2005年度上智大学シラバス

◆薬物と脳神経 - (前)
熊倉 鴻之助
○講義概要
人類はその誕生以来、いつも「毒」が身近にあった。食物の採取や狩猟の中での長い試行錯誤の結果として、食べられるものと食べられないものを知り、「薬」と「毒」を使い分けることを知った。矢毒のように狩猟に利用する以外にも、歴史を見ると毒殺のように、人間はしばしば「毒」によって内面をさらけ出している。それが、「毒」という言葉の持つ妖しい魅力となってもいる。その一方で脳の理解を目指す科学者は、脳の働きに良くも悪くも影響する「薬」や「毒」から、脳の仕組みについて実に多くを学んでいる。その働きに脳の仕組みを映し出す「毒」には、人間の内面を映し出す「毒」とはまた異なる、科学的な面白さがある。この講義では、まず「薬」や「毒」と人間の関わりに触れ、次いでこれらの薬物が映し出す脳神経系の仕組みについて、初歩的な理解を目指す。
○評価方法
出席状況(20%)、前期学期末試験(定期試験期間中)(80%)
○テキスト
熊倉鴻之助『薬物と脳神経 講義資料集』 私製CD-R版・各年度配布
○参考書
小林 繁、熊倉鴻之助、黒田洋一郎、畠中 寛 共著『絵とき 脳と神経の科学』オーム社・1997年
SOLOMON H.SNYDER 著・佐久間 昭 訳『SCIENTIFIC AMERICAN LIBRARY 5
脳と薬物』東京化学同人・1990年
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1序章 
第1章 薬とは何だろうか
Ⅰ.薬の語源・毒の語源
2Ⅱ.くすりの歴史
3Ⅲ.いろいろな毒物
4Ⅳ.毒から薬へ
5第2章 脳と神経の科学
Ⅰ.生体機能の調節と脳
Ⅰ-1)生物は刺激応答系
6Ⅰ-2)脳と神経細胞
7Ⅰ-3)脳の機能局在
8Ⅱ.神経系の働き
Ⅱ-1)ニューロンの形と機能
9Ⅱ-2)ニューロンの通信方法:(1)電気シグナル
10Ⅱ-2)ニューロンの通信方法:(2)化学シグナル
11Ⅱ-2)ニューロンの通信方法:(3)「毒」が教えるニューロンの仕組み
12Ⅱ-3)シナプス伝達と機能調節
13Ⅱ-4)シナプス伝達と薬物の作用

  

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