2006年度上智大学シラバス

2006/03/01更新
◆産業論特講Ⅱ - (後)
柳本 信一郎
○科目サブタイトル
航空産業論
○講義概要
ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功したのが1903年。現代の社会は航空機なしには成り立たない。航空産業は平和でなければ成り立たないのに航空技術の進歩は2度の大戦に負うところが大きい。現代の航空会社は航空燃料の高騰、テロ、イラク戦争、SAARなどにより大打撃を受けている。本講義は航空機が世界を自由に、そして安全に飛び回われる仕組み、制度やルール、問題点を取り上げる。航空機事故、その原因と賠償責任。航空運賃の仕組みと市場メカニズム、空港問題、規制緩和、パイロット、客室乗務員、総合職、旅行会社と日本旅行業協会、航空会社の流通戦略であるGDS/CRSなど13回に亘って航空産業の実態を俯瞰する。ベテランや現役の専門講師も招聘する。課外授業として日航羽田整備工場を企業訪問する。
○評価方法
出席状況(10%)、レポート(30%)、後期学期末試験(定期試験期間中)(60%)
○参考書
日本航空広報部編『航空実用事典』朝日ソノラマ 1997年5月30日
杉浦一機『空港ウォーズ改訂版』中央書院 1999年9月10日
諸星廣夫『航空機事故はなぜ起きる
元日航機機長の警告』エール出版社 2003年2月1日
○必要な外国語
英語
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1航空産業論概要
世界中の航空機が各国を自由に、かつ安全な運航するための航空条約や協定、ICAO国際航空機構、IATA国際民間航空協会、航空運賃、航空規制緩和、空港問題、航空事故、パイロット、客室乗務員、総合職、旅行会社とJATA、流通機構GDS/CRS、企業見学など14回に亘って行われる講義の概要を説明する。
2航空産業発展の歴史
1903年に人類初飛行をライト兄弟が成し遂げてから103年。人類は事故や戦争など様々な試練を乗り越えて今日航空機の便利さや快適さを享受している。ここでは航空産業発展の歴史を考察する。
3航空協定と国際機関
航空機が各国間を安全に飛ぶことが可能になったルール、通商航海条約に基づく航空条約、航空協定を取り上げ、国家間の取り決めを行う国連の専門機関のICAO、国際民間航空会社の協会であるIATAの役割を学ぶ。
4空港
何故日本の空港の着陸料は世界一高いのだろうか。日本には96も空港がありながら、何故ハブ拠点空港が一つもないのだろうか。目標追求型の欧米・アジア各国に対し需要追従型の日本の政策の相違点を探る。英国から始まった航空規制緩和は空港にも及ぶ。空港民営化によるメリットを探る
5航空規制緩和
1978年にカーター大統領が提唱して始まった。基本的に新規参入は自由、航空局の廃止まで行う徹底したものであった。その結果アメリカでは約200社が参入して同数の会社が倒産合併を繰り返し消えていった。激しい生存競争を勝ち抜いた大手7社も4社が会社更生法を受け、財務体質は悪化、機材の更新が出来ず経年機が増加。安全性が懸念される。
6航空運賃と市場メカニズム
世界中の航空運賃はIATAが取り決め、各国政府が認可する公示運賃である。基本となる普通運賃の仕組み、決定方法を学び、市場に出回る格安航空券の実態を探る。
7会社の経営と労使関係、総合職と仕事内容。
日本と世界の航空会社の経営実態と労使関係を見る。現役の卒業生が総合職を語る。
8パイロット
5年前に比較文化学科を卒業した現役パイロットが語る体験談と業務の紹介。
9客室乗務員
長い国際線勤務の経験から得た元チーフパーサーと現役ソフィアンによる貴重な体験談と国際人のマナーとは。
10航空事故と賠償責任
航空事故の原因はパイロットミス66%、航空機欠陥14%、気象10%、整備3%、空港管制3%。事故の80%は離着陸時の11分間に集中。事故統計や事例から教訓を得、何故事故がなくならないのか、講師の体験を含めその原因を探る。
11旅行会社と日本旅行業会JATA
航空券の大多数はIATAの公認航空会社が発券する。業界に占める旅行会社の役割や規模。業界の発展を側面から支えるJATAの役割を紹介する。
12CRS/GDS、航空業界と流通
航空会社の予約、運賃計算と発券、その他の複合的サービスを担うコンピューターシステムがGDS/CRS。流通機構の重要な一角を占め、激しい競争に打ち勝つために不可欠な販売手段を紹介。
13航空産業論纏め
13回の講義のまとめ。最後に航空会社と高速鉄道、新幹線やフランスのTGVとの競合と住み分け。料金、時間、快適性から両交通機関の比較を試みる。
14特別講義 企業見学 
授業以外に、企業見学会として希望者に日本航空の羽田整備工場の見学会を開催する。

  

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