2006年度上智大学シラバス

2006/02/24更新
◆東南アジア史入門Ⅱ - (後)
高橋 宏明
○講義概要
本講義では、東南アジアの歴史的経緯を中心に講義すると同時に、現代東南アジア世界に生起している諸問題を考察する。そして、日本との歴史的社会的関係を再確認しつつ、異文化世界をより深く認識することを目的としたい。授業は最初に、欧米による植民地支配期から現代東南アジア社会の成立までを概観し、植民地時代に発生した様々な問題点を指摘する。その後で現代東南アジアが直面する問題を、地域別・国別およびテーマ別に取り扱う。具体的にはタイ、ベトナム、カンボジア等の国々を取り上げ、国民国家の形成と展開、開発独裁と民主化運動、経済発展と社会的格差問題、紛争後の社会復興等の個別のテーマを設定して論じることとする。
○評価方法
出席状況(10%)、授業参画(10%)、リアクションペーパー(10%)、レポート(50%)、小テスト等
○テキスト
授業では、レジュメ・プリントを随時配布し、参考文献も毎回紹介するが、一冊だけ以下の書籍をあげておく。
レイ・タン・コイ(石澤良昭訳)『東南アジア史』 白水社(クセジュ文庫)・2001年
○参考書
岩崎育夫『アジア政治を見る眼-開発独裁から市民社会へ-』中央公論新社(中公新書)・2001年
栗原浩英他編『東南アジアの歴史』有斐閣・2004年
白石隆『海の帝国―アジアをどう考えるか―』中央公論新社(中公新書)・2000年
○必要な外国語
特になし
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1第1回目の授業で講義計画の全体像を提示するが、授業内容は以下の項目を設定し進めていく予定(なお、取上げる内容等に多少の変更が生じる場合もありうるので承知願いたい)。

第1回)ガイダンス
   ①東南アジア世界とは何か②古代東南アジア世界の成立
2第2回)欧米による植民地支配の歴史的経緯(18世紀-1945年)
   ①古典期から近世へ②欧米の進出と植民地化
3第3回)日本軍政期の東南アジア(1941-1945年)
①大東亜戦争と東南アジア社会②日本軍と現地の人びと
4第4回)現代東南アジア社会の成立期
①国民国家への模索(1945-1970年代)②1945-1975年の国際関係
5第5回)ベトナム戦争(1960-1975年)の時代
   ①東西冷戦期の東南アジア②ベトナム戦争と日本
6第6回)ベトナムⅠ:ベトナム戦争とは何か
   ①なぜ大国アメリカは負けたのか②戦争の被害と傷跡
7第7回)ベトナムⅡ:「ドイモイ」後の社会
   ①「ドイモイ」と経済発展②人びとの暮らし
8第8回)タイⅠ:タイの民主主義
   ①開発主義と経済発展②1990年代の民主化運動
9第9回)タイⅡ:経済発展と社会的格差
①NGO活動と社会的弱者の救済②エイズ問題の深刻化(90年代以降)
10第10回)カンボジアⅠ:紛争解決から和平創出へ
①ポル・ポト時代(1975-1979年)と内戦(1979-1991年)の悲劇
②国連平和維持活動(PKO)の展開と日本の関与(1991-1993年)
11第11回)カンボジアⅡ:社会復興と国際協力
    ①国際協力NGOの活動②地雷問題と児童売買の激増
12第12回)文化遺産保存修復活動:経済援助中心から多元的な国際協力活動へ
    ①なぜ「アンコール遺跡」を修復するのか
    ②国際文化協力活動としてのアンコール遺跡保存修復事業
13第13回)まとめ
①日本と東南アジアの新しい関係の構築
②国際交流・国際協力の主体としての「かかわり」へ

  

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