大学が社会から孤立せず、愛される存在であるために

大学が、社会から孤立せず、人々から求められ、愛される存在であり続けるためには、さまざまな面で“連携”が不可欠です。私は、社会連携担当副学長として、学生を中心としたさまざまなステークホルダーから魅力を感じてもらえるよう、学外との連携を積極的に推進していきます。

大学が存続するためには、「学生から見て魅力ある大学であり続けること」が欠かせません。学生が求める魅力とは、充実した教育と研究力、キャンパスの立地、就職先など多岐にわたるものであり、これらを総合的に向上させる必要があります。大学単独でできることは限られており、学外との連携がこれまで以上に大切になります。

研究力の強化には、企業との共同研究が有効です。これまでは大学の研究シーズと企業ニーズのマッチングが主でしたが、今後は新たな価値を創造する研究が求められるでしょう。この過程では地域社会との連携も必要になるはずです。教育面においても他大学と互いの強みを生かした連携や、高校と協力した人材育成が求められます。

連携を促進するには、大学の取り組みを広く知ってもらうことが鍵になります。「上智大学が何に取り組んでいるのか」「何をしたいと考えているのか」を発信しなければ、それに賛同して協力しようという人は現れないでしょう。広報活動にも積極的に取り組んでいきたい考えです。

社会との連携強化と同時に、学内の組織もつないでいく

連携促進のためには、学内の体制の構築も不可欠です。社会連携は特定の部署だけで完結するものではなく、学内のさまざまな部署や組織が連携して推進するものです。一方で、大学は基本的に縦割り構造であり、社会連携のように複数部署が関わる場合、学内連携が円滑に進まないケースも考えられます。こうした部署間の橋渡し役を務めるのも、社会連携担当副学長の役割です。

私はこれまで、学生センター長や入学センター長を経験してきました。その過程で、学生の奨学金やキャリアデザイン、課外活動のサポート、入学関連業務や広報に関わりました。また、物質生命理工学科の学科長として、大学執行部と教員のパイプ役も担いました。これらのキャリアと経験を、今回の職務に活かしていきます。

「高大連携の実質化」「留学生の受け入れ強化」にも取り組みたい

これから注力したい取り組みが2つあります。

1つ目は、高校との連携強化です。近年、上智大学はカトリック高校と積極的に高大連携協定を締結してきました。今後は、この連携をより実質的なものにしたい。例えば、IT教育の教材開発や探究学習の方法を検討するなど、新たな教育システムを高校の教員と協力して考えていきたいですね。

2つ目は、外国人留学生の受け入れ強化です。アジアから優秀な人材を積極的に受け入れ、日本や世界で活躍できる人材を育成したいと考えています。「日本で学んで母国に帰国してもらう」のではなく、入学からキャリア形成まで一貫した支援体制を構築し、安心して日本で学び、就職できる環境を整備する。そして、これらの取り組みを海外に広く発信し、アジアの優秀な学生に上智大学への関心を高めてもらいたいと考えています。

加えて、他大学や企業と連携し、コンソーシアムを設立したいという考えもあります。まずは、そのための基盤を整え、どのような形態のコンソーシアムが最適かを議論していきます。

上智大学の魅力は“多様性を育む学びの場”であること

冒頭で大学の魅力向上について述べましたが、私自身は、上智大学の最大の魅力は「隣人性と国際性の涵養」という理念に基づいた、多様性を育む学びの場であることだと感じています。

さまざまな国から多様な背景を持つ学生が集うキャンパスは、決して広くはありませんが、それゆえに互いを尊重する「隣人性」が育まれます。多様な考え方や文化に触れることで、固定観念にとらわれず、柔軟な思考力とコミュニケーション能力を養うことができます。このような環境に身を置くことは、自己のアイデンティティの確立につながり、自身の考えを発信する語学力も磨かれるでしょう。

本学に興味を持たれた高校生には、実際のキャンパスを見学していただきたい。上智大学は毎年、夏休みにオープンキャンパスを開催しています。体験授業やキャンパスツアーなど、さまざまな企画を用意しており、現役大学生と交流する機会も設けています。ぜひ事前予約をして参加し、自分の目で上智大学の魅力を発見してもらえればと思います。