1 | 生態系としての地球 地球環境問題は、人々の空間認識を地球規模に広げただけではなく、例えばオゾン層破壊が、4億年前に生物が海から上陸する条件の破壊を意味するように、人々の人々の時間認識を生命と地球の進化のにまで広げた。ここでは46億年前からの地球環境の変遷を概観し、水圏・気圏などの物理的組成、生物圏の組成構成の大枠をとらえる。 |
2 | ミニ地球としてのミクロコズム 地球的時間は、人間にとって時間としてとらえられない長さであるために、人々の環境問題に関わる認識を鈍化させる可能性がある。実験的モデルとして栗原康(元東北大学理学部教授)によって分析されたミクロコズムは、この認識の壁を克服する上で重要な役割を果たす。 |
3 | 生態系の構造とエネルギー流 生態系は、そこを通過するエネルギー流によって特徴付けられる。生態系の要素がどのようにエネルギーを転換させているのかを理論的に明らかにする。また、実際の森林生態系をもとに、その生物相とエネルギー流の関係を測定した事例を見る。また、同時に、エネルギーとともに栄養塩動態にも注目する。 |
4 | 生態系の自己組織化 環境問題は、生態系秩序の自己組織化が人間の活動によって阻害されるという側面を持っている。生態系の美しいまでの秩序は、誰が指揮するというのでもなく実現している。古来この原理については多くの学説が出された。その中で最も注目すべきものは1922年のロトカによる「エネルギー流最大法則」である。 |
5 | 線形モデルによる生態系分析 経済と生態系は能動的な主体の相互依存関係によって構成されたシステムという点で、強い類似性をもっている。生態系を経済と同様の手法によってモデル化することは、環境と経済の調和を目指すうえでも重要な意味を持っている。生態系を線形モデルによって描く試みが行われてきた。 |
6 | 生態系モデルの静学シミュレーション 実際の草地生態系のデータをもとに、生態系の線形モデルをくみ上げる。それによって各生物種の最も秩序ある構成を求め、生態系の構造分析を行った結果を示す。特定の生物種の構成の変化が、生態系全体に影響を与えること、あるいはその与える影響の程度が解析される。 |
7 | 生態系遷移と動学シミュレーション 上記の生態系モデルは、生態系の静学的バランスを示すものだったが、それを動学化することによって生態系の遷移をシミュレーションすることができる。生態系の生産力、分解能力、さらには遷移の過程での生物種の構成の変化がどのように分析できるのかを示す。 |
8 | 環境収容力と人口 地球の人口は急速に増加している。人口の増加が、ただちに地球規模の食料や資源不足を生み出すわけではない。環境収容力とは、与えられた環境のもとで生物種がどれだけの規模で生存できるかを示すものだが、人間にとっての地球の環境収容力は単純に確定できない。地域や生活様式の違いによって環境負荷が異なるからである。 |
9 | アジアの成長と地球の限界 中国の巨大な経済成長は、すでに特定の食料価格の高騰によって、世界経済に重大な影響を与え始めている。インドもまた、人口では中国を追い抜く可能性があり、生活様式の変化が地球規模での環境負荷の増大の可能性を示す。アジアの成長は地球環境の行くへと不可分の関係にある。 |
10 | エコロジカルフットプリント 人間はどれだけ機械文明を発展させても、食料やその他の生活資料で土地生産物への依存から自立することは不可能である。そこで、一人の人間を支えるためにどれだけの土地が必要なのかというテーマが現れた。それは、人間の自然依存度を確認させようという試みでもある。 |
11 | エントロピー論の射程 1980年代に、地球環境問題に対する認識の広がりとともに、エントロピー概念が注目されるようになった。本来熱力学的な概念であるエントロピー論は、エネルギーの希少性と表裏一体としての廃熱処理問題、さらには物質の拡散問題と結び付けられて廃棄物問題に対する議論まで生み出した。 |
12 | ジョージェスクレーゲンの経済学 経済学者ジョージェスクレーゲンはエネルギーとエントロピーを経済学に結びつけた研究者である。特に、エネルギー資源の実行可能性(feasibility)と自立性(viability)についての議論は注目に値する。プロメテウス条件といわれた代替的エネルギーの自立可能性について解説する。 |
13 | 極相社会に向かう日本 環境制約のもとで、日本もまた成熟した社会に向かっている。それは生態系遷移の最終局面である極相と類似させることができる。中心への凝集力の喪失、集団への依存性と個性の矛盾との激化、多様性と一様性の対立など日本型極相社会の特質を考察する。 |