学科の特色
日本でも数少ないロシア語およびロシア・ユーラシア地域研究を専門とする学科です。ロシア語の運用能力習得を目指すとともに、ロシアをはじめとする旧ソ連邦(バルト諸国、ベラルーシ、ウクライナ、中央アジア諸国、コーカサス諸国など)、中東欧諸国について総合的に学ぶことができます。
ソ連邦崩壊後の混乱を経て、新しい世界秩序を構築していくなかで、ロシア・ユーラシアはますます重要な地域となっています。この地域の現実に精通し、人々の文化や精神性を理解し、特に、日本とロシア、世界との関係を自ら積極的に構築できる人材を育成し、優れた実務家、ロシア・ユーラシア地域研究の専門家を輩出することを目指しています。
哈爾濱(ハルビン)学院顕彰基金
ロシア語学科には「哈爾濱(ハルビン)学院顕彰基金」という、大変ユニークな奨学金制度があります。1990年秋に、「哈爾濱学院同窓会」から、上智大学ロシア語学科の研究と教育のための基金の寄付がありました。哈爾濱学院とは1920年に中国東北地方の哈爾濱に創立されたロシア専門家を養成するための高等教育機関です(発足当初の名称は「日露協会学校」)。学院は現存しませんが、ここで教鞭をとられた先生方や卒業生が戦後にロシア語学科の教員となったということもあり、卒業生たちが寄付をつのって上智大学に寄贈しました。ロシア語学科ではこの浄財をもとにつくられた基金を活用し、研究会やシンポジウムを開催したり、学科の学生およびロシアについて研究している大学院生若干名に奨学金を授与したりしています。
カリキュラムの特徴
2 年次までに日常会話レベル、卒業時までにグローバルな場面で駆使できるロシア語運用能力を獲得する
1~2年次の2年間で、ロシア語の基礎を徹底して学びます。「基礎ロシア語」の授業は週6コマ600分の授業からなり、1年次は総合・会話・文法、2年次はドリル・会話・講読といった内容で構成されており、会話の授業はすべてロシア語を母語とするネイティブの教員が担当します。
3~4年次には中~上級の「ロシア語専門科目」を学び、高度なコミュニケーション能力を身につけます。また1年次の「ロシア語圏基礎科目」など、ロシア・ユーラシアの政治、経済、文化、芸術に加え、ロシア的発想の理解を目的とした学びを展開。9つの研究コースから一つを選んで行う専門研究の学びへとつなげていきます。
※科目の詳細については、シラバスをご覧ください
科目紹介
- 基礎ロシア語Ⅰ・Ⅱ
ロシア語およびロシア・ユーラシア地域の研究に必要となる基礎的な語学力の習得を目標とします。1~2年次ともに、1週間に6コマの高い密度で授業を行います。
- ロシア研究方法論
パソコンでのロシア語入力スキルからロシア地域の情報収集の技術、論文・レポートの作成法まで、ロシア地域を研究するために必要な情報リテラシーを学んでいきます。
- ロシア・スラブ対照言語学
中東欧の諸言語のうち、ロシア語以外のスラブ諸語(ウクライナ語・ベラルーシ語・ポーランド語・ブルガリア語など)の文字・音声・文法、およびその背景にある言語文化を知ることにより、現代ロシア語の言語学的位置づけを相対的に理解します。
- ロシア語表現法
ロシア語でのプレゼンテーションを通じて、スピーキング・ライティング・リスニングのスキルを向上させます。また、質疑応答に必要な表現も学びます。
- ロシア語翻訳研究
オリジナル言語(日本語の原文)をターゲット言語(ロシア語)に翻訳する力を培います。さまざまなジャンルの教材を活用し、ロシア語圏の歴史・文化への理解も深めます。
- ロシア・ユーラシア地域研究入門
ロシアの歴史と現在を中心に、入門的なロシア・ユーラシア情勢、国家と国際関係、日ロ関係史に関する講義を行います。今後の学習・研究につながる基礎を身につけます。
取得可能な教員免許と教科
- 高等学校教諭1種(ロシア語)
学芸員課程が履修できます。
学生の研究テーマ例
- ウクライナ侵攻後の企業撤退とロシア国民への影響
- マリウス・プティパによる古典バレエ様式の確立
- 海外におけるロシア的祝祭儀礼の現在
- キルギス・タジキスタン間の国境紛争
- 文学の読解と機械翻訳
