2006/02/24更新
○講義概要 |
環境問題が深刻化する昨今、「自然との共生」を続けてきた日本文化のあり方が、世界的な注目を浴びている。列島で育まれた神道(神祇信仰)や日本仏教も、環境思想の先駆的意味を持つものとして高く評価されている。しかし現代の日本は、欧米に匹敵する公害や環境破壊を引き起こしながら、行政の対処、市民的取り組みとも著しく遅れているといわざるをえない。このような矛盾は、いかなる歴史過程を経て形成されるに至ったのだろうか。本講義では、〈樹木〉をめぐる心性の変遷を祭祀や伝承から跡付けつつ、日本的自然観の矛盾について考えてゆく。
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○評価方法 |
出席状況(20%)、リアクションペーパー(30%)、レポート(50%) 毎回提出してもらうリアクションペーパー、学期末のレポートを重視して評価する。
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○参考書 |
授業の進行に即して適宜指示・紹介する。 増尾伸一郎・工藤健一・北條勝貴 編『環境と心性の文化史 上・下』勉誠出版、2003年 瀬田勝哉『木の語る中世』朝日選書、2000年 神野善治『木霊論―家・船・橋の民俗―』白水社、2000年
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○授業計画 |
1 | ガイダンス:環境史の視座 |
2 | 環境問題と神殺し―『もののけ姫』を読む― |
3 | 木鎮めの儀式と物語1―『皇太神宮儀式帳』を読む― |
4 | 木鎮めの儀式と物語2―猪名部と枯野伝承― |
5 | 木鎮めの儀式と物語3―忌部と紀伊国― |
6 | 木鎮めの儀式と物語4―忌部と大殿祭― |
7 | 木鎮めの儀式と物語5―木霊婚姻譚の展開― |
8 | 伐採の正当化と神殺し1―神殺しと中国的原型― |
9 | 伐採の正当化と神殺し2―大木の秘密譚の展開― |
10 | 天皇による自然神の超克1―自然と王権の葛藤1― |
11 | 天皇による自然神の超克2―自然と王権の葛藤2― |
12 | 天皇による自然神の超克3―万葉歌にみる即神表現― |
13 | 天皇による自然神の超克4―藤原京の出現と大規模開発― |
14 | 日本的自然観の〈病〉―崇拝と寄生― |
15 | まとめ |
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