2006年度上智大学シラバス

2006/02/24更新
◆社会学史Ⅱ - (前)
井腰 圭介
○講義概要
社会学史Ⅰでは、古典を著者の生活史と関連づけ、社会学の形成過程を生きた具体的な諸個人が固有の問題意識に基づいて利用可能な知的資源を組み換えた歴史的過程として検討した。Ⅰの受講者を前提にしたⅡでは、社会学のなかでの「実証主義と理念主義」という2つの発想の系譜のかかわりを軸にして、現代社会学への展開過程を辿ることにしたい。具体的には、2つの系譜の接点で生じた方法論に関わる論争の紹介を中心にして進めていく。Ⅰと同様にⅡでも、社会学史を単に過去を記憶のための知識としてではなく、「今ここ」で社会学的思考の系譜に参画しようとする受講者の社会学的想像力を刺激する資源とすることが、この講義の目的である。
○評価方法
リアクションペーパー(40%)、レポート(60%)
授業の最後にコメント(リアクションペーパー)の提出を求める。この提出は任意だが、授業への積極的な参加を促す措置であるので、この提出結果を評価資料として使用する。
○テキスト
『使用せず、適宜プリントを配布して進める。』
○参考書
その他の参考文献は開講時にプリントにして配布する。
富永健一『現代の社会科学者』講談社現代文庫
内田隆三『社会学を学ぶ』ちくま新書,2005
○必要な外国語
英語
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1講義の目的と進め方の前提
 ①「社会学」の捉え方と「学史」の捉え方の問題
 ②「歴史的現実」と社会学の関係―知識の働きと歴史的社会関係
2実証主義と理念主義という対比軸の設定
 ①2つの系譜の特徴と索出的意義
 ②研究における問題設定と方法の関連性
3初期社会学の問題設定と方法の特性(1)
 ①啓蒙主義と現実の意識化の進展
 ②自然科学の興隆と法則の探究
4初期社会学の問題設定と方法の特性(2)
 ①自然に対する精神の強調と自覚の昂進
 ②法則と規範/歴史と価値の未分離状態
5実証主義と理念主義の争点1
 ①認識の客観性論争と価値自由の問題
 ②政策と科学
6実証主義と理念主義の争点1(続き)
 ①行為者の視点と観察者の視点
 ②経験と観察と記録
7確立期の社会学の問題設定と方法の特性(1)
①モノとしての社会的事実
 ②制度と事実
8確立期の社会学の問題設定と方法の特性(2)
①意味としての歴史
 ②行為と事実
9実証主義と理念主義の争点2
 ①タルコット・パーソンズの試みとその広がり
 ②経験と事実と概念の関係
10実証主義と理念主義の争点2(続き)
 ①アルフレッド・シュッツの試みとその広がり
 ②科学的事実と当事者の世界の問題
11展開期の社会学の問題設定と方法の特徴(1)
 ①理論と調査という設定の明確化
 ②方法の標準化と科学批判の展開
12展開期の社会学の問題設定と方法の特徴(2)
 ①認識と実践の関係の再検討
 ②当事者と社会学者の位置関係
13全体総括―経験の認識と社会関係
 社会学の展開過程を実証主義と理念主義という軸に照らして見ることで、社会学に問われていることが何であるかを問題提起する。

  

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