の設立時からウェルネスセンター長を3年間務めた経験があり、この経験を学生総務担当副学長としての職務に生かしていきたいと考えています。

ダイバーシティを推進し、差別のないキャンパスを実現

これから特に力を入れていきたい取り組みの1つがダイバーシティの推進です。

差別のないキャンパスを実現したいのは当然ですが、ダイバーシティの推進には特有の難しさも伴います。例えば、教義上、同性愛が禁じられているイスラム教徒の学生に対し、セクシュアリティの問題をどう説明し、理解を深めてもらうかは非常にデリケートな課題です。また、プロテスタントの福音主義の信者にとっては、聖書の教えが生活の中心であり、受け入れ難い価値観も存在します。私たちは、学生一人ひとりの思想・信条の自由を尊重しており、特定の価値観を押し付ける意図は全くありません。しかし、いかなる差別も決して許容されるものではなく、差別的な言動や他者の排除は断じて認められません。

本学では、多様な価値観を持つ人々が共生できるキャンパスを目指し、近々「DEI & B(Diversity, Equity, Inclusion & Belonging)宣言」を発表する予定です。繊細な神経を要する問題ではありますが真摯に向き合い、より多くの人が納得できる形を目指して、丁寧に議論を重ねていきます。

学生の心のケアと合理的配慮への取り組み

また、近年、若年層の自死が増加傾向にある状況を踏まえ、学生の心のケアにも一層力を入れていきます。若者が精神的に追い詰められる状況をどう改善していくかは極めて難しい問題ですが、大学として真剣に取り組むべきだと認識しています。

特に、日頃から学生と身近に接する教職員が、学生の様子の変化に早期に気づくことが重要です。そこで、2024年には教職員向けの「ゲートキーパー講習」を実施しました。100名を超える参加者が集まり、皆、熱心に耳を傾けていました。多くの場合、学生の異変に気づきやすいのは友人同士であるため、今後は学生向けの「ゲートキーパー講習」の実施も検討できればと考えています。学生に過度な責任を負わせる意図はありませんが、異変に気づいた際に相談窓口へつなぐことができるようになることを目指しています。

さらに、2024年度から全ての大学等で義務化された、障害のある学生等への「合理的配慮の提供」への対応も重要な課題です。配慮が必要な学生一人ひとりに対し、具体的にどのように対応していくか検討を進めています。障害のある学生に配慮しつつ、全ての構成員が「他者のために、他者とともに」生きていることが実感できるためにはどうあったらよいか、「上智大学で学ぶことを通じて成長できた」と感じられるために、私たちは何をしたらよいか、障害のあるなしに関わらず、教職員・学生含め皆で考えていきたいと思っています。

違いを受け入れるだけでなく、違いを楽しむことができるように

今、本学は「安心・安全なキャンパスの実現」を重要な目標として掲げています。私自身は、それに加えて「学生が生き生きと成長できる環境づくり」も同様に重要であると考えています。学生一人ひとりが「自分には何ができるのか」を主体的に考え、楽しみながら成長していく過程を支援していきます。

ウェルネスセンターでは、「一人ひとりの違いを理解し、尊重する」ことを目標の1つに掲げています。互いの違いを受け入れるだけでなく、その違いを楽しむことができるようになれば、学生はより前向きな姿勢で、さまざまなことに挑戦できるようになるはずです。

同時に、過保護にならないよう留意することも大切です。将来、自立して、あるいは自律して生きていけるよう、必要なサポートは提供しつつも、学生自身の力で問題解決に取り組む姿勢を育んでいきたい。そして、学生が多様な価値観に触れ、多角的な視点を獲得できるよう、大学全体で支援体制を強化したいと考えています。

上智大学 Sophia University