2005年度上智大学シラバス

◆環境行政論 - (後)
柳下 正治
○講義概要
20世紀半ば以降現在に至る環境問題の流れを系統的に学び、環境問題の解決に向けて行政が果たすべき役割を理解し、政策の立案・遂行上必要とされる行政官の資質や習得すべき基礎知識が何であるかを学ぶ。講義は、教官の行政経験を紹介することを始め、更にできる限り最新の行政施策を取り上げレビューすることに重点を置いて進める。
1 環境問題を取り巻く内外の状況と環境行政の関わりを追究する。
2 30年間環境行政に係わってきた経験を踏まえ、具体的な環境政策事例として、①廃棄物問題・循環型社会の形成、②地球温暖化問題、③大気環境問題等を取り上げて、法律の立案から成立の過程、国際環境条約の交渉過程、自治体等における具体的な環境政策、環境問題に関する訴訟等についてのケーススタディを行う。
3 これらを通じて、環境行政と立法府・司法との関係、国及び地方公共団体との関係、外国や国際機関との関係、産業界、市民、NGOとの関わり合いを学習する。更に、環境政策/戦略の立案、調整、意志決定、実施のプロセスや、見解の相違・利害の対立からこれを克服して合意形成に至るプロセス等を把握し、環境問題の解決に向けての環境行政が果たすべき役割や
○評価方法
出席状況(25%)、授業参画(25%)、リアクションペーパー(25%)、レポート(25%)
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1オリエンテーション
 講義全体のねらい、講義の進め方等の確認、講義スケジュールの確認
 講義テキストの指示
2我が国の環境問題と系譜とその対応(1)
 我が国の戦後の高度経済成長に伴う激甚公害問題の惹起、住民の反公害運動、公害訴訟、自治体による取組の開始、国における公害対策施策への着手、公害国会における一連の環境法の整備、環境庁の発足までの流れを説明。
3ケーススタディ;激甚公害事案
 ①四日市激甚大気汚染問題
 ②水俣病問題
4我が国の環境問題と系譜とその対応(2)
・公害対策基本法をはじめとする公害対策関連法体系の整備
・我が国の激甚公害問題への行政対応を説明。(法制度、組織等)
5我が国の環境問題と系譜とその対応(3)
・石油危機以降の1970年代後半から1980年代の困難に直面した我が国の環境行政施策を説明
・ケーススタディ(公害健康被害補償法):激甚公害の発生に伴う健康被害者の救済を目的として成立した、世界にも稀有な公害健康被害補償法の成立の背景、制度の概要、制度施行の経過、制度上の矛盾の顕在化と法改正等を取扱う。
6ケーススタディ(環境影響評価法成立への挑戦);1972年ごろから環境影響評価制度の必要が認識。その後、環境庁が毎年のように法制化にチャレンジ。強い抵抗にあい法制化断念が続く。中でも、81年は法案の国会提出に至ったが83年に廃案。その詳細な経緯を取上げ、法律の成立過程における行政、政治、経済界、市民の関係、特に行政・与党の係わり構造を説明。
7我が国の環境問題と系譜とその対応(4)
 <地球サミット後の我が国における環境行政の新展開>
 1992年のUNCED後、環境基本法の成立・環境基本計画の策定がなされ、その後大幅な行政施策の進展を見たが、その全容を概観。
8ケーススタディ;環境基本法が目指す環境施策の新展開
 環境基本法、環境基本計画の重点箇所の読会
9行政施策に関するケーススタディ;廃棄物・リサイクル施策の現状と課題
①廃棄物/リサイクル対策の系譜
②循環型社会形成推進基本法の制定
③各種リサイクル法の制定
④廃棄物/リサイクル問題の現状と課題
10行政施策に関するケーススタディ;地球温暖化施策の現状と課題
①条約、議定書の成立過程。国際政治・外交、国際対立構造等
②京都議定書の内容の説明。
③我が国における地球温暖化対策。温室効果ガスの排出量の推移。減少しない原因・背景。
④二酸化炭素の排出削減のための要素技術・システム。
⑤交通部門におけるケーススタディ(EST政策)
11行政施策に関するケーススタディ;大気環境施策①
・我が国の激甚公害問題への行政対応。
・具体的例として、大気汚染問題を取上げ、排出規制、総量規制、自動車環境問題、広域大気汚染問題の対応、有害大気汚染問題への対応等を説明。
・環境行政において学際的な科学的基礎が重要。また環境問題の性格や関連社会的状況に応じて、様々な政策手段が要求。
12行政施策に関するケーススタディ;大気環境施策②
13総括

  

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