2005年度上智大学シラバス

◆人口と環境 - (前)
鬼頭 宏
○講義概要
この講義では、人口と自然環境の相互関係を考察することを目的とする。人口学(demography)の手法によるのみならず、歴史人口学(historical demography)の成果を取り込みながら、現代世界が直面する人口現象と人口問題について、文明学的な接近を試みる予定である。二十世紀は人口が持続的に成長する時代であった。ひるがえって二十一世紀は人口停滞の時代に突入する。過去には、人口が成長した時代もあれば、停滞ないし減少した時代があった。人口の波動的変動を、文明システムの転換と環境変動の関係においてとらえ、二十一世紀の人口と環境の関係について理解を深める場としたい。
○評価方法
出席状況(10%)、授業参画(20%)、レポート(70%)
○テキスト
河野稠『世界の人口』 東京大学出版会
○参考書
大塚柳太郎・鬼頭宏『地球人口100億の世紀』ウェッジ
国連人口基金『2001年 世界人口白書―人口と環境変化』
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1(4/12)オリエンテーション (1)「問題」の発見
     現代世界における人口問題の本質を明らかにする。
2(4/19)Ⅰ 人口と環境   (1)人口現象における南北問題
     先進地域の少子化と途上地域の人口増加を統一的に把握する。
3(4/26)          (2)都市化
     都市人口比率の増加と都市の巨大化と環境の関連について考察。
4(5/10)          (3)国際人口移動
     出稼ぎ、移民、難民と環境問題について考察。
5(5/17)          (4)高齢化・少子化・人口減少
     先進地域における人口の環境問題について考察。
6(5/24)Ⅲ 環境と生存   (1)飢餓
     人口増大は全般的な食糧危機をもたらすのか。
7(5/31)          (2)気候変動と人口
     地球温暖化は人口規模、分布にどのような影響を及ぼすか。
8(6/7)           (3)環境汚染と人口
     科学物質による環境汚染の人口への影響について検討する。
9(6/14)          (4)AIDSとリプロダクティブ・ヘルス
     持続的人口増加、低開発、貧困と健康について考察する。
10(6/21)Ⅳ 人口政策    (1)先進諸国の人口転換
     先進地域の施策の変還と出生率低下について検証する。
11(6/28)          (2)家族計画
     発展途上諸国(とくにインドと中国)における出生抑制政策について検証する。
12(7/5)           (3)国際人口開発会議(ICPD)
     人口問題に対する国際的取組みを、国連の国際的人口会議の歴史、国連人口活動基金(UNFPA)の活動を中心に検証する。
13(7/12)           (4)地球人口の抑制は可能か?
     途上地域の出生力転換の条件(経済開発、社会開発、家族計画プログラム、家族観の変化)について考察する。

  

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