第7回 輝くソフィアンインタビュー 三浦和行さん

Veritas

三浦和行さん 社会福祉法人聖ヨハネ会 障害者地域生活支援センター事務統括室長

2012.02.08

専門知識や技術は万能ではない 上智で学んだ「生き方」が私を支えています 三浦和行さん 社会福祉法人聖ヨハネ会 障害者地域生活支援センター事務統括室長□1978年卒業(社専・社会福祉主事専門課程)

三浦和行さん 社会福祉法人聖ヨハネ会 障害者地域生活支援センター事務統括室長
1978年卒業(社専・社会福祉主事専門課程)

小金井市と二人三脚で
社会福祉サービスの向上を目指してきました

「判決が出ても必ずしも幸せになるわけではない」「どうしてそのような裁判をしなければならなかったのか? この後どのように生きていくのだろうか」これは私が日本大学法学部に在学中、民事裁判を傍聴しているときに感じたことです。裁判を終えたところで時代劇のようなハッピーエンドが待っているとは限りません。その時の想いが、QOL(Quality of Life=人生の質)向上を追求する社会福祉の世界に私を引き込みました。

大学卒業後、私は民間企業で働きながら上智社会福祉専門学校に通い、先生の勧めで社会福祉法人聖ヨハネ会桜町病院に勤めることに。入職後は、医療ソーシャルワーカーを10年、高齢者福祉施設の相談員や室長の仕事を24年、そして現在は障害者地域生活支援センターの事務統括室長を務めています。

医療ソーシャルワーカーは、医療をめぐるソーシャルな問題を解決するために、病院と地域を足がかりに働きかけ、支援策を見つけて実行する仕事。法学部の学生時代に抱えていたジレンマを解決できるものでした。病院構内にある聖ヨハネ会修道院のシスター方の働きと祈り、医療スタッフの指導から学ぶべきことがたくさんありましたし、院内を駆け回って懸命に働いたことも今の自分につながっています。

その後、聖ヨハネ会と小金井市との協定に基づいた高齢者在宅サービスセンターの開設準備のため、聖ヨハネホームに異動しました。私は当時35歳でしたが、開設の準備のために都庁や金融機関に出向いたり、寄付を募ったりなど、貴重な経験をさせてもらったことに感謝しています。また、今から30年前は市内に高齢者のデイサービスセンターはなかったため、聖ヨハネ会が小金井市と二人三脚で高齢者向け在宅サービスの歴史をつくってきたとも言えるかもしれません。利用者さん、ボランティアさん、職員の皆さんが一つになってデイサービスを地域に定着させることに大きく関われたことを誇りに思っています。

三浦和行さん
卒業後も生き続ける上智との絆
壁にぶつかったとき何度も救われました

医療・福祉の世界で35年働くなかで、いくつもの苦難も経験しました。社会福祉サービスの運営は理想論だけでできるものではありませんし、サービス利用者の方が亡くなってしまうときなどは、高度な社会福祉の技術・知識を持ってしても、その人の生命に抗うことは出来ません。そんなとき、「人のなす技には限界があるからこそ、ソフィアに示唆される『人間としての生き方』が必要である」という井上英治校長の言葉が私を救ってくれました。社会福祉の技術・知識ではどうにもならないときでも、私たちは祈ることができる。これは「人間としての生き方」を上智で学んだおかげです。

ちなみに私は、社専の非常勤講師や同窓会長を務めてきたので、卒業後も頻繁に上智と関わっています。キャンパスに足を踏み入れるたび初心に帰ることができますし、現場で壁にぶつかっているとき、問題解決のための答えが上智でみつかることもありました。振り返ってみると、非常勤講師として社専の教壇に立ち、社会福祉の現場経験をもとに講義を行う一方、社会福祉問題を研究する上智から課題解決のヒントを与えられるなど、お互いを補完し合う関係を長いこと続けてきたことになりますね。小金井市と二人三脚で社会福祉サービス向上を目指してきたのと同じように、上智とも手を取り合い、よりよい社会福祉と利用者のQOL向上を目指してきたと言えるかもしれません。上智とは卒業後も切っても切れない絆があります。

想いや専門技術・知識だけでは足りない
マネジメント力が社会との関わりを大きくする

非常勤講師として講義を行うとき、もしくは聖ヨハネ会で働く専門職の後輩と接するときなど、自分がしている仕事は何のためにあるものなのかよく考えるよう伝えています。社会福祉サービスに従事する人間は、利用者のQOLを高めるために社会と関わり、さまざまな問題を解決していかねばなりません。サービスを利用していただいてお終いではなく、その先の幸せまで一緒に考え、実現させるという使命を持っているのです。そして、そのためには社会福祉を通じた社会貢献への強い想い、高度な専門知識や技術、さらにはサービスをマネジメントする力が必要だと私は考えます。

上智の在学生・卒業生には、高い専門性を持ち、志も高い方がたくさんいると思います。しかしながら、それだけでは自分の仕事と社会との関わりを大きくしていくことはできません。サービスを自らの手で点検・評価・改善し、その質を向上していくことが必要なのです。サービスの質を高めるためには、「知識・技術が高度なこと」「利用者のQOLに配慮すること」「利用者の権利(人権)を守ること」「効率がいいこと」の4つを満たしていくことが求められます。これは社会福祉の世界だけではなく、ほかの業界、仕事にも通じることなのではないでしょうか。この4つを意識して仕事をすれば、社会との関わりをより大きなものにでき、ソーシャルワーカーの可能性も拡がるはずです。

高齢者福祉のサービスレベルは上がってきていますが、現在私が従事している障害者福祉では、2013年の障害者総合福祉法の施行をめざして制度改革の論議が進められていること、他に比べ専門職が少ないながらもケアマネジメントシステムを用いてサービスの質を高めること、障害の多様化への対応など、まだまだ課題があります。障害者を取り巻く福祉環境をよりよいものにしていくために、利用者が幸せになるための仕組みをつくり、人材を育成することが今の私の目標。必ず実現したいと思っています。


障害者地域生活支援センター主催 「介護技術講習会」
(2011/10/4)
小金井聖ヨハネケアービレッジ
(グループホーム)での夏行事
「そうめん流し」 (2011/7/3)
三浦和行さん プロフィール

1976年 日本大学法学部法律学科 卒業
1978年 上智社会福祉専門学校 社会福祉主事専門課程 卒業
1978年 社会福祉法人聖ヨハネ会 桜町病院 入職
その後、桜町聖ヨハネデイホーム、桜町高齢者在宅サービスセンターの開設、桜町在宅介護支援センターで、相談員、センター長を務める。現在は障害者地域生活支援センター、事務統括室長として活躍。
現上智社会福祉専門学校ソフィア会会長


「59歳山羊座のA型 仕事仕事の日々ですが、たまには相模湾の釣り船に揺られて一日を過ごします。また、スキーや山登りにも行きたいところですがご無沙汰しています」


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