学長メッセージ

豊かな人間性を有し、社会課題に主体的に取り組む
「他者に寄り添う」リーダーへ

上智大学長 杉村 美紀

皆さんは、上智大学にどのようなイメージを抱いていますか。国際色豊かな環境、充実した語学教育、あるいは学融合的なキャンパス。そういった情報が皆さんのなかにあれば嬉しく思います。

いずれも本学の特色ですが、それらを支えるのは、他者と社会への奉仕を旨とするキリスト教ヒューマニズムを礎とした人間教育です。このことは「他者のために、他者とともに」という本学の教育精神にも表されています。他者とは身近な人だけでなく、社会的弱者から危機や困難に苦しむ人々まで地球上のすべての人のこと。

国際社会は、「誰一人取り残さない」というSDGs の理念に向け動き出していますが、本学は建学から1世紀以上の長きに渡り、社会課題を自らの問題と捉える豊かな人間性を有し、国・文化・宗教等の違いを対話と相互信頼で乗り越え、協働することで問題解決を図ろうとする学生を輩出してきました。

この伝統をさらに深化させるべく、学生・教職員が一体となり、「多様性」と「包摂性」そして「公正性」という一見矛盾するようでいて、一人ひとりの尊厳を守るうえで不可欠な要素が共存する、インクルーシブなキャンパスづくりを実践しています。

[プロフィール]

1962年生まれ。2013年上智大学総合人間科学部教育学科教授、2014年学術交流担当副学長、2017 年グローバル化推進担当副学長等を経て、2025年上智大学長に就任。2024年より上智大学ユネスコチェアホルダーに就任中。専門は比較教育学、国際教育学、多文化教育論。

皆さんが活躍されるこれからの現代社会に目を移すと、そこはかつてないほどの複雑性と不確実性にあふれています。解決への道筋が用意されていない事柄に対峙する際、もはや単一分野の知識や大学4 年間の学びだけをもって太刀打ちすることは不可能です。

必要なのは、変化に挑戦し学び続けること。本学では、すべての入学者を対象に、学生が自ら学びたい分野を見出し、問いを立て、課題解決に踏み出すことを前提とした「基盤教育」を行っています。学びを自らデザインするなかで主体的な学修への意欲が育まれ、生涯学び続けるための基盤が形成されていきます。

加えて、全学部生が同じキャンパスで学ぶ利点を活かし、他学部の授業を柔軟に履修できる制度を整えています。研究分野や文理の垣根を越えた学際的な学びは、これからの社会を生き抜くうえで唯一無二の武器となるはずです。

国際機関や企業等との連携によるダイナミックな研究の展開も本学の大きな特長です。大学で取り組む学問や研究が社会にどのような影響を与え意味をもつものなのかという実践的な知のプロセスを目の当たりにすることもまた、未来を自らの創意で切り拓いていく糧となるでしょう。

本学での学びを通じ、学生たちには他者に寄り添い、未来を切り拓くリーダーになってほしいと願っています。リーダーとは必ずしも集団の先頭に立ち、先導する人ではありません。次世代のリーダーはむしろ、周囲の意見や能力を引き出す調整力と、変化を受け入れ適応する力を兼ね備えた存在であるべきと考えます。学びを通じて成長したいという挑戦意欲に満ちた皆さんにお会いできることを、心から楽しみにしています。

上智大学 Sophia University