第7回 地域便り

Veritas

アテネ便り 萩原紀世美さん 1987年卒業(大学・外国語学部英語学科)

2012.07.01

何かのご縁で、ギリシャの首都アテネに住むことになって、はや12年。

優しいギリシャ人の夫と小学生の二人娘、週末ごとにギリシャ料理のお袋の味を届けてくれる義母、いつも見守り助けてくれる義父、娘たちのゴッドマザー(後見人)になり、経済的・時間的・精神的に常に援助を惜しまない義姉という暖かい家族に囲まれ、幸せに生活しています。ギリシャは家族の結束が固く、子供好きな国民性。子供の泣き声や悪戯にも寛容なので、母親としては助かっています。

 

子育てに奮闘しながら、フリーで取材コーディネーター、アテンド、タクシーツアー手配、ギリシャ製品購買代行など、ギリシャと日本をつなぐ仕事をしています。また、アテネ日本人会では育児サークルを運営したり、学校でギリシャの子供に折り紙を教えることもあります。友人や母はギリシャ情勢を心配していますが、先行きが見えない不安はありながらも、毎日忙しく、普通の生活ができることに感謝しています。

ギリシャ危機については、良く聞かれるのですが、はっきり言って、誰にもどうなるのか分かりません。ただ、一つだけ申し上げたいことは、震災以降、明らかになったように、日本のメディアの報道は偏っているので、ギリシャについてのニュースも、すべてを鵜呑みにしないでほしい、ということです。もちろん、ギリシャは債務超過、放漫財政、脱税、汚職、デモやスト、公務員の多さ、失業率増加、ユーロ離脱の可能性、移民など国としての様々な問題を抱えていますが、今回のギリシャ危機は、ギリシャだけの問題ではないのです。ギリシャ人の名誉のために言いますが、「ギリシャ人は働かなくて怠け者だから自業自得」のような単純な論調は、大きな誤解です。EUの調査によれば、ギリシャはEU国の中でも、最も労働時間が長い国のひとつです。普通の会社は8時間労働ですし、シエスタで昼寝している人など、ほとんどいません。給与が低いため、仕事を掛け持ちしている人も多いです。ギリシャ危機は、ユーロシステムのひずみ、強国の利権、国際金融や投資家の思惑、ギリシャ政治家の私腹肥やしなどが複雑に絡み合っている、一筋縄ではいかない問題なのです。ギリシャは、そういうものの餌食になったというのが、多くのギリシャ一般市民の考えです。

アクロポリスの丘

それでも、ギリシャには、復活を可能にする豊富な資源、宝物がたくさんあります。アクロポリスをはじめとして、世界遺産に指定されている18か所の歴史的建造物や遺跡、年間300日が晴天という恵まれた地中海性気候、健康的でおいしい地中海料理、フレッシュで安価な果物、オリーブやオリーブ油、蜂蜜、ハーブ、マスティハなどの特産品、フレンドリーな人々、紺碧のエーゲ海やイオニア海に浮かぶ美しい島々とパラダイスのようなビーチ。ギリシャ神話、哲学、政治、文化、美術、演劇など、西洋文明の礎となった歴史を持つ場所。オリンピック発祥の地・・・まさに、神々に祝福された国と言っても良いでしょう。

 

今は大変な時期ですが、ギリシャ人は頭もいいし、輝かしい歴史と先祖を持つポテンシャルのある国。そして、私の第二の祖国です。2004年のオリンピックの成功、サッカー欧州選手権2004年優勝、ユーロビジョン(欧州ソングコンテスト)優勝・・・など、あっと驚く奇跡を目の当たりしてきたので、実感はあります。その底力を信じて、私は、今自分にできることを精一杯やっていくしかないと思っています。物事には偶然は無く、起こることすべてに意味があると信じているので、今現在、私がギリシャにいる意味を問いながら、毎日を大切にしていきたいです。

ギリシャのスローペースにストレスがたまることも多々ありますが、それは趣味のヨガで発散!ギリシャの良いところをこれからも探し、日本の方に紹介するためにブログもやっていますので、良かったらご覧ください。日本の皆様にも、是非ギリシャにもっと遊びに来て頂けたらと願っています。

 

観光&生活ブログ「ギリシャ・アテネより愛をこめて」  http://kiyomulan.livedoor.biz

送迎、個人ツアー「アテネ タクシーツアー」  http://www.athenstaxi-tour.com/

萩原紀世美(1987年卒業 大学・外国語学部英語学科)

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