上智大学は、アフリカ地域と深く関わっていくみなさんとともに、アフリカ地域への理解を推進し、連携を深めていくための取り組みとして今年で第7回目となる「アフリカWeeks」を5月15日から29日まで開催しました。

期間中、講演会やシンポジウム、学生企画など多彩なプログラムを実施しました。

アフリカのスラムに学校を作る~子どもたちの笑顔、命の輝き~

5月15日、ケニアのスラム街・キベラで貧困の子どもたちの学校「マゴソスクール」を運営する早川千晶氏を招いて講演会が行われました。

冒頭、早川氏はキベラで生活する人々の現状を解説。さまざまな困難を抱えながらも生きることを諦めない人々の前向きな工夫の裏に、病と闘い、常に死と隣り合わせにある生活環境の過酷さがあると述べました。続いて、マゴソスクール設立の背景や、絶望から立ち上がり希望を持って卒業したOBOGのエピソードなどを紹介。スラム街での学校運営の意義の一つに、「教育は困難から抜け出すための知恵や技術につながる。マゴソスクールのOBOGが力強く前に進んでいく姿を見ていると、学ぶことの力を改めて実感する」と語りました。

笑顔で力強く語る早川千晶氏

講演後の質疑応答では、日本からできる支援・交流に関する質問に対して「まずは知ることが大切。そのためには対話が必要で、対等な人間として向き合い、議論することで新たな道が見えてくる。同時に、現在までの歴史を学ぶことは今を紐解く糧になる」と答えました。会場には約100人の聴衆が集まり、オンラインでは120人程が視聴。多くの関心を集めました。

Youth Conference アフリカ地域研究者と話そう

発表した研究者の皆さん

5月20日、日本で活動するアフリカ地域出身研究者を囲んで学術交流を図るセミナーが開催されました。本学のキシンジ・キヌア特別研究員(Dr. Kithinji KINYUA)が進行を務めました。ケニア出身のキヌア研究員は、アジア文化研究所でアフリカにおけるデジタルプラットフォームの政治的民俗学などを研究しています。

第1部では、キヌア研究員の紹介でアフリカ地域出身の研究者4人が登壇。はじめにコンゴ民主共和国出身の名古屋大学大学院国際開発研究科のクリスチャン・オチア准教授(Prof. Christian OTCHIA)が、専門の開発経済学について日本の「カイゼン(改善)」などを例に研究内容を紹介しました。続いて、ウガンダ出身の3人の研究者がプレゼンテーションを実施。東京基督教大学神学部のレベッカ・バビリエ助教(Ms. Rebecca BABIRYE)は、専門の宗教学から見た異文化交流について発表しました。グローバル社会を研究する愛知学院大学文学部のヴィック・サリ外国人教師(Dr. Vick L. SSALI)は、日本の言語・文化教育におけるアフリカの位置付けや、アフリカ出身研究者と日本のアフリカ研究者をつなぐ試みなどについてスライドを用いて説明。政策研究大学院大学のイアン・カルシガリラ講師(Dr. Ian KARUSIGARIRA)は、専門の政治学について日本の政治体制の考察を交えて紹介しました。発表後、日本人の単一的なアフリカについての見方をどうしたら変えられるかなど活発な質疑応答が行われました。

第2部は参加者がグループに分かれ、発表した4人の研究者を囲んで意見交換を実施。あちらこちらで笑い声が響くなど、時間いっぱい交流を楽しみました。

天空の王国レソトを知っていますか?

講演するソーリ・ママスーファ参事官

5月22日、在京レソト王国大使館から外交官を招いて講演会が開催されました。レソトは四方を南アフリカに囲まれた内陸の王国で、国土全体の標高が1,400メートルを超えることから「天空の王国」と呼ばれています。

はじめに、レソト王国大使館で参事官を務めるソーリ・ママスーファ氏が登壇し、レソトを紹介しました。地理・人口などの基本情報、教育システム、歴史的背景、伝統衣装、食事、家事道具などについて、スライドを投影し解説。高校生をはじめとする参加者は、自然豊かなレソトの写真を見ながら熱心に耳を傾けました。

続いて、日本人との結婚を機に来日し町田市で暮らすレソト出身のルーシー・コスギ氏が登壇。現地での結婚式の様子や、日本での生活や子育ての苦労などを語りました。

講演後は、レソトなどアフリカ南部で古代から伝わるボードゲーム「モラバラバ」や、会場に持参したレソトの伝統的な衣装・帽子を紹介。参加者は実際にゲームに挑戦したり、衣装や帽子を身につけて写真を撮影したりと、思い思いにレソトを感じていました。

