2020年10月6日から10月24日まで、「国連の活動を通じて世界と私たちの未来を考える」をコンセプトに「上智大学国連Weeks October, 2020」が開催されました。
コロナ禍のため、プレ企画を含め、全ての企画がオンラインでの開催となりましたが、日本全国並びに海外から延べ約2,200人以上の方々が参加されました。

【プレ企画】シンポジウム ILOグローバルセミナー「デジタル経済における仕事のより輝かしい未来に向けて」

国連Weeksのプレ企画として、9月30日に、ILOグローバルセミナー「デジタル経済における仕事のより輝かしい未来に向けて」が上智大学と国際労働機関(ILO)主催で行われ、世界各国から260人余が参加しました。南アフリカ出身のノッツィフォ・シャバララ氏の総合司会で始まり、続く挨拶で曄道佳明学長が、大学としてのICT人材育成の責任と課題を述べました。

急速なデジタル化の中で情報通信技術(ICT)分野の高度人材の育成、ICT高度人材の国境を越えた活躍のために何が必要かなど、ILOが7カ国で実施した調査報告に基づき各国からの出席者が議論。最初にドイツのEconomix Research & Consultingの二コラ・デュル氏による「ICT分野における能力開発と人の移動」、続いて、井内雅明厚生労働省総括審議官から「我が国におけるICT人材の活用と人材開発施策の現状」と題した基調講演が行われました。

パネルディスカッションでは、調査参加国と日本のゲストが人材育成、移民政策などの課題を論じ、聴衆からの質問に応じました。総括で浦元義照上智大学教授は謝辞と共に、ICTをSDGsの達成に有効活用する必要性に言及し、成功のうちに閉会しました。

シンポジウム「グリーン復興のためのライフスタイルを考える ~ウィズコロナとSDGs~」

10月6日、上智大学と国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、環境省、地球環境パートナーシッププラザの共催により、「グリーン復興のためのライフスタイルを考える~ウィズコロナとSDGs~」を開催しました。UNU-IASの山口しのぶ所長と杉村美紀グローバル化推進担当副学長の開会挨拶の後、4人の発表者が最新の動向やそれぞれの取り組みについて発表しました。

UNU-IAS客員リサーチ・フェローのスニータ・スブラマニアン氏は、私たちの暮らしはさまざまなもの相互依存関係の中で成り立っており、各分野が協力し、統合的な解決方法が必要であると述べました。

共同通信の編集委員・論説委員の井田徹治氏は、熱帯雨林の破壊や気候変動により人間と野生生物の接触機会が増え、動物由来感染症が拡大していると指摘。自然界に対するアプローチを変える必要があると語りました。

後半セッションでモデレーターを務めた 井上直己 地球環境学研究科准教授

神戸大学大学院生の後藤聡美氏は、さまざまな課題と自分との関係を「当事者性」という考え方で捉え、あらゆる人が当事者性を変化させながら多様な社会問題を解決させる主体になっていくと述べました。

環境省大臣官房総合政策課長の永島徹也氏は、気候変動やコロナ禍などの危機に対応するにはグリーンな復興を目指す必要があると述べ、脱炭素社会・循環経済・分散型社会の「3つの移行」で社会を再設計するという環境省の取り組みを紹介しました。

後半のセッションでは、冒頭、モデレーターの井上直己地球環境学研究科准教授が、地元の有機野菜の支援を通じた地域循環やコミュニティの再生への取り組みを紹介。続いて行われたパネルディスカッションでは、ライフスタイルの変革を定着させるための方策や新たな生活様式を取り入れる上での課題などを話し合いました。

最後に、司会を務めたUNU-IASシニアプログラムコーディネーターの渡辺綱男氏が、我々のライフスタイルを見直し、地球環境とのより良い関係を取り戻すことの必要性を訴え、閉会しました。

シンポジウム 国連75周年企画「グローバル課題の解決に向けたグローバルな行動~感染症、地球温暖化、軍事紛争」

10月12日、国連創設75周年を記念し、国連75周年記念担当国連事務次長のファブリツィオ・ホスチャイルド氏を招いて、シンポジウム「グローバル課題の解決に向けたグローバルな行動~感染症、地球温暖化、軍事紛争~」を開催。海外からのアクセスも含め、約400人が参加しました。

