○講義概要 |
人類はその誕生以来、いつも「毒」が身近にあった。食物の採取や狩猟の中での長い試行錯誤の結果として、食べられるものと食べられないものを知り、「薬」と「毒」を使い分けることを知った。矢毒のように狩猟に利用する以外にも、歴史を見ると毒殺のように、人間はしばしば「毒」によって内面をさらけ出している。それが、「毒」という言葉の持つ妖しい魅力となってもいる。その一方で脳の理解を目指す科学者は、脳の働きに良くも悪くも影響する「薬」や「毒」から、脳の仕組みについて実に多くを学んでいる。その働きに脳の仕組みを映し出す「毒」には、人間の内面を映し出す「毒」とはまた異なる、科学的な面白さがある。この講義では、まず「薬」や「毒」と人間の関わりに触れ、次いでこれらの薬物が映し出す脳神経系の仕組みについて、初歩的な理解を目指す。
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○評価方法 |
出席状況(20%)、前期学期末試験(定期試験期間中)(80%)
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○テキスト |
熊倉鴻之助『薬物と脳神経 講義資料集』 私製CD-R版・各年度配布
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○参考書 |
小林 繁、熊倉鴻之助、黒田洋一郎、畠中 寛 共著『絵とき 脳と神経の科学』オーム社・1997年 SOLOMON H.SNYDER 著・佐久間 昭 訳『SCIENTIFIC AMERICAN LIBRARY 5 脳と薬物』東京化学同人・1990年
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○授業計画 |
1 | 序章 第1章 薬とは何だろうか Ⅰ.薬の語源・毒の語源 |
2 | Ⅱ.くすりの歴史 |
3 | Ⅲ.いろいろな毒物 |
4 | Ⅳ.毒から薬へ |
5 | 第2章 脳と神経の科学 Ⅰ.生体機能の調節と脳 Ⅰ-1)生物は刺激応答系 |
6 | Ⅰ-2)脳と神経細胞 |
7 | Ⅰ-3)脳の機能局在 |
8 | Ⅱ.神経系の働き Ⅱ-1)ニューロンの形と機能 |
9 | Ⅱ-2)ニューロンの通信方法:(1)電気シグナル |
10 | Ⅱ-2)ニューロンの通信方法:(2)化学シグナル |
11 | Ⅱ-2)ニューロンの通信方法:(3)「毒」が教えるニューロンの仕組み |
12 | Ⅱ-3)シナプス伝達と機能調節 |
13 | Ⅱ-4)シナプス伝達と薬物の作用 |
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By:上智大学学事部学務課
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