2005年度上智大学シラバス

◆社会学史Ⅰ - (前)
井腰圭介
○講義概要
この講義では、社会学的な見方を応用して社会学の形成過程を検討する。具体的には、歴史的状況下で展開されてきた人間の認識行為の成果として、所謂「古典的著作」をデータとして位置づけ、どのような歴史的・社会的条件のなかで著作が書かれたかを個人史をもとに辿り、社会学と呼ばれる学問体系の形成過程を再構成する。社会学は研究対象である歴史的な社会の状況と密接不可分に連動しつつ形成されてきたことを理解することで、社会学史を単なる過去の話としてではなく、「今ここ」で生き、社会学的思考の系譜に参画しようとする受講者自身の社会学的想像力を刺激するひとつの知的資源として紹介することが、この講義の目的である。
○評価方法
リアクションペーパー(40%)、レポート(60%)
リアクションペーパーの提出は義務ではないが、授業に対する積極的な受講姿勢を確保し、記載された質問には翌週の授業で回答する形をとって双方向性を高めるために利用する。実質的な参画度の評価資料として重視する。
○テキスト
『使用せず、プリントを配布して進める。』
○参考書
『開講時に別途プリントにして紹介する。』
○必要な外国語
英語
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1講義の目的
 ①「社会学」の特徴と面白さ
 ②「社会学」の形成史の捉え方
2共同体の再編と秩序再建の学としての「社会学」の誕生
 ①近代社会の形成過程の社会学的説明---機械的連帯から有機的連帯へ
 ②「社会学の父」オーギュスト・コントの生活史
3産業化の昂進と経験的現実への接近
 ①衛生問題・社会改良運動と社会踏査の発達
 ②調査記録における調査者の視点と被調査者の視点
4市民社会の形成と歴史の相対化
 ①カール・マルクスの生活史
 ②社会分析における概念の働き
5小括1:社会状況と思考法の連関
 「社会学」が現在あるような形になるためには、どのような条件が必要だったのだろうか。初期社会学の実践的性格とその歴史的限界を整理する。
6確立期の社会学(1)
①デュルケムの生活史
 ②道徳の実証科学:『自殺論』の特質と意義
7確立期の社会学(2)
③規範の生成根拠:『宗教生活の原初形態』
 ④「認識と社会」:デュルケム社会学の意義
8小括2:実証主義的思考法とその課題
  社会現象を捉える重要な概念としての「制度」の考え方を、現在の社会状況に照らして検討することで、確立期以後の新たな課題を検討する。
9確立期の社会学(3)
①19世紀末の歴史的状況と生の哲学
 ②マックス・ヴェーバーの生活史
10確立期の社会学(4)
 ③理解社会学の特徴:『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
 ④「理念と利害」:ヴェーバー社会学の意義
11小括3:理念主義的思考法とその課題
  社会現象を捉える重要な概念としての「意味」の考え方を、現在の社会状況に照らして検討することで、確立期以後の新たな課題を検討する。
12確立期以後の歴史的展開と社会学の対応
 ①「認識と社会」に関する論点
 ②「理念と利害」に関する論点
13全体総括
  歴史に制約されながら人間的願望に基づいて形成されてきた学史を振り返りながら、私たちは何を今社会学に期待できるかを問題提起する。

  

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