ホスチャイルド氏は基調講演で、国連総会中の9月21日に、世界中の国家の指導者がオンライン上で感染症や気候変動について議論したことを紹介。感染症は健康と経済に影響を与え続け、気候変動は地球に大きな被害を与えており、また、超大国間の摩擦や孤立主義が台頭しているなど、国連が重視する多国間協調主義が後退している現状を語りました。

国連事務次長のホスチャイルド氏(右)と本シンポジウムを企画した東大作グローバル教育センター教授

続いて、国連75周年事務局のセシリア・カノン氏が、全加盟国で行われ、100万人以上の回答を得た国連に関する調査の結果を報告。カノン氏は、上智大学から1,727の回答があったことに謝意を示し、回答の集計結果を中心に解説しました。国際社会がパンデミック後に最優先とすべき事項として、上智大学の回答者は「医療へのアクセス」を一番に挙げましたが、これは海外でも同じ傾向でした。また、今後25年間に求められる事項として、上智大学では「紛争の減少」を挙げ、これは日本全体の回答も同様の傾向でしたが、一方海外では「環境保全」を最優先課題と考えているとの説明がありました。

さらに、上智大学を含むアジアの学生がホスチャイルド氏に環境保全や平和構築などについて質問。事前に寄せられた質問と合わせ、ホスチャイルド氏は一つ一つに丁寧に回答しました。

最後に、このシンポジウムを企画した東大作グローバル教育センター教授は、日本が国家間対話の中心的役割を担う必要があると述べたほか、私たち個人も連携することで、国際的課題の解決に何らかの貢献ができるのではないかと語りました。ホスチャイルド氏も世界中の若者がさまざまな課題に関わっていくことを期待すると述べ、シンポジウムを締めくくりました。

講演会「国際協力人材育成センター第26回『国連職員と話そう!』~上智で見つける、国際協力への道」

10月16日、上智学院が出資してタイのバンコクに設立されたSophia Global Education and Discovery Co. Ltd. (Sophia GED) の代表取締役を務める廣里恭史グローバル教育センター教授を招いて、国際協力人材育成センター『国連職員と話そう!』シリーズの一つとして講演会を開催しました。

廣里恭史教授(左)とモデレーターの植木安弘教授

前半は、元アジア開発銀行主席教育専門官の経歴を持つ廣里教授が登壇し、発展途上国の教育開発や人材育成に携わってきた自身のこれまでのキャリアを紹介。そして、「夢」と「使命感」を組み合わせることにより「高揚感」を持って国際協力への道を目指し、最高の人生を送ってほしいと語りました。

後半は、国際協力人材育成センター所長の植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授をモデレーターとして、延べ140人近くの参加者からの質問に答える形で議論が進められました。質問は、「国際機関に勤めるには留学が必要か」「人生に影響を与えた経験は何か」など多岐に及びました。最後に高校生からの質問に答え、廣里教授から「相手の立場、支援される側の視点に立つことが大切」というメッセージが伝えられました。

講演会&セッション オンラインによるキャリア・セッション「国際機関、国際協力キャリア・ワークショップ」

10月19、20日の2日間にわたり、国際機関や国際協力分野でのグローバルキャリアのすすめについての講演およびキャリア・セッションが開催されました。

初日ははじめに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表のカレン・ファルカス氏が「UNHCRで働くということ~私の人生の選択 難民とともに」と題して基調講演を行い、国際協力分野を目指す学生へメッセージを送りました。

その後、植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授がモデレーターを務め、キャリア・セッション1から3を実施しました。セッション1ではファルカス氏と国連世界食糧計画日本事務所代表の焼家直絵氏が、セッション2では国連人口基金東京事務所長の佐藤摩利子氏と同アジア太平洋地域事務所人口高齢化と持続可能な開発に関する地域アドバイザーの森臨太郎氏が登壇。セッション3ではニューヨークから国連政治平和構築局アジア・太平洋部長の山下真理氏、および広島から国連訓練調査研究所広島事務所長の隈元美穂子氏が登壇しました。

