2005年度上智大学シラバス

◆日本社会福祉発達史 - (後)
宇都栄子
○科目サブタイトル
社会的協同のシステム形成のあゆみ
○講義概要
近代以前の日本社会では、病気、老齢、罹災等によって生活困難となった場合、家や村等による相互扶助や、為政者や宗教家による慈善的発想による救済が行われました。近代に入ると、人びとは共同体の拘束を離れ自由を手に入れましたが、失業、疾病、障害等による生活不安が待ちうけ、従来までの生活保障方式では対応しきれなくなり、「社会福祉」と呼ばれる生活保障制度を形成してきました。本講義では、社会福祉前史としての慈善救済についてふれ、さらに感化救済事業、社会事業、社会福祉の形成展開過程についてふれ、日本の社会福祉の特質について考えます。
○評価方法
出席状況(30%)、レポート(70%)
○参考書
菊池正治・清水教惠・田中和男・永岡正己・室田保夫編著『日本社会福祉の歴史 付・史料』ミネルヴァ書房・2003
右田紀久恵・高澤武司・古川孝順編著『新版 社会福祉の歴史 政策と運動の展開』有斐閣・2001
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1社会福祉研究における歴史研究の意義について
 「社会福祉とは何か」を理解する方法として、社会福祉の形成展開過程を たどることの意義について考えます。
2近代以前の慈善・救済
 前近代社会における貧困者救済(家や村などによる相互扶助や、為政者や 宗教家による救済)ありかた、その特質についてふれます。
3近代国家の形成と慈善救済事業
 近代社会に入り、人びとは自由の獲得と同時に貧困等の生活不安に対しても自ら立ち向かわなくてはなりませんでした。これへの政府の対応、民間慈善救済事業の形成についてふれます。
4産業革命期と慈善救済事業
 産業革命の達成と同時に貧困問題も社会問題化します。公的救済策の改革の動き、民間慈善救済事業の活動の実際についてふれます。
5日露戦争後の感化救済事業
 感化救済事業という公的救済の性格、その中での民間慈善救済事業の活動の実際についてふれます。
6第一次世界大戦後の社会と社会事業の成立
 大正中期から後期にかけて成立した日本社会事業成立の社会的背景、その特質についてふれます。
7昭和恐慌と社会事業の展開
 世界恐慌下、発生した失業・親子心中・被虐待児童・欠食児童等の社会問 題とそれらへの対応策としての社会事業施策の展開についてのべます。
8日中・太平洋戦争と戦時厚生事業
 社会事業は、戦時下のなかで「戦時厚生事業」へと変質します。戦時厚生 事業の特質と、その中での民間社会事業の苦悩についてふれます。
9戦後改革と社会福祉体系の確立・展開
 敗戦後の社会問題と、占領軍の主導のもと行われた戦後改革と社会福祉制度の形成過程についてふれます。
10高度成長政策の展開・破綻と社会福祉の展開
 高度成長政策の進展の中で生じた社会問題への対応として社会福祉も変化 していきます。その過程について学びます。
11第二の社会福祉改革と社会福祉の展開
 少子・高齢社会の中で、ゴールドプラン、エンゼルプラン、介護保険制度が登場、社会福祉の基礎構造改革が行われ、戦後第二の社会福祉改革が行われます。これらを通して現代社会福祉の特質について考えます。
12社会福祉の歴史から学ぶこと
 最後に日本の社会福祉の形成展開過程から何を学ぶかについて考えてみます。
13予備日
 以上の授業計画が予定通りに進展しないことが予想されますので、予備日を設けます。

  

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