第8回 地域便り

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茨城便り 堀口 英之さん 1998年卒業(文学部国文学科)

2012.11.07

 茨城県石岡市(旧八郷町)という所で有機農業を営んでいます。今年の5月、「オールソフィアンの集い2012」に野菜出品という形で参加させていただき、本欄に寄稿させていただくご縁をいただきました。

 

 私が農業を志した理由は在学中「アジア井戸ばた会」というNGOに参加させていただいたことがきっかけです。数あるサークルの中でも「上総地方伝来の人力井戸掘り技術をフィリピンの農村に移転する」という活動で異彩を放っていたこの団体に、まるっきり興味本位で参加しましたが、活動を通して「国際援助」における人的交流の大切さと難しさ、フィリピンの農村における人々のたくましさと豊かさ、そして自分自身の生活の在り方を根本から省みる機会を得るという貴重な経験をさせていただきました。

第8回 地域便り(1998年卒業 文学部国文学科)

年一度お客様を招いての収穫祭の様子

 卒業後「自身の生活の在り方を省み」た若かった私は、勢い余って有機農業という職業を選び、現在では旬の野菜や卵を詰め合わせたセットを首都圏の消費者の方々に定期便という形でご購入いただいております。昨今の異常気象の中、農薬に頼らずに栽培することの難しさや、「有機」というブランド力の低下や消費者の料理離れ、一年中気を抜くことができない農業という仕事の煩雑さ、そして昨年の原発事故の影響による顧客減(「オールソフィアン」の参加も営業活動の一環でした!)など現在にあってもさまざまな問題に直面しておりますが、ここ旧八郷町に就農できたことはとても幸運なことだったと思っています。

 

第8回 地域便り(堀口 英之さん)2

ズッキーニの畑の様子

 当初お世話になったJAの職員の方が、「畑がどんどん荒れていくこの地域で、若い人が畑を活かしてくれるのはとても嬉しい。困ったことがあったら何でも電話してくれ」と言ってくださいました。「応援してるよ」くらいなら言えますが「電話してくれ」とはなかなか言えません。しかも何十年も真面目に仕事をされてきた方が、どこの馬の骨ともしれない若造にかけてくださった言葉に、この地域にいくらでも骨をうずめる覚悟が定まりました。

 酷暑に汗し、寒風に耐えて(大げさか?)畑に身を晒して仕事されてきた地域の農家の先輩方たちと時々かわす言葉にも、本や教科書にはない含蓄や深みのある言葉がたくさんあります。若かったころの理想は若干忘れかけ・・・ておりますが、いまでは同じ農家の方たちの働く姿に導かれ、身の引き締まる思いで日々畑に向かっています。

 

ブログにて日々の農作業の記録などを書き綴っております。

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