第8回 輝くソフィアンインタビュー 濱口敏行さん
濱口敏行さん ヒゲタ醤油株式会社 代表取締役社長
2012.06.04

濱口敏行さん ヒゲタ醤油株式会社 代表取締役社長/ソフィア経済人倶楽部会長
1967年卒業(大学・経済学部経済学科)

資本主義の在り方や社会体制への興味
私は中学・高校と栄光学園でイエズス会の教育を受けており、カトリック信者でもあるため、上智大学への進学を選んだのは自然な流れでした。入学したのは1962年。まさに日本の高度経済成長期が訪れたころです。当時私は経済学を専攻し、片道1時間半かけて鎌倉から大学に通っていました。通学に往復3時間程度かかるため、クラブ活動にかける時間は限られており、最初は庭球部に入ったのですが、あまりに時間を取られるためすぐに辞めることに。その後、高校の先輩が在籍していた詩吟同好会に入りました。学校近くの土手に行って、みんなで吟じたりしたことを今も思い出しますね。いまだに漢詩が好きで、特に寒山詩や東洋思想に惹かれています。キリスト教と東洋の思想が、私の若い頃の原点ですね。
60年代はマルクス主義や社会主義が全盛で、若者が安保闘争などに夢中になっていたころです。しかし私はそれには馴染めなかったし、当時の経済学部は数理系の理論経済学に強かったので、マクロ経済学、ミクロ経済学、ケインズ経済学、エコノメトリックス等、数学を用いた学問を数多く学びました。ゼミは数学ご出身の小山昭雄先生。オペレーションズ・リサーチという数学のモデルを使った経営学でした。哲学はニーチェ、マルクス、サルトル等の影響を受けていましたね。上智大学卒業後はバージニア大学のグラデゥエイト・ビジネス・スクール(現ダーデン・ビジネス・スクール)に入学。留学先を決めるときには、上智のような少人数教育のところがよいと思っていました。ケースメソード主体のスクールで、プラクティカルな問題解決や意思決定の方法論を学び、MBAを取得。バージニア大学での日本人MBA第1号になりました。そこでの実践的な学びは今も役立っています。私の時代は、アメリカ文化や経営への憧れがあり、素直に米国留学をしましたが、いまの若い人達が海外に出たがらないと聞くと、残念に思います。
「ソフィア経済人倶楽部」にこめた想い
私たちは1988年大学75周年の年に、経済学部の卒業生の集まりである経鷲会をつくり、組織拡大に努めてきました。その中で感じたのが、上智大学の卒業生は様々な分野で活躍しているのに、どこに誰がいてどんな活動をしているのか、ほとんどわからないということ。そのため、学部横断的な組織として、2009年に「経済社会」という軸で括った組織「ソフィア経済人倶楽部」をつくることにしたのです。
ソフィア経済人倶楽部は、産業界をはじめ各分野で活躍する経営者、管理者、専門職ならびに勇退されたソフィアンを対象とした集まりです。会員相互の知的啓発や相互協力ならびに親睦を図り、産業社会の発展と母校の発展、社会貢献等を行うことを目的としています。同倶楽部が掲げている価値観は三つあり、一つはキリスト教ヒューマニズムにもとづく真の人間性・社会性の追求。二つめは上智の国際性の発展系としての概念であるグローバリゼーションとローカリゼーションの融合。そして三つめは教養と専門知識の融合、つまり人間的な総合知の獲得です。
具体的な活動として、講演会、勉強会、懇親会、ゴルフ会、ワイン会等さまざまな事業計画を実行しています。会員数も順調に増え、現在は関西ソフィア経済人倶楽部や外国人のためのソフィア経済人倶楽部も発足しました。しかしながら、ソフィア経済人倶楽部は女性の会員が少ないという課題もあります。今後は女性にもっと入会していただきたいと願っているところです。

天職を続けることは「よく生きること」に通じる
私の今の仕事は社長として、400年続いた老舗企業を今の時代にいかに発展させていくかということです。現在の経営者に共通する課題は、どのようにしてグローバル競争に打ち勝つかということ、そして、いかにCSR(企業の社会的責任)を果たすかという、場合によっては、トレードオフ関係にあるものをいかにトレードオンさせて、企業価値を最大化させるかということだと考えています。この問題はミクロの企業経営から、マクロの経済政策までからんだ深いテーマであり、それがいかに難しいかは、現実のさまざまな事件をみれば明白です。私はこれらの課題を総合的に勉強したいと思い、2000年に経済同友会に入会し、CSRの研究を12年続けてきました。そこにはライフワークとして「資本主義のあり方、社会体制論」を勉強していこうという、学生時代の想いがそのまま反映されています。
ですから、若いソフィアンのみなさんにも、学生時代から生涯何をしたいのかをよく考えていただきたいと思います。そして生涯をかけて、その方向に自分を導いてほしいと願っています。決してあせらず、長い時間をかけてやればよいのです。私はそれが、神がその人を通して神の計画を実践させていることの表れであると感じています。神は一人ひとりにそれぞれの使命、天職(VOCATION)を与えてくださるものです。その天職を根気よく続けることが「よく生きること」につながると言えるのではないでしょうか。

1967年 上智大学 経済学部経済学科 卒業
1970年 バージニア大学経営大学院(ダーデンビジネススクール)卒業(MBA取得)
1971年 キッコーマン株式会社 入社(海外事業部勤務)
1979年 ヒゲタ醤油株式会社入社
1985年 ヒゲタ醤油株式会社 取締役就任
1999年 ヒゲタ醤油株式会社 代表取締役専務就任
2002年 ヒゲタ醤油株式会社 代表取締役社長就任
その他
公益社団法人経済同友会幹事
日本醤油協会理事
学校法人香川栄養学園理事・評議員
公益財団法人二十一世紀文化学術財団理事
認定NPO法人ジャパンプラットフォーム理事
一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク常任顧問
一般社団法人日本アスペン協会フェロー
ソフィア経済人倶楽部会長