2日目は、キャリア・セッション4から6を実施。セッション4は植木教授、セッション5は山﨑瑛莉グローバル教育センター講師、そしてセッション6では小松太郎総合人間科学部教育学科教授がモデレーターを務めました。セッション4には国連開発計画駐日代表の近藤哲生氏と経済協力開発機構東京センター所長の村上由美子氏が、セッション5にはアフリカ開発銀行アジア代表事務所所長の花尻卓氏と世界銀行グループ駐日特別代表の宮崎成人氏が登壇。セッション6には一般社団法人海外コンサルタンツ協会顧問の高梨寿氏と公益社団法人日本ユネスコ協会連盟事務局長の川上千春氏が登壇しました。

登壇者はそれぞれに所属機関の活動内容やこれまでの自身のキャリアなどを話し、その後参加者からの数多くの質問に答えました。参加者からは「自分の中で漠然としていた国際協力のイメージが広がり、将来が微かだが見通せてきた」「普段は聞くことができないような話を一度にたくさん聞くことができ、貴重な経験となった」などの感想が寄せられました。

講演会「環境問題と科学技術」

10月22日、理工学部主催の講演会「環境問題と科学技術」が開催されました。

はじめに、陸川政弘理工学部長から開会の挨拶があり「国連が掲げるSDGsに対して、我々理工学部の研究がいかに貢献できるかを考える機会としたい」と述べました。

続いて、物質生命理工学科の鈴木伸洋准教授および木川田喜一教授が講演。両教授は、それぞれの専門分野である植物と環境の相関(鈴木准教授)や、環境分析の手法(木川田教授)などの観点から、研究結果を踏まえて報告しました。

上段右から、露崎史朗教授(北海道大学)、神澤信行教授(上智大学)、ピエール・デ・ウィット博士(ヨーテボリ大学)

次に、招待講演として北海道大学大学院環境科学院の露崎史朗教授が、湿原の自然に対する役割などについて発表しました。また、スウェーデンのヨーテボリ大学理学部海洋学科のピエール・デ・ウィット博士も現地から参加し、人間の活動が海洋環境に与える影響について講演しました。

その後、物質生命理工学科の神澤信行教授が司会を務め、討論が行われました。科学技術が環境保全に対して果たす役割について、参加した教授らは「正しいデータや情報を提供し、未知なる点を明らかにしつつ地球を救うこと」などと答えました。

最後に、物質生命理工学科の齊藤玉緒教授が閉会の挨拶として「多分野にまたがる環境問題に対して、全ての学部が一つのキャンパスにある上智大学の強みを活かし、学部の垣根を越えて取り組んでいきたい」と振り返りました。

シンポジウム 緒方貞子先生メモリアルシンポジウム「多国間主義と人間の尊厳を求めて」

10月24日の「国連デー」に、昨年10月に逝去された上智大学名誉教授の緒方貞子先生のメモリアルシンポジウムとして、「多国間主義と人間の尊厳を求めて」が開催され、国内外から約1200人がオンラインで参加しました。かつて緒方先生の部下で国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏をはじめ、4人のパネリストが登壇しました。

 

グランディ国連難民高等弁務官

冒頭、曄道佳明学長が登壇し、「『誰一人取り残さない』という国連の持続可能な開発目標は、上智大学の教育精神と合致するもの。今回のシンポジウムはもちろん、上智大学の教育研究活動がより良い世界の実現に貢献していきたい」と語りました。

続いて、国連広報センター所長の根本かおる氏が、アントニオ・グテーレス国連事務総長の国連デーメッセージと、緒方先生を師と仰ぐ国連事務次長兼軍縮担当上級代表の中満泉氏のビデオメッセージを紹介しました。グテーレス事務総長は「国連は皆さんのものであり皆さん自身でもあります。国連憲章の揺るぎない価値観を一緒に守ろう」と訴えました。中満事務次長はリーダーに必要な4つの資質を挙げ、「それぞれの場でリーダーとなり未来を創る変革の大きな力になってください」と参加者に呼びかけました。

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上智大学 Sophia University