国連創設70周年の記念日(2015年10月24日)にあわせて「上智大学国連Weeks October, 2015」が開催され、「国連の活動を通じて世界と私たちの未来を考える」をコンセプトにさまざまな行事が行われました。

国連創設70周年記念 特別シンポジウム「国連の第一線で活躍する女性達と国際貢献」

講演する山下真理氏

10月16日、国連創設70周年記念特別シンポジウム「国連の第一線で活躍する女性達と国際貢献」が開催され、約120人が来場しました。

シンポジウムでは、国連政務局でアジア太平洋部長を務めた後、9月から平和構築支援事務所次長を務める山下真理氏(1988年法国卒)による基調講演と、2人の現役女性国連職員を交え、「世界の未来と女性の活躍」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

山下氏は初めに、国連の活動の3本柱を形成する「安全・平和、開発、人権」について触れ、世界の全ての人が尊厳が守られた人生を送る、その環境作りの手伝いを行うのが国連の職務であると語りました。また、国連が支援する分野は開発援助、人道援助、難民支援、紛争予防、人権擁護など多岐にわたり、多くの人々がその解決に奔走している様子を、自身の経歴を例に挙げながら説明しました。

山下氏は参加者に「世界の鼓動と生きる」「日本に対する期待」「特に女性にとって働きやすい国連」という3つのメッセージを持ち帰ってほしいと呼びかけ、「国際社会への貢献の重要性」を強く推奨しました。

女性国連職員3人が登壇

続いて行われたパネルディスカッションでは、国連広報センターの根本かおる所長と国連人口基金東京事務所の佐崎淳子所長が登壇。自身の経歴を紹介しつつ、国連でキャリアをどのように積み上げてきたかを語りました。

質疑応答では、在学生や高校生から熱心な質問が相次ぎました。「途上国での課題解決について、気をつけていることは」との質問に、根本氏は「難民問題は政治的な問題が根底にあって発生する。人道支援では日本人の『聞く力』を発揮し、善悪を決めつけずそれぞれの立場を思いやり、調整する。こうした力が支援の現場で大切になってくる」と述べ、中立で普遍性のある立場で臨むことの重要性を語りました。

国連エッセーコンテスト 受賞者発表 授与式

第1位の杉山美紗さんとIPCの大内代表

10月16日、「国連エッセーコンテスト」の表彰式が行われました。これは、本学のグローバル教育の取り組みのひとつで、学生の国際協力・国際貢献への関心を喚起することを目的として、国際写真理事会(IPC)と共催したものです(後援・国連広報センター)。

今年のテーマは「強い国連、より良い世界」。28人の応募(日本語18、英語10)があり、審査の結果、第1位から第8位までを決定。奨学金(1位と2位)と賞品(3~8位)の授与を行いました。

第1位に輝いた法学部法律学科3年の杉山美紗さんには、IPC日本代表の大内まち子氏から奨学金1,000ドル(約12万円)が贈られました。杉山さんのエッセーのタイトルは「21世紀最大の国際問題としての難民問題」。インターンシップ科目において国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所で実習した経験に基づき、日本の難民受け入れに対する意識の低さや制度上の問題点を指摘。杉山さんは「難民問題は国際社会全体で直面している深刻な事態であり、UNHCRをはじめ多くの国連機関での取組みはもちろん、国際社会の一員として自分自身も考えていきたい」と決意を述べました。

第10回UNHCR難民映画祭-大学パートナーズ 映画上映・トークセッション

小尾副代表(左)と岡部教授のトークセッション

上智大学は第10回「UNHCR難民映画祭-大学パートナーズ」に参加し、10月23日に映画上映・トークセッションを開催しました。会場には34人の高校生を含む133人が来場しました。

はじめに国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所副代表の小尾尚子氏からUNHCRの活動について説明があり、続いて映画『目を閉じれば、いつもそこに~故郷・私が愛したシリア~』(藤井沙織監督)が上映されました。

この作品は、ヨルダンや日本で暮らすシリア難民の日常に寄り添って撮影されたドキュメンタリー映画です。普通の人々の普通の生活が、ある日突然壊され難民となる。そんな彼らの望郷の思いを美しいシリアの風景や建物、家族や友人との思い出と共に描いています。

来場者からは「どんな人々が国を逃れ難民として生活をし、今彼らが本当に欲しているものは何なのかを考えるきっかけとなった」などの感想が寄せられました。

上映後、小尾氏と岡部みどり国際関係法学科教授のトークセッションが行われ、シリアを含めた現在の難民の現状や日本政府の難民政策などについて、多角的な議論が行われました。小尾氏は東日本大震災以降にUNHCTRへの寄付が日本で増加したことに触れ、「いつもの生活を失うことへの共感が寄付の増加に繋がったのではないか」と述べました。その上で「民間レベルでも難民問題に対してできることを考えて欲しい」と要望しました。

最後の質疑応答でも多くの学生から質問の手が上がり、終了まで活発な議論が続きました。

NHK日本賞50年記念シンポジウム「異文化理解とメディア -メディアがつなぐ 世界は今-」

NHK日本賞の受賞作品を鑑賞して意見交換

10月24日、国連創設70周年NHK日本賞50年記念シンポジウム「異文化理解とメディア~メディアがつなぐ 世界は今~」が開催され、会場の2号館17階国際会議場には200人以上が来場しました。

6月の国連Weeksで開催されたシンポジウムの続編となる今回は、国連広報センターの根本かおる所長、総合グローバル学部の植木安弘教授のほか、NHK日本賞受賞者2人を招きました。

シンポジウムは受賞作品のダイジェスト版上映の後、パネルディスカッションが行われました。最初に上映されたのは2015年グランプリを受賞したDe Familie Film & TV・VPRO放送協会のファティヤ・アブディ氏の『キミの心の “ブラック・ピーター”』。オランダのクリスマスには欠かせない伝統的なキャラクター、ブラック・ピーター(顔を黒塗りした従者)を題材に、オランダ人の心の中に潜む人種差別意識をあぶり出す番組です。壇上にはアブディ氏持参のグランプリトロフィーが飾られました。上映後は、オランダの伝統的な風習に異議を唱える番組内容から、映像の力は、多くの人に普段気がつかない問題を認識させることができるとの感想が聞かれました。

続いて、2014年企画部門最優秀賞を受賞したナミビア放送協会のグリニス・ピアケス=カバ氏の『ミーアキャットのぼうけん』を上映しました。国内に13の言語が存在するナミビアで、就学前の子どもに小学校の授業で使う英語に触れさせることを目的とした番組です。植木教授は、自身が国連職員として独立前のナミビアへ訪れた経験を語り、教育制度が整い始めたことを説明。こうした番組の制作が、ナミビアの教育の充実につながると語りました。

受賞作品のダイジェスト版は NHK日本賞のウェブサイト で閲覧可能です。

上智大学 Sophia University