2005年度上智大学シラバス

◆訴訟実務基礎(民事) - (後)
小林 秀之,足立謙三
○講義概要
 民事訴訟実務においては,当事者の主張から,どのような事実が法的に重要な事実(要件事実)であるかを分析して,これを論理的に組み立てていくことが有用であるが,そのための基本的な知識や思考方法を習得させることにより,事実分析力,論理的思考力等の養成に努めるとともに,実務についての基礎的な理解を深めさせて,民法や民事訴訟法における理論と実務との架橋を図る。また,争いのある事実については,その存否の確定(事実認定)が実務上重要であるが,これについても基本的な知識や基礎的内容に関する理解を深めさせる。
(小林秀之講師)授業については、理論的な色彩が強い部分について,実務にも通じた民事法の研究者としての立場から,初回の導入部分についてのみ担当する。
(足立謙三講師)授業は、基本的な事例(当事者の言い分を記載したもの)を題材にして講義形式で行うが、随時、学生に質問し、報告・回答を求め、討議する等し、あるいは演習方式で、簡単なペーパーを提出させたりして、演習問題について解答させ、講評するなどしながら行う。実務的な色彩が強いため、最初を除き、すべて担当し、実務上形成されてきた考え方に基づいて指導する。
○評価方法
 期末の試験を中心とし,これに授業中の報告や問題演習の解答を加味して総合評価する。
○テキスト
司法研修所編『問題研究要件事実―言い分方式による設例15題』 (法曹会)
司法研修所編『民事演習教材』 (司法協会)
司法研修所編『民事演習事実認定教材―貸金請求事件』 (司法協会)
○参考書
司法研修所編『紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造』(法曹会)
司法研修所編『民事訴訟における要件事実 第1巻』(法曹会)
司法研修所編『民事訴訟における要件事実 第2巻』(法曹会)
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1導入のための授業
 前半は、紛争解決のための民事訴訟の意義等について、研究者としての立場から導入のための授業をし、後半は、足立裁判官が、民事訴訟における要件事実論等に関し,実務家としての立場から入門的な概説をし、その導入を行う。
 なお、各回の授業の詳細については、初回授業で連絡する。
2民事訴訟の基本構造
 民事訴訟の基本構造に関し、民事訴訟の実質的構造、訴訟物の意義と機能、請求原因、抗弁、再抗弁の意義とその働きなどについて総論的な検討を行う。
3要件事実の基礎その1 
売買代金請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討する。伏せて、要件事実に関する諸問題(主要事実と間接事実の区別、法律上の推定、規範的要件等)についても検討し、要件事実の意義や機能を具代的に修得させる。
4要件事実の基礎その2 
賃金請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討し、売買型と賃貸型の契約の差異、貸借型の契約の特長について理解させる。
5要件事実の基礎その3
 所有権に基づく土地明渡し請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討し、物件的請求権一般、所有権に関する権利自白の活用等について修得させる。
6要件事実問題演習その1
 所有権に基づく不動産明渡し請求を題材に、所有権訴訟の典型的な攻撃防御法を検討し、対抗要件の抗弁、所有権喪失の抗弁の2類型を題材に、理解を深めさせる。
7要件事実問題演習その2
 所有権に基づく登記手続請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討し、登記訴訟一般、登記制度等について、理解を深めさせる。
8要件事実問題演習その3
 所有権に基づく所有権移転登記手続請求について、所有権移転登記手続請求、抵当権設定登記抹消登記手続請求の典型的な攻撃防御方法を検討する。
9要件事実問題演習その4
 賃貸契約終了に基づく建物明渡し請求を題材に、訴訟物の捉え方、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討する。
10要件事実問題演習その5
 賃貸借契約終了に基づく建物明渡し請求を題材に、期間満了を終了原因とする場合に、借地借家法により民法の原則が修正され、要件事実も修正されることや、更新拒絶の正当事由等を例に、規範的要件の意義、内容等について検討する。
11要件事実問題演習その6
 所有権に基づく建物引渡し請求を題材に、占領権原の抗弁について、具体的に検討し、賃貸借契約終了に基づく建物明渡しとの請求原因の差異、賃料不払いを理由とする賃貸借契約の解除の要件事実についても検討する。
12事実認定序説
(1)事実認定の対象、事実認定の方法及び資料、処分証書と報告証書、文書の真正、成立の推定、経験側の機能等、事実認定の基礎について総論的な講義を行う。(2)保証債務履行請求事件の模擬記録を用いて、事実認定(判断形成過程)を学習する。
13事実認定問題演習
 賃金請求事件の模擬記録を用いて、事実認定(判断形成過程)を学習する。併して、代理人による証拠収集、立証活動についても検討する。

  

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