皆さんと手を取り合い、開かれた大学に

学長
総合人間科学部教育学科 教授
杉村 美紀

2024年9月、杉村美紀教授の次期学長就任が決定しました。教育学の研究者として世界を飛び回り、上智大学のグローバル化にも力を発揮してきた杉村新学長は、どのような大学をつくりたいと考えているのか。2025年4月の学長就任にあたって、その思いを語ります。

四谷から1万キロの地に届いた選任の報せ

学長選任の報せは、エチオピアで聞きました。自身がかかわる研究プロジェクトの仕事で首都、アディスアベバにいたのです。確かに候補者にはなっていましたが、まさか自分が選ばれるとは思わず、本当に驚きました。

専門は国際教育学、比較教育学です。国際交流や国際理解のほか、発展途上国の教育改善を考える「教育開発」、人種やジェンダー、言語、宗教などの文化の違いによらず平等に、かつ公正に学ぶ環境を整備し、多文化共生の実現をめざす「多文化教育」などを扱います。外国の教育を研究する分野だと思われがちですが、日本にも外国にルーツを持つ人々がたくさんいます。国内の教育にもかかわりが深い分野です。

こうした研究の総まとめとして行っているのが、「人間の尊厳、平和、サステイナビリティのための教育」という、上智大学のミッションに直結した国際プロジェクト。2023年、ユネスコと連携して地球課題の解決に挑む「ユネスコチェア」に選ばれました。エチオピアを訪れたのは、このユネスコチェアの会議があったからです。

専門が国際教育学ということもあり、上智大学でも国際交流の施策に協力してきました。特に2014~2021年度は、学術交流およびグローバル化推進担当副学長としてスーパーグローバル大学創成支援事業に携わり、先生方や職員の方々の尽力のおかげで海外協定校の拡大や様々な教育研究ネットワークの構築に携わることができました。この過程では、英語で持続可能な未来を考え学部4年間を英語で学ぶ学位プログラム「SPSF」の開設や、国内外の大学とオンラインで共に学ぶ国際協働学修「COIL」の導入など、教育プログラムの新しい枠組みも始まりました。

人と人をつなぐ学長でありたい

上智大学の大好きな部分の一つが、「人の近さ」です。少人数授業もそう、学内のそこかしこで教職員と学生が話し込んでいる風景もそう。研究室には卒業生がよく顔を見せてくれますし、メキシコで、ウガンダでと、世界各地で卒業生の活躍に出会うことも珍しくありません。

学長として心がけたいのも、とにかく人と会って話す姿勢です。私の取り柄はコミュニケーション力だと思っています。学長室に閉じこもらず、キャンパスに出て、皆さんと近くありたいですね。まずは教職員や学生の皆さんの声を聴き、共通する思いを施策として打ち出したり、組織を越えた交流の場を設けたり、横串を刺す役割を務めていきます。

共に舵をとっていく学務、社会連携、学術研究、学生総務、グローバル化推進の5人の副学長は私が着任をお願いした方々で、これも横串で連携が取れるように、所属学部や過去の所掌組織が多様な構成になるよう考慮しました。それぞれが各領域の牽引者ではありますが、プロジェクトの内容に応じて相互に連携をして取り組めるように、柔軟な役割分担を試みます。

大学の未来、一緒につくりませんか

世の中にはいろいろな考え、いろいろな立場の人がいます。カトリック教会、イエズス会の一員として、多様な人を受け入れ、困難な状況に置かれている人に手を差し伸べる、みんなに開かれた大学が、上智大学です。

国内外の各地からキャンパスに集う学生たちは、本学の多様性の象徴であり、一緒に教育をつくっていく仲間でもあります。前任の曄道先生は、学生が自身の学びをデザインする「基盤教育」という素晴らしいしくみを築いてくださいました。また本学は、学生が大学運営に参画する「学生職員」制度を持つなど、学生が教職員とともに教育をつくりあげていく土壌があります。彼ら彼女らが社会の主軸を担う10~20年後の未来に何が求められているのか、そこで活躍するためにはどんな教育や研究がふさわしいのか、今いる学生、そしてこれから入学してくれる高校生とアイデアを出し合うのが楽しみです。

小学校、中学校、高校の先生方にも学ばせていただきたいと思います。アクティブラーニングや探究学習など、高校までの学び方の進化は大学も大いに参考にすべきです。学生の皆さんが、高校までに積み上げてきた学びを上智大学でさらに伸展させるために、先生方とも、生徒、学生の成長について語り合っていきたいと思います。 学長という立場ではありますが、私一人の力は微々たるもので、上智の未来は皆さんとともにあるものです。より良い世界をめざす新しい取り組みを、皆さんと一緒に考えることができるのを心待ちにしています。

上智大学 Sophia University