ルワンダで義足を作る-再建に向けて

並んで講演するルダシングワ真美氏(左)とガテラ氏

5月23日、ルワンダで人道支援活動を行うルダシングワ真美氏と、同氏の公私のパートナーで自身も義足を装着するガテラ氏をスピーカーに迎え、現地での身体障害者支援に関する講演会が行われました。2人は首都キガリ市に義肢製作所を設け、装具の製作、装具士の育成、障害スポーツの普及、障害者に対する職業訓練などの活動を行っています。

冒頭、現地の状況について「かつての大虐殺の影響もあり、ルワンダでは現在でも義肢を必要とする人が多くいる」と歴史的背景を交えながら説明。続いて、自身が活動を始めたきっかけや資金・資材集めの苦労、更地にレンガを積み上げ、活動の拠点となる製作所を自ら建設したエピソードなどを紹介しました。そして、「さまざまな困難や挫折が伴うなかで活動を継続してこられたのは、色々な人に出会い、支えられてきたから。これからも支援活動を続けていきたい」と語りました。

最後に設けられた質疑応答の時間では多くの質問が寄せられ、関心の高さがうかがえました。

上智大学アフリカ研究紹介

右から時計回りに、戸田美佳子准教授、マタディ・ジスレン・チケンドワ教授、矢澤達宏教授、山﨑瑛莉講師

5月25日、本学で行われているアフリカ地域を対象とした研究や実践型プログラムを紹介するセミナーを開催しました。はじめに、進行を務めるグローバル教育センターの山﨑瑛莉講師が、本学は「学術・研究」「教育」「社会貢献」の3つの柱でアフリカ展開を行っていると紹介しました。

続いて、本学でアフリカ研究に携わっている3人の教員が順に登壇。

総合グローバル学部の戸田美佳子准教授は、中部アフリカ地域を中心に、人間の暮らしが生態的な環境とどのように対応しているかを研究しています。その中で障害者の営みにも注目。障害者を通したアフリカ地域研究、非西欧社会における障害観、障害学と文化人類学やジェンダー研究への接合など、研究テーマが広がっていると話しました。

外国語学部ポルトガル語学科の矢澤達宏教授は、アフリカとブラジルの2つを研究対象としています。サハラ以南アフリカの特に旧ポルトガル領アフリカの政治・歴史、そしてブラジルの黒人の歴史・人種間関係を中心に研究。軽視されてきたポルトガル語圏に光を当てること、植民地支配や人種主義と闘うアフリカ(系)人の知性や勇敢さを描き出すこと、一つの地域を超えたダイナミズムを解き明かすことの3つを研究の醍醐味として挙げました。

イエズス会海外客員教授として在籍するマタディ・ジスレン・チケンドワ教授は、本学での授業の様子を紹介。アフリカと日本の人々が交流し互いを理解することが大切だと強調しました。

最後に山﨑講師から、2015年から始まった本学の実践型プログラム「アフリカに学ぶ」の説明があり、コートジボワールにある協定校Centre de Recherche et d’Action pour la Paix(CERAP:平和・研究活動センター)からのビデオメッセージが流されました。併せて、アフリカ理解促進につながる機会の創出など社会貢献についても紹介し、セミナーを締めくくりました。

学生企画

学生有志25人がアフリカWeeksの企画全般の運営を担った他、次のとおり学生主体の企画を実施しました。

アフリカン・ワークシップ~コーヒーから知るアフリカ~

5月26日に大学生と高校生に対象を限定してワークショップを開催。本学の卒業生で、「Warm Hearts Coffee Club」を運営する山田真人氏(文英および神神卒)を招いて、コーヒーを試飲しながら話を聞きました。山田氏は自身の団体が行っているマラウイでの学校給食支援を紹介。学校給食が持つ力を熱く語り、支援の仕組みやフェアトレードについて詳しく紹介しました。その後、参加者は4つのグループに分かれ、運営学生が用意したテーマについて話し合い理解を深めました。

ワークショップは笑顔で終了

雑誌企画

雑誌企画は3年目。12ページの雑誌『With AFRICA』を発行しました。(学生センター、図書館、メインストリートで配布)

図書館展示

図書館1階カウンター前で、「Connect with Africa」と題して、アフリカの工芸品やアフリカ関連書籍を紹介する企画展を実施しました。(5月15日~6月23日まで)

上智大学 Sophia University