2006年度上智大学シラバス

2006/02/24更新
◆日本史特講(古代史)Ⅰ - (前)
北條 勝貴
○科目サブタイトル
卜占と〈祟り〉の古代文化論
○講義概要
日本古代の宗教文化を考えるうえで、〈祟り〉という言葉・概念の持つ意義は大きい。映画や演劇を通じて近世の怪談に親しんだ現代人にとって、それはマイナス価値の最たるものであり、常に恐怖の印象をもって語られている。しかし、折口信夫や柳田国男の明らかにしたように、その原義タツは「神もしくは神の意図が現れる」意味にすぎず、災禍をアプリオリに指示する言葉ではなかった。このような語彙の変化は、どのようにして生じたのだろうか? そこには、古代中国における文字の出現にまで遡る、長大な歴史の水脈が隠れているのである。祟りと密接な関わりを持ち、やはり現代に強固な位置を保つ占いの展開も踏まえ、アジア的視野から考察してゆきたい。
○評価方法
出席状況(20%)、リアクションペーパー(30%)、レポート(50%)
毎回提出してもらうリアクションペーパー、学期末のレポートを重視して評価する。
○テキスト
必要な資料は毎回配布する。
○参考書
授業の進行に即して適宜指示・紹介する。
平勢隆郎『よみがえる文字と呪術の帝国―古代殷周王朝の素顔―』中公新書、2001年
斎藤英喜『アマテラスの深みへ―古代神話を読み直す―』新曜社、1996年
工藤浩『新撰亀相記の基礎的研究―古事記に依拠した最古の亀卜書―』日本エディタースクール出版部、2005年
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1ガイダンス:〈祟り〉と日本文化
2〈祟〉の創出―殷王朝の卜占と甲骨―
3卜官/史官の実践―周王朝の卜占と銘文―
4〈咎〉の展開―戦国楚〈卜筮祭祷簡〉の世界―
5〈玉霊〉としての亀―『史記』亀策列伝と卜占の一般化―
6六朝隋唐期における卜占の多様化
7日本古代における卜占の受容
8〈祟り神〉の誕生1―自然災害としての〈祟り〉―
9〈祟り神〉の誕生2―古墳寒冷期の史的意義―
10〈祟り神〉言説の地域的多様化1―交通災害としての〈祟り〉―
11〈祟り神〉言説の地域的多様化2―英雄譚と神殺し―
12卜部の宗教的実践1―『新撰亀相記』と『亀経』―
13卜部の宗教的実践2―御体御卜と〈祟り〉の選定―
14御霊信仰への道程
15まとめ

  

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