- 言語習得における学習ストラテジーの適用
- 北東アジアにおける水素戦略とその評価
- 権威主義体制と選挙
- インターネット上のロシア語の特徴
教育の目的・方針
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ロシア語の高度な運用能力を養い、地域研究、言語研究等の専門研究の基礎となる幅広い教養(人文・社会科学、ロシア・ユーラシア地域に関する基礎知識)を修得すること
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ロシア語の高度な運用能力を基礎として、国際社会に貢献しうる人材、並びに地域研究、言語研究等の専門家を養成すること
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本学科は、学生が卒業時に身につけているべき能力や知識を次のように定めています。卒業要件を満たせば、これらを身につけたものと認め、学位を授与します。
卒業時において全員がヨーロッパ言語参照枠(CEFR)におけるB2相当(海外の大学で学べるレベル)に到達し、それに加えできるだけ多くの者が同C1相当(海外の大学院で学べるレベル)に到達することを目標とします。
- ロシア語の「聴く」「読む」に代表される受容的言語活動(receptive activities)に関する能力
- ロシア語の「話す」「書く」に代表される産出的言語活動(productive activities)に関する能力
- ロシア語の会話や交渉に代表される相互行為活動(interactive activities)に関する能力
- ロシア語の通訳・翻訳などに代表される仲介活動(mediating activities)に関する能力
- ロシア語圏の歴史・文化・政治・社会について、世界での位置づけや特徴および日本との関係や比較を踏まえて理解する能力
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本学科では、ディプロマ・ポリシーに沿って、次の趣旨を盛り込んだ科目によってカリキュラムを編成しています。
- 【第一主専攻・必修科目(基礎ロシア語I・II)】1・2年次を通して、ロシア語の基礎的運用能力の修得を目指す。1年生では、「文法」「会話」「総合(文法と会話を総合したクラス)」のクラスに分かれ、複数の教員が授業を受け持つ。すべてのクラスでほぼ毎回宿題が課され、年間を通じて25回ほどの試験が実施される。2年生では、「ドリル(文法)」「会話」「講読」のクラスに分かれる。「ドリル」「会話」のクラスでは、ほぼ毎回宿題が課され、年間を通じて20回ほどの試験が実施される。1・2年次を通して、口頭形式の練習と筆記、作文形式の練習が繰り返され、「会話」の授業では、ロールプレイやプレゼンテーションも取り入れる。学生には、積極的な授業参加と日々の予習、復習が求められる。
- 【第一主専攻・選択科目】1・2年次で修得したロシア語の基礎能力を用いて、読解、聴解、会話、作文などの能力の向上を目指す。将来通訳者を目指す学生のために、通訳法のクラスも準備されている。それぞれのクラスが「上級」「中級」に分かれるが、上級者が中級クラスを受講すること、中級者が上級クラスを受講することも認められている。
- 【第一主専攻・語圏基礎科目】ロシア・ユーラシア地域の文化や歴史、社会や経済などについての基礎的な知識を提供するための科目が、1・2年生向けの必修科目として開講されている。
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- ロシア語圏の言語・歴史・政治・経済・社会・文化などに関心を持ち、ロシア語の高度な運用能力を身に付けることを望む学生を求めます。
- 基本的に、ロシア語学科においてロシア語の学習を開始したい学生を求めています。
- ロシア語と英語の実践的な運用能力を基盤として、外国語学部が設けている9つの「研究コース」のいずれかにおいて、自ら選んだ領域やテーマについて専門的に掘り下げることを期